会計利益と税務利益の違い|社長が知るべき税務の基本
- 近藤 祐輔

- 2月24日
- 読了時間: 7分
更新日:6月20日
はじめに
「そんなに利益が出ていないのに、なぜこんなに法人税がかかるの?」
これは、会計上の利益と税務上の利益のズレを理解していないことが原因です。このズレを知らないまま経営していると、税金の着地見込みが読めず、資金繰りにも影響が出ます。
この記事では、社長と税理士の対話形式で、その"ズレの正体"と、年商3億円を超えていく会社の考え方を解説します。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
1. 会計利益と税務利益はなぜ違うのか?
社長: 先生、うち今期は利益300万円ですよね?なのに法人税が思ったより高いんですが・・・。
税理士: その300万円は「会計上の利益」です。税金は「税務上の所得」に対してかかります。
社長: え?違うんですか?利益=課税対象じゃないんですか?
税理士: イコールではありません。税務上は、会計利益に申告調整を加えて「課税所得」を計算します。会計のルールと税法のルールは別物で、認められる費用の範囲や計上タイミングが異なるため、ズレが生じます。
社長: 申告調整というのはどういう作業ですか?
税理士: 会計上の利益をスタートとして、税務上は費用として認められない項目を「加算」し、税務上のみ認められる項目を「減算」することで課税所得を計算する作業です。この計算は確定申告書の「別表四」という書類で行います。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2. ズレが生じる代表的な例
社長: 具体的にどんな項目でズレが生じますか?
税理士: 代表的な4つを説明します。
① 交際費の損金不算入
会計上は費用として計上できますが、税務上は全額が損金になるわけではありません。中小企業の場合、年間800万円までは全額損金算入できますが、超過分は加算されます。また接待飲食費については、取引先など社外の人が同席し1人当たり1万円以下であれば損金算入できる場合があります(税込経理は税込金額、税抜経理は税抜金額で判定)。
② 減価償却の限度額
会計上は任意に計上できますが、税務では法定耐用年数と償却限度額が定められています。会計上の償却額が限度額を超えた場合、超過額は加算されます。
③ 引当金
会計では将来の費用を見越して引当金を計上できますが、税務上は認められる引当金が限定されています。会計で計上した引当金のうち、税務上認められないものは加算されます。
④ 役員賞与
会計上は費用として計上できますが、税務上は事前確定届出給与として事前に税務署へ届け出ていなければ損金になりません。届出なしに支払った役員賞与は全額加算されます。
社長: そうした加算が重なると、税金がかなり増えるんですね。
税理士: その通りです。たとえば交際費の損金不算入・寄附金の限度超過・資産の償却超過などが重なると、このようなことが起きます。
会計利益:300万円
各種申告調整による加算:+300万円
課税所得:600万円
会計上の利益が300万円でも、課税所得が600万円になることは普通にあります。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
3. 「節税のつもりが、財務を弱くする」という落とし穴
社長: 税金を減らすために経費を増やすのは良い方法ですよね?
税理士: ここに大きな落とし穴があります。節税で利益を圧縮すると、税務上の課税所得は減りますが、同時に会計上の利益も減ります。利益が減れば内部留保が積み上がらず、自己資本比率が改善しません。
社長: 節税をすると銀行評価が下がる、ということですか?
税理士: そのリスクがあります。金融機関は会計上の利益を見て格付けを行います。節税で利益を圧縮しすぎると「稼げていない会社」と見なされ、融資審査や金利交渉で不利になります。税務上の節税効果と財務的な体力強化のバランスを取ることが重要です。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
4. 年商3億円を超える会社の考え方
社長: 規模が大きくなると、税金との向き合い方が変わりますか?
税理士: 変わります。年商3億円未満の会社は「どうやって税金を減らすか」に意識が向きがちです。しかし3億円を超えていく会社は、3つの問いを持っています。
税引後利益をどう残すか
内部留保をどう積み上げるか
金融機関評価をどう上げるか
この3つを意識できている経営者は、申告調整の中身を理解し、税金の着地見込みを期中に把握し、数字をコントロールしながら経営しています。
社長: 別表四の増減算を理解するというのは、経営者が細かい計算をする必要があるということですか?
税理士: 細かい計算まで覚える必要はありません。ただ「なぜ会計利益と課税所得がズレているのか」「どの項目が加算・減算されているのか」を顧問税理士から説明を受け、概要を理解していることが重要です。これができていると、期中の節税判断や資金計画の精度が大きく上がります。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
5. 期中に税金の着地見込みを把握する重要性
社長: 税金の着地見込みを期中に把握するとは、具体的にどういうことですか?
税理士: 決算期末を待たずに、「このままいくと課税所得はいくらになるか」「法人税等の納税額はいくらになるか」を月次試算表をベースに予測することです。
これができると3つのメリットがあります。
① 資金繰りへの影響を事前に把握できる
法人税・消費税の納税資金を事前に確保でき、納税時期の資金ショートを防げます。
② 節税のタイミングを逃さない
決算直前に慌てて節税策を検討するのではなく、期中から計画的に取り組めます。
③ 経営判断の精度が上がる
税引後利益の見通しが立てば、投資・採用・役員報酬の設計も根拠を持って判断できます。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
よくある質問(FAQ)
Q1. 会計上の利益と課税所得、どちらを経営指標として見るべきですか?
両方を把握することが理想です。会計上の利益は経営の実態と銀行評価に影響します。課税所得は納税額の計算に使います。「会計上の利益を高め、合法的な範囲で課税所得を適正化する」バランスが長期的な経営力につながります。
Q2. 別表四とは何ですか?経営者が理解する必要がありますか?
別表四は法人税の確定申告書の一つで、会計利益から課税所得を計算する申告調整の内容が記載された書類です。細かい計算まで理解する必要はありませんが、加算・減算のどの項目が大きいかを顧問税理士から説明を受けておくと、税金の見通しが立てやすくなります。
Q3. 役員賞与を損金にするには何が必要ですか?
事前確定届出給与として、支払いの前に税務署へ届出を行う必要があります。原則として職務執行開始日から1か月以内、または株主総会等の決議日から1か月以内のいずれか早い日が届出期限です。届出なしに支払った役員賞与は全額損金不算入となります。
Q4. 期中に課税所得の見通しを把握するにはどうすればいいですか?
月次試算表をベースに、顧問税理士と定期的に課税所得の予測を行う体制を整えることが基本です。月次訪問や定期ミーティングの際に「今期の税金着地見込み」を確認する習慣を持つことをお勧めします。
Q5. 節税と内部留保の積み上げはどう両立させますか?
完全な両立はできませんが、優先順位をつけることでバランスを取ることは可能です。最も優先すべきは税額控除(賃上げ促進税制など、税額そのものから差し引かれる制度)です。これは利益を圧縮せずに税負担だけを減らせます。次点は特別償却などの「繰延型の節税」で、将来の税負担を前倒しするだけのため、利益を消し去る節税より影響は限定的です。保険商品の活用など利益そのものを消し去る節税は最小限にとどめることが有効です。詳しくは顧問税理士に相談することをお勧めします。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
まとめ
会計上の利益と税務上の課税所得はイコールではない
交際費・減価償却・引当金・役員賞与などの申告調整でズレが生じる
節税で利益を圧縮しすぎると内部留保が積み上がらず、銀行評価が下がるリスクがある
年商3億円を超える会社は「税金を減らすか」より「税引後利益をどう残すか」を考える
期中に課税所得の着地見込みを把握することが資金計画と経営判断の精度を上げる
会計利益と税務利益のズレは、数字をコントロールできる経営かどうかの分岐点です。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
【顧問税理士にこんなお悩みはありませんか?】
税金の話はしてくれるが、財務・資金の話をしてくれない
銀行との付き合い方や融資対応についても相談したい
代表税理士と話したことがない
担当者が頻繁に変わり、毎回一から説明している
コミュニケーションが取りにくく、経営に関する相談ができない
近藤祐輔税理士事務所では、税務だけでなく財務・資金戦略・銀行対応まで、代表税理士が直接担当します。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


コメント