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創業期の資金調達と金融機関との付き合い方|税理士が解説

  • 執筆者の写真: 近藤 祐輔
    近藤 祐輔
  • 2025年5月27日
  • 読了時間: 8分

更新日:4月25日

はじめに


「どこから借りられるのか」「銀行にはどう話せばいいのか」


初めての起業では、資金調達と金融機関との付き合い方に不安を感じる経営者が多いものです。創業直後の資金調達は「今の運転資金を確保する」だけでなく、将来の信用力の土台を作るという意味でも非常に重要です。


今回は社長と税理士の対話形式で、創業期に必要な資金の種類・現実的な調達手段・金融機関との関係構築の基本を解説します。


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1. 創業時に必要な資金の種類


社長: 創業するにあたって、どんな資金が必要になりますか?


税理士: 大きく2種類あります。

資金の種類

内容

初期投資資金

事業開始に必要な一時的な支出

内装・設備・システム・敷金など

運転資金

毎月発生する経常的な支出

仕入・人件費・家賃・外注費など


社長: 生活費はどうするんですか?


税理士: 生活費は事業融資の対象外です。事業が黒字化するまでの生活費は、事前に個人の貯蓄から用意しておく必要があります。融資は「事業のためのお金」であり、生活資金として使うことは原則認められていません。この点は創業前に必ず確認しておいてください。

創業初期は売上が不安定なため、キャッシュフロー管理が命綱です。「いつまでに黒字化できるか」「それまでの間に必要な資金はいくらか」を事前に試算しておくことが重要です。


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2. 創業直後の現実的な資金調達手段


① 日本政策金融公庫の創業融資


創業時の最も代表的かつ現実的な借入先です。売上実績がなくても申請でき、担保・保証人の要件も柔軟です。現行の「新規開業・スタートアップ支援資金」では融資限度額7,200万円・据置期間最大5年が設定されています。


社長: 公庫と民間銀行、最初はどちらに行けばいいですか?


税理士: 創業直後は迷わず公庫から始めてください。民間銀行は決算書がないと融資に慎重になります。公庫で実績を作り、その後信用金庫・地銀へとステップアップしていくのが現実的な流れです。また公庫は預金機能を持たないため、融資の入金口座を「次に付き合いたい金融機関」に指定しておくと、その後の融資展開がスムーズになります。



② 信用保証協会付き融資(制度融資)


各自治体が用意する制度融資も、創業期に活用しやすい手段です。信用保証協会が保証人となることで、金融機関はリスクを抑えて貸し出しが可能になります。地方自治体によっては利子補給・保証料補助などの優遇もあります。


社長: 公庫と制度融資は同時に使えますか?


税理士: 使えます。公庫は信用保証協会の保証枠を使わないため、制度融資と並行して申請できます。創業期は複数の調達手段を組み合わせて、手元資金に余裕を持たせることが重要です。


③ 補助金・助成金との組み合わせ


補助金は返済不要ですが、原則として事前申請が必要で後払いとなる点に注意が必要です。補助金が入金されるまでの間、立替資金が必要になるため、つなぎ融資との組み合わせが成功の鍵になります。


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3. 金融機関との「最初の付き合い方」が将来を決める


社長: 金融機関との関係って、最初から意識した方がいいんですか?


税理士: 創業時からの行動が将来の融資条件に直結します。金融機関との信頼関係は一朝一夕には作れません。最初から正しい付き合い方をしておくことが重要です。


① 入出金口座を整備し、日常取引から始める


売上・仕入・給与支払いなど、すべての入出金を1つの口座に集約することで、事業の健全性を通帳で示せます。口座の中身が整理されている会社は、金融機関担当者から「管理ができている」と評価されます。


② 月次試算表を定期的に提出する


創業直後から月次の試算表・資金繰り表を金融機関に提出する習慣をつけることで、「数字を把握して経営している」という信頼が生まれます。この習慣を持つ企業は極めて少数派であり、継続するだけで際立ちます。


③ 創業計画書は「プレゼン資料」として準備する


事業の熱意と成長性を、数字に基づいて説明できる計画書を準備します。売上目標だけでなく、資金繰り(キャッシュフロー)の見通しも含めることが重要です。

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4. 創業時によくある失敗パターン


社長: 創業時に融資で失敗する人はどんな間違いをするんですか?


税理士: 主に3つのパターンがあります。


① 複数の金融機関に同時申込する


複数申込は信用情報に記録され「資金繰りが苦しいのでは」と疑われます。創業融資の入口としては公庫が最もポピュラーで安定した選択肢ですが、信用金庫・地銀の制度融資(創業枠)から始めるケースもあります。地元の金融機関と最初から関係を作りたい場合はそちらから入ることも有効です。いずれにせよ、複数の金融機関に同時申込するのではなく、まず1行に絞って実績を作ることが重要です。


② 事業計画が抽象的・非現実的


「月商100万円・利益30万円」という数字だけの計画では不十分です。「なぜその売上が見込めるのか」「顧客は誰か」「集客手段は何か」という根拠が求められます。


③ 副業感覚で本気度が伝わらない


事業への覚悟が見えない経営者には、金融機関は融資をしにくいです。自己資金の積み上げ方・事業計画の具体性・面談での受け答えすべてが「本気度」の証明になります。


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5. 創業融資は「加速装置」であって「前提」ではない


社長: 融資ありきで事業計画を立てていいですか?


税理士: 危険です。「創業融資が下りることを前提に計画を立てる」のは本末転倒です。基本は自己資金と事業から生まれる利益で回る構造を前提とし、融資はあくまで事業成長を加速させる手段として位置づけることが重要です。

融資が下りなかった場合でも、事業が成立する計画になっているかどうかが、本当に健全な創業計画の条件です。


📌 「返せる前提で借りる」—— これが創業融資に対する正しい姿勢です。

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よくある質問(FAQ)


Q1. 自己資金はどのくらい用意すべきですか?


一般的に総投資額の20〜30%を自己資金で用意できると審査に有利です。ただし金額だけでなく「コツコツ積み上げた資金か」という質も重視されます。直前に多額の入金がある場合は「見せ金」を疑われるため、通帳の入出金履歴で説明できるようにしておくことが重要です。


Q2. 創業計画書は自分で作れますか?


作れます。公庫の公式サイトに創業計画書のフォームが用意されています。ただし数字の根拠・返済可能性の説明など、専門的な部分は税理士のサポートを受けることで審査通過率が上がります。計画書の作成は申請前に時間をかけて丁寧に仕上げることをお勧めします。


Q3. 創業直後に民間銀行へ行っても融資は受けられますか?


制度融資(保証協会付き融資の創業枠)であれば、信用金庫や地方銀行を窓口として創業直後から申し込めます。この場合、窓口となった金融機関がそのまま取引先になることが多く、創業時からの関係構築という意味でも有効な選択肢です。一方、保証協会の保証を使わないプロパー融資は、決算書がない状態では難しいケースがほとんどです。いずれにせよ、口座開設・日常取引は創業直後から始めておくことをお勧めします。


Q4. 融資を断られたらどうすればいいですか?


否決後は半年〜1年程度は再申請が難しくなります。否決の原因(自己資金・計画書の内容・信用情報など)を分析し、改善してから再申請することが重要です。税理士と一緒に原因を整理し、次の申請に向けて準備することをお勧めします。


Q5. 補助金と融資は同時に申請できますか?


できます。補助金は採択後の後払いが原則のため、採択から入金まで数か月の資金不足が生じます。この期間を埋めるつなぎ融資を事前に準備しておくことで、補助金を無理なく活用できます。補助金申請の段階から融資計画を並行して立てることをお勧めします。


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まとめ


  • 創業時に必要な資金は「初期投資資金」と「運転資金」の2種類。生活費は事業融資の対象外

  • 創業直後はまず公庫、次に信用保証協会付き融資・補助金を組み合わせるのが現実的

  • 公庫融資の入金口座を「次に付き合いたい金融機関」に指定しておくと将来の融資展開がスムーズになる

  • 金融機関との信頼関係は創業初日から始まる。口座整備・月次試算表の提出が基本

  • 「複数同時申込」「抽象的な計画書」「副業感覚」が創業融資失敗の三大パターン

  • 融資は「加速装置」。融資なしでも成立する事業構造を前提にした上で活用する


創業時の資金調達は「今」だけでなく「将来の信用」に直結します。創業初期から「見せる経営」「伝える経営」を意識して取り組むことが、成長資金を継続的に獲得する土台になります。


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