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無借金経営は本当に良いのか?~“実質無借金経営”こそが銀行に信頼される企業体質~

  • yusukekondo9
  • 10月28日
  • 読了時間: 3分

はじめに|「借金ゼロ=健全」はもう古い?


経営者の中には「借金は悪」という価値観を持つ方が少なくありません。確かに、借入が多いと返済のプレッシャーや金利負担が重くなります。しかし、“借金ゼロ”が必ずしも良いとは限らないのです。

特に成長過程にある企業にとって、「外部資金を活用しない経営」=「チャンスを逃す経営」でもあります。

では、何が理想なのか?

答えは、「実質無借金経営」という考え方にあります。



1. 無借金経営の落とし穴とは?


「無借金経営です」と胸を張る企業でも、実はこんなリスクを抱えていることがあります:

課題

内容

成長資金が不足

設備投資・採用・新規出店などに積極的に動けない

金融機関との関係が希薄

いざというときに借りられない/取引実績がない

自己資金に過剰依存

キャッシュが不足すれば即「手詰まり」になる

資金の非効率

設備投資などもすべて現金払い ⇒ 資金繰りが厳しくなることも

📌 「無借金」=資金に余裕があるとは限らないという点が重要です



2. 実質無借金経営とは?|“借入金よりも預金が多い”状態


「実質無借金経営」とは、単に借入がないのではなく、“借入があっても、預金の方が多い”という財務状態を指します。

たとえば以下のようなケースです:

項目

金額

借入金(短期+長期)

5,000万円

預金残高

8,000万円

→ 実質無借金:「借入<預金」状態であり、実質的には自己資金で全額返済可能な状態

このような状態であれば、金融機関からは非常に良い評価を得られます。



3. 実質無借金の何が良いのか?


(1)いざというときの資金調達力が高い

  • 取引実績のある金融機関がある

  • プロパー融資なら信用保証協会の枠も温存されている

  • 金利交渉にも強くなれる


📌 借りない会社より、「借りられる会社」のほうが信用される


(2)税務・キャッシュフロー面で有利に働く

  • 設備投資をローンで行えば、減価償却+利息で利益を適正にコントロール

  • 自己資金を運転資金に温存し、キャッシュリッチを維持

  • 借入利息は損金算入 ⇒ 税引後キャッシュが増える


(3)内部留保+信用力で“攻め”の経営ができる

  • 人材採用や新規事業、出店、M&Aなど機動的な戦略が打てる

  • 金融機関との関係性があれば補助金・制度融資の情報も入りやすい

  • 財務健全性が高いと、外部パートナーからの信頼も増す



4. 税理士が推奨する「実質無借金経営」を実現する方法


✅ ステップ1:意図的に“借りて、預金しておく”

  • 実行例:政策金融公庫・地銀・信金から数百万〜数千万円借入

  • 使用目的がなくても「つなぎ資金」として確保しておく


 → これにより、「借入<預金」の形が作れます


✅ ステップ2:借入実績を作り、金融機関との関係を維持

  • 無借金が長く続くと、いざという時に「初めての融資」で信用ゼロになってしまいます

  • 小口でも良いので、公庫や信金・地銀との取引を継続することが重要


✅ ステップ3:資金調達力を「決算書」で見せる

  • 自己資本比率30%以上を維持(預金が多ければ評価UP)

  • キャッシュフロー計算書を整備(営業CFが黒字なら高評価)

  • 借入と預金のバランスを補足資料で説明(金融機関向け)



まとめ|「実質無借金」で、強くしなやかな財務体質へ

比較項目

無借金経営

実質無借金経営

借入金

0円

あり

預金残高

借入に左右される

借入を上回る水準

資金調達力

弱い

強い

金融機関の信頼

薄い

強い

緊急対応力

弱い

高い

「借りない」より「借りられる」ことが重要。そして借りても、預金が多ければそれはむしろプラス評価につながる。

これが、「実質無借金経営」という考え方の真髄です。



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