複数の金融機関との付き合い方|メインバンクとサブバンク戦略
- 近藤 祐輔

- 2025年7月8日
- 読了時間: 7分
更新日:5月7日
はじめに
「銀行との取引は1行に絞るべきですか?」「メインバンクとサブバンクの役割って、何が違うんですか?」
複数の金融機関との関係をどう構築・管理するかは、資金調達の成否だけでなく、将来の事業展開や緊急時のリスク対策にも直結します。
今回は社長と税理士の対話形式で、中小企業にとって理想的な銀行取引の戦略を解説します。
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1. メインバンクとサブバンクの役割の違い
社長: メインバンクとサブバンクって、何が違うんですか?
税理士: 役割と関係の深さが異なります。
区分 | メインバンク | サブバンク |
主な役割 | 中長期的な資金調達の中心・財務理解の深さ | 短期資金・借換え・補助金連携などの補完 |
取引の深さ | 預金・借入・給与振込・決済など幅広い | 特定の借入や取引のみでもOK |
情報共有 | 月次試算表・経営計画を定期報告 | 必要に応じて資料提出 |
期待される関係 | パートナーとしての長期支援 | 比較検討や柔軟な選択肢の提供 |
社長: メインバンクは1行だけですか?
税理士: 基本的に1行です。メインバンクは「最も自社のことを理解している金融機関」であり、緊急時や成長資金の調達では中心的な存在になります。ただしサブバンクを1〜2行持つことで、リスク分散と交渉力の強化ができます。
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2. なぜ複数の金融機関と取引すべきなのか
社長: 1行に集中した方が関係が深まっていいんじゃないですか?
税理士: 1行依存には大きなリスクがあります。主に3つの理由から、複数行との取引をお勧めします。
① リスク分散
1行だけと取引していると、その銀行が貸し渋りや方針転換した際に資金繰りが一気に苦しくなります。災害・システム障害などで取引停止になった際の対応先がないというリスクも無視できません。
② 借入条件の比較・交渉力
複数行と取引があれば、金利・返済条件・対応の柔軟性を比較できます。金融機関側も「他行がついている」ことで適度な競争意識が生まれ、条件交渉がしやすくなります。
社長: 複数行に申し込むと「資金繰りが苦しいのでは」と思われませんか?
税理士: 無計画な同時申込は確かに問題になることがありますが、メインとサブの役割を明確にした上での複数行取引は、銀行側も当然のこととして理解しています。公庫と民間の協調融資など、複数行の活用が推奨されるケースも多くあります。
③ 情報・支援の幅が広がる
各金融機関で得意な業種・制度が異なります。補助金情報・ビジネスマッチング・経営支援など、銀行によって提案内容が違うことも多く、複数行との関係があることで得られる情報の質と量が上がります。
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3. 理想的な銀行取引のポートフォリオ
社長: 何行と付き合うのが適切ですか?
税理士: 企業規模や資金調達フェーズによって異なりますが、目安はこうです。
年商 | メインバンク | サブバンク |
〜1億円 | 信用金庫または地方銀行 | 日本政策金融公庫 |
1〜5億円 | 地方銀行 | 信用金庫・公庫 |
5億円〜 | 地銀+商工中金を視野に | 信金・地銀複数行 |
📌 特に創業期〜成長期は、信金+日本政策金融公庫+地銀の構成がバランス良好です。
社長: 借入先が多すぎるのはよくないですか?
税理士: よくありません。借入先が多すぎると管理負担が増え、銀行評価も下がることがあります。目安は借入先2〜3行、多くても4行以内に抑えることをお勧めします。
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4. 実践的な管理方法
社長: 複数行と付き合う場合、どう管理すればいいですか?
税理士: 3つのポイントがあります。
① 銀行ごとに取引台帳を管理する
借入額・金利・残高・返済期間・条件などを一覧にしておきます。顧問税理士と共有することで、借換えや資金調達戦略を立てやすくなります。
② 「情報格差」が生まれないようにする
メインバンクにだけ情報提供してサブバンクは放置、というのは避けてください。サブバンクにも必要に応じて決算書・試算表などを開示することで、いざというときに動いてもらえる関係が作れます。
③ 年に一度「銀行関係の棚卸し」を行う
各行との借入条件・関係の深さ・今後の活用方針を年に一度見直すことをお勧めします。メインバンクを変更すべきタイミングや、サブバンクを追加・整理すべき局面を逃さないためです。
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5. 実例:年商3億円製造業の銀行戦略
社長: 具体的にどういう構成が理想的か、事例で見せてもらえますか?
税理士: 年商3億円の製造業クライアントの事例です。
メインバンク: 信用金庫(設備資金・補助金連携)
サブ①: 地方銀行(運転資金・プロパー融資)
サブ②: 日本政策金融公庫(創業時からのつながりを継続)
毎年3月に3行すべてに決算書と事業計画を配布し、次年度の投資と資金ニーズを共有しています。この結果、メインバンク以外にも相談できる体制ができ、プロパー融資の金利交渉や条件改善にも成功しています。
社長: 3行全部に同じ資料を渡すんですか?
税理士: 基本的には同じ資料です。ただしメインバンクには月次試算表を毎月提出し、より深い情報共有を行っています。サブバンクには決算書・事業計画を年1回提供するという形で情報の深さに差をつけています。
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よくある質問(FAQ)
Q1. メインバンクはどう選べばいいですか?
自社の規模・業種・地域性に合った金融機関を選ぶことが基本です。年商1億円未満なら信用金庫、1〜5億円なら地方銀行が現実的な選択肢です。担当者の質・対応の速さ・補助金情報の豊富さなども選定基準になります。最終的には「数字だけでなく経営の相談ができる担当者がいる銀行」がメインバンクとして最適です。
Q2. メインバンクを変更することはできますか?
できます。ただし既存の借入がある場合は借換えを伴うことが多く、手続きが複雑になります。また急に変更すると現メインバンクとの関係が悪化するリスクもあります。変更する場合は、新たな金融機関との関係を十分に構築してから段階的に移行することをお勧めします。
Q3. 日本政策金融公庫はサブバンクとして位置づけるべきですか?
公庫は預金機能を持たないため、厳密には「メインバンク」にはなりませんが、民間銀行とは別軸で継続的に関係を維持すべき金融機関です。創業期から事業継続の限り取引を維持し続けることで、民間銀行が慎重になる局面でも柔軟に対応してもらえる関係を作れます。
Q4. 銀行担当者が頻繁に変わる場合、関係はリセットされますか?
担当者が変わることは避けられませんが、月次報告の実績・提出した事業計画・面談記録などが支店内で引き継がれます。情報の蓄積があれば担当者交代による影響は最小限に抑えられます。定期的な情報提供を習慣化することが、担当者交代に左右されない関係構築の基本です。
Q5. 銀行との関係を「棚卸し」するとはどういうことですか?
年に一度、各行との借入条件(金利・残高・返済期間)・関係の深さ(情報共有の頻度)・活用度(融資以外の支援の活用)を見直すことです。「この行との関係は深まっているか」「条件交渉の余地はあるか」「サブバンクを追加・整理すべきか」を確認することで、最適な銀行ポートフォリオを維持できます。
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まとめ
メインバンクは「最も自社を理解している金融機関」。サブバンクは補完・比較・リスク分散の役割
1行依存は貸し渋り・方針転換・緊急時のリスクが大きい
複数行取引は借入条件の比較・交渉力強化・情報の幅の拡大につながる
借入先は2〜3行、多くても4行以内が目安
各行への情報格差をなくし、年1回の銀行関係の棚卸しを習慣化する
公庫は民間銀行とは別軸で継続的に維持すべき存在
銀行との関係は「選ぶ・育てる・使い分ける」の3つが基本です。複数行を戦略的に管理できる経営者は、非常時でも資金調達で困らない強さを持てます。
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