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自己資本比率が銀行融資を左右する|改善と見せ方の実務解説

  • 執筆者の写真: 近藤 祐輔
    近藤 祐輔
  • 2025年9月30日
  • 読了時間: 7分

更新日:4月17日

はじめに


「銀行はあなたの会社の体力を、どこで判断していると思いますか?」


この問いに対して、多くの金融機関が最初に注目する指標が自己資本比率です。


税務申告では利益や納税額が焦点になりますが、銀行は貸借対照表(BS)から企業の「体質」を読み取ります。その中心にあるのが自己資本比率であり、「融資が受けやすいかどうか」「経営の安定性があるかどうか」を判断するベースになっています。


今回は社長と税理士の対話形式で、自己資本比率の基本・銀行の評価基準・改善策・見せ方の実務を解説します。


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1. 自己資本比率とは何か?


社長: 先生、自己資本比率って決算書のどこを見ればわかりますか?


税理士: 貸借対照表(BS)から計算します。式はこうです。

自己資本比率(%)= 純資産 ÷ 総資産 × 100

社長: 純資産って何ですか?


税理士: 貸借対照表の資産合計から負債合計を差し引いた残りです。

純資産 = 総資産 - 総負債

会社が持っている総資産から、銀行からの借入金・仕入先への買掛金・未払金などの負債をすべて差し引いた残りです。資本金・資本剰余金・利益剰余金などがここに含まれます。


社長: 具体的にはどういう数字になりますか?


税理士: たとえばこういうケースです。

総資産   1億円
純資産   2,000万円
────────────────────
自己資本比率 2,000万円 ÷ 1億円 × 100 = 20%

総資産のうち返済不要な自己資本がどれくらいの割合を占めているかを示す指標です。この比率が高いほど「潰れにくい会社」と評価されます。


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2. 銀行はどの水準を見ているのか?


社長: 何%あれば安心ですか?


税理士: 業種によって異なりますが、中小企業では以下が一般的な目安です。

自己資本比率

銀行の評価目安

50%以上

非常に優良。財務超安定型

30〜50%

良好。財務健全性が高い

10〜30%

標準的。業種によっては問題なし

10%未満

要注意。実質債務超過リスクとして警戒


社長: うちは今15%くらいです。


税理士: 標準的な水準ではありますが、銀行によっては「もう少し改善してほしい」と言われるゾーンです。融資条件(金利・担保・保証)に影響が出ることがあります。10%を切ると審査が一気に厳しくなるため、そこだけは守ることが重要です。


📌 自己資本比率が10%を下回る法人は、融資審査で実質債務超過リスクとして見られる傾向があります。

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3. 自己資本比率を改善する3つの方法


① 利益を出して内部留保を積み上げる(最も基本)


社長: 自己資本比率を上げるには、どうすればいいですか?


税理士: 最も確実な方法は毎期黒字を出して利益剰余金を積み上げることです。利益剰余金は純資産の一部なので、積み上がるほど自己資本比率が上がります。

黒字継続 → 利益剰余金の積み上げ → 純資産の増加 → 自己資本比率の上昇

特効薬はありません。粗利率の改善・固定費の適正化・売掛金の早期回収など、本業のキャッシュフローを改善することが土台になります。


② 役員借入金をDES(資本転換)する


社長: DESって何ですか?


税理士: デット・エクイティ・スワップの略で、社長が会社に貸しているお金(役員借入金)を出資に転換して資本金に変える手続きです。

役員借入金(負債) 3,000万円
    ↓ DES実行
資本金(純資産)  3,000万円増加
→ 自己資本比率が大幅に改善

社長: 簡単にできますか?


税理士: 法的手続き(株主総会決議・登記)と会計・税務の整理が必要です。ただし役員借入金が多い会社にとっては、自己資本比率を一気に改善できる有効な手法です。必ず事前に税理士と相談のうえ進めてください。


③ 節税で自己資本を削りすぎない


社長: 節税すると自己資本比率が下がるんですか?


税理士: 下がります。利益を圧縮する節税(少額資産を大量に購入して費用計上を増やしたり、不要な生命保険に入って保険料の全額または一部を費用処理するものなど)は、税引後利益を減らし、結果として利益剰余金の積み上がりを遅らせます。

節税と財務健全性はトレードオフの関係にあります。短期の節税と長期の財務戦略のバランスを考えて判断することが重要です。


📌 「節税で今期の税金を100万円減らす」vs「自己資本比率を維持して融資条件を有利にする」——どちらが会社にとって得かを中長期で考えるのは経営者の役割です。

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4. 銀行に自己資本比率を「正しく見せる」3つのコツ


① 仮払金・未処理項目を整理する


貸借対照表に仮払金・仮受金・役員貸付金などの不透明な項目が多いと、銀行は「実質的な純資産はもっと少ないのでは」と評価します。これらを整理するだけで、自己資本比率の見た目の信頼性が上がります。


② 月次推移での改善を数字で示す


決算書の数字が現時点で低くても、月次試算表をもとに「このペースでいけば来期は自己資本比率20%超を目指せる」という定量的な説明ができれば、銀行担当者の評価は変わります。改善の方向性と計画を数字で示すことが重要です。


③ 役員借入金を「実質自己資本」として説明する


社長や株主からの借入金がある場合、「返済義務が実質ない資金」である旨を補足資料に明記することで、銀行によっては実質的な自己資本として評価してくれるケースがあります。ただしこれは銀行担当者との関係性や補足説明の内容によるため、一律には期待できません。


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よくある質問(FAQ)


Q1. 自己資本比率と自己資本額、どちらが重要ですか?


両方重要ですが、銀行は比率を重視します。自己資本が1億円あっても総資産が20億円あれば自己資本比率は5%です。一方、自己資本が2,000万円でも総資産が5,000万円なら40%になります。規模より「バランス」で見られます。


Q2. 業種によって目標とすべき自己資本比率は変わりますか?


変わります。設備投資が多い製造業・建設業は借入が多くなりやすく、10〜20%でも許容されるケースがあります。一方、サービス業・コンサル業など資産が少ない業種は30%以上を目指せる環境にあります。自社の業種平均と比較することが重要です。


Q3. 増資すれば自己資本比率は上がりますか?


上がります。ただし増資には株主構成の変化・登記費用・税務上の検討が必要です。また、現金を増資で受け入れると総資産も同額増えるため、比率の改善幅は計算上限定的です。DESの方が総資産を増やさずに純資産を増やせるため、自己資本比率の改善効果は大きいです。


Q4. 自己資本比率が低い状態で融資を申し込む場合、何を準備すればいいですか?


①現在の水準と原因の説明、②改善計画(3か年のPL・CF予測)、③月次試算表による改善推移の提示、この3点がセットで揃っていれば、審査を前向きに進められるケースがあります。日本政策金融公庫や商工中金は、改善途上の会社に対して民間銀行より柔軟に対応することがあります。


Q5. 節税と自己資本比率の改善を両立させることはできますか?


できます。ただしすべての節税手法が自己資本比率に悪影響を与えるわけではありません。たとえば、設備投資による減価償却は資産として残るため純資産への影響は限定的です。一方、不要な生命保険への加入による保険料の費用処理や少額資産の大量購入による費用計上は資産性がなく純資産を削ります。節税手法ごとに財務への影響を確認しながら設計することが重要です。


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まとめ


  • 自己資本比率は 純資産 ÷ 総資産 × 100 で計算する

  • 銀行の評価目安は30%以上が良好・10%未満は要注意水準

  • 改善の基本は①毎期黒字で内部留保を積み上げる、②役員借入金のDES、③節税による自己資本の過度な圧縮を避ける

  • 銀行への見せ方として月次推移・補足資料の整備が有効

  • 節税と財務健全性はトレードオフ。中長期の視点で両立を設計することが重要


自己資本比率は単なる数字ではなく、銀行・取引先・金融機関からの信用そのものです。節税や利益操作に偏ると財務体質が弱く見えるため、中長期の自己資本戦略が必須です。


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