税務調査で狙われやすい会社の特徴|決算書で見られるポイント
- 近藤 祐輔

- 2025年9月26日
- 読了時間: 8分
はじめに
「税務調査が入るとしたら、うちはどこを見られるんだろう・・・」
多くの経営者にとって、税務調査はいつ来るかわからない経営上のリスクです。実は税務署は、調査対象を選定する際に決算書を精査しています。「申告内容が適正でない可能性がある」と判断される法人が優先的に調査対象となります。
今回は社長と税理士の対話形式で、調査官が決算書で着目する5つのポイントと、調査を見据えた経営のポイントを解説します。
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1. 税務調査の対象はどうやって決まるのか
社長: 税務調査って、どんな会社が選ばれるんですか?
税理士: 国税庁の情報によると、収益や費用の異常な変動・利益率の急減・役員報酬の不自然な増減・棚卸資産の変動などが調査対象の選定に影響すると言われています。
要するに「決算書の数字に違和感がある会社」が調査対象になりやすいということです。
社長: 違和感というのは、具体的にどういうことですか?
税理士: 「前期と比べて説明がつかない変化」です。売上が急減しているのに経費がほとんど変わらない、外注費が突然2倍になっている、在庫が消えているのに売上が増えていないなど、前期との整合性が取れない変化が「着手の動機」になります。
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2. 調査官が着目する5つのポイント
① 売上・利益が不自然に大きく減っている
社長: 売上が減ったこと自体は問題ないですよね?
税理士: 減った事実よりも「整合性」が問題です。売上が急減しているのに仕入・外注費・人件費があまり減っていない場合、「売上を意図的に除外しているのでは」という疑いが生じます。
実務対応として、売上減の要因を経営会議の議事録・取引先からの発注減のメール・業界動向の資料などで残しておくと、調査時に説明しやすくなります。
② 外注費・交際費・会議費が大きく変動している
社長: 外注費が増えていたら、何か問題になりますか?
税理士: 外注費が前年の2倍になっているのに売上が増えていない場合、調査官は「架空外注費では」と疑います。確認されるのは業務委託契約書・納品物・振込記録の整合性です。
また会議費が多額で「定型的な説明しかない」場合、実態は個人的な飲食費の付け替えと疑われます。一人あたり単価が不自然に高い飲食費は、交際費や役員賞与として否認されるリスクがあります。
③ 棚卸資産の増減が異常
社長: 在庫の変動は、なぜ調査官が気にするんですか?
税理士: 棚卸資産の管理は「売上除外」「架空原価」の手口に使われやすいからです。たとえば「原価は多額に計上されているのに期末在庫がほとんど残っていない」という場合、架空仕入の可能性を疑われます。
棚卸調査表・写真記録・在庫数量報告書を整備しておくことが実務上の最大のリスクヘッジです。
④ 役員報酬・役員賞与の処理が不明瞭
社長: 役員報酬の処理で、どんなミスが多いですか?
税理士: 2つのパターンが特に多いです。
定期同額給与のはずなのに毎月金額がバラバラ:損金不算入として否認されるリスク
事前確定届出給与の届出なしで賞与を支給:損金不算入+源泉徴収漏れの指摘(ダブルパンチになることがある)
役員報酬の処理ミスは、法人税の追加納税と源泉所得税の両方が問題になるため、特に注意が必要です。
⑤ 固定資産の除却・売却処理の信頼性
社長: 固定資産の除却って、どんな点が税務調査で問題になるんですか?
税理士: 主に2つのパターンがあります。
① 実際には廃棄・売却していないのに除却・売却処理をしている(架空除却)
帳簿上で除却損を計上しているが、実際にはその資産がまだ存在しているケースです。調査官は現物確認を行い、除却した資産が実際に存在しないかを確認します。
② 廃棄・売却の時期を操作して当期の損失に押し込む(期ずれ)
実際には翌期以降に廃棄・売却したものを、当期の損失として計上するケースです。廃棄証明書の日付・売買契約書の日付・実際の引き渡しタイミングが整合しているかを確認されます。特に廃棄証明書を後付けで作成したり日付を操作したりすると、書類の信頼性そのものが問われます。
調査官は疑義があると判断した場合、反面調査として廃棄業者・売却先に直接連絡を取り、会社の説明や提出書類と事実が一致しているかを確認することがあります。ここで会社側の説明と事実の乖離が発覚した場合、仮装・隠蔽行為として脱税認定され、重加算税(通常の加算税より重い35〜40%)の対象となることがあります。
除却・売却処理を行う際は、実際の廃棄・引き渡しのタイミングで処理を行い、廃棄証明書・写真記録・売買契約書を正確な日付で整備しておくことが重要です。
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3. 税務調査が入りやすい法人の共通点
社長: 税務調査が入りやすい会社には、共通点がありますか?
税理士: 以下のような法人は調査対象になりやすい傾向があります。
赤字続きから黒字化した直後:利益の急増について詳細な確認が入りやすい
不動産や多額の設備投資を行った期:取得価額・減価償却・消費税の処理が複雑になりやすい
社長の個人支出と法人支出が混在しやすい場合:役員貸付金の増加・個人的な経費の付け替え疑い
顧問税理士が毎年変わっている:管理体制が緩いと判断され、申告内容の正確性に疑問を持たれやすい
社長: 「顧問税理士が毎年変わっている」というのは、どうして問題になるんですか?
税理士: 税理士が毎年変わると、継続的な帳簿管理・申告内容の一貫性が保ちにくくなります。税務署から見ると「会計管理が安定していない会社」という印象を与え、申告内容を詳しく確認したいという動機につながることがあります。
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4. 調査を見据えた経営のポイント
社長: 税務調査が来ても大丈夫な状態にするには、何をすればいいですか?
税理士: 日常業務の中で以下を習慣化することをお勧めします。
項目 | 実務ポイント |
前期対比の分析 | 決算書の変動項目を前年比で分析し、説明できるようにしておく |
書類の整備 | 領収書・契約書・議事録を費用別・月別に整理しておく |
経営判断の裏付け | 経費増減の理由を稟議書・契約書・会議議事録で文書化する |
棚卸の記録 | 期末棚卸時に写真・数量記録を残す |
税務署が見るのは「金額」よりも「整合性」と「合理性」です。「説明できる状態を常に保つこと」が最大のリスクヘッジです。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 税務調査はどのくらいの頻度で来ますか?
会社の規模・業種・申告内容によって異なります。中小企業の場合、一般的に数年に一度の頻度で調査対象になるとされていますが、申告内容に問題がなければ調査が入らないこともあります。調査が入ったこと自体が「問題がある」とは限りませんが、適正な申告と書類整備が最大の備えです。
Q2. 税務調査の連絡が来てから準備する時間はありますか?
通常、事前に税務署から「調査に伺いたい」という連絡が入り、日程調整の時間があります。ただし連絡から調査まで数週間程度しかない場合もあるため、日頃から書類を整備しておくことが重要です。顧問税理士に連絡し、一緒に対応準備をすることをお勧めします。
Q3. 税務調査で否認されやすい費用は何ですか?
交際費・会議費・外注費・役員報酬が特に確認されやすい費目です。これらは「実態が伴っているか」「適切な処理がされているか」という観点で詳しく確認されます。領収書・契約書・議事録など実態を証明する書類を整備しておくことが重要です。
Q4. 個人のカードで会社の経費を払った場合、どう処理すればいいですか?
個人カードで支払った場合も、業務に関連する費用であれば法人の経費として処理できます。ただし領収書を法人名義で受け取り、「立替金」として精算処理を行う必要があります。個人と法人の経費が混在したまま処理されると、税務調査で問題になりやすいため、経費精算のルールを明確にすることをお勧めします。
Q5. 税務調査に税理士に同席してもらうことはできますか?
できます。むしろ同席を強くお勧めします。税理士が同席することで、調査官の質問に対して正確に対応でき、不必要な誤解を防ぐことができます。顧問税理士に税務調査の連絡があったことをすぐに伝え、同席の手配をしてもらうことが重要です。なお税務調査への対応(同席・資料準備・交渉対応など)は、顧問報酬とは別途費用が発生することが一般的です。事前に顧問税理士に確認しておくことをお勧めします。
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まとめ
税務調査の対象は「決算書の違和感」から選ばれることが多い
調査官が着目する5つのポイント:①売上・利益の不自然な急減②外注費・交際費の大きな変動③棚卸資産の異常な増減④役員報酬・賞与の処理ミス⑤固定資産の消失と除却処理の不備
調査が入りやすい法人:赤字から急黒字・多額の設備投資・個人と法人の混在・顧問税理士が毎年変わる
最大のリスクヘッジは「説明できる状態を常に保つこと」
税務調査は「金額」より「整合性・合理性」が重視される
「見られる前提」で決算書を作ることが、税務リスクを最小化する最善の経営習慣です。
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