資金調達力を高める「試算表」「月次推移」の整備方法とは?~金融機関に評価される決算書以外の数字管理とは~
- yusukekondo9
- 6月17日
- 読了時間: 3分
はじめに
「試算表って、税理士に頼んでいれば出るものですよね?」「月次の損益は出ているけれど、金融機関に見せて意味があるんですか?」
これは経営者の方からよく聞かれる質問です。実は、資金調達の現場では「試算表」や「月次推移表」が決算書以上に評価される場面が少なくありません。
本記事では、資金調達力を高めるために不可欠な「試算表」と「月次推移表」の整備・活用方法を、税理士の実務目線でわかりやすく解説します。
1. なぜ「試算表」や「月次推移」が資金調達に効くのか?
✅ 銀行は“リアルタイムの経営成績”を見たい
決算書は年に1回。情報が古い
試算表(月次ベース)で「今」の業績と資金繰りを確認したい
✅ 会社の“管理能力”が見える
月次で数字を出している=内部管理ができている=信頼できる企業
試算表が出ない企業は「資金管理がずさん」と判断されがち
📌 金融機関が試算表・月次推移を見るのは、数字そのものより「数字を出せる経営かどうか」を見ている側面もあります
2. 試算表・月次推移とは何か?
◆ 試算表(残高試算表)
月末時点の損益状況と資産・負債の残高が一覧できる表
月次単体 or 累計で作成される
◆ 月次推移表(PL推移・BS推移)
各月ごとの売上、仕入、人件費などの変動がわかる
トレンド・季節性・成長性などが一目瞭然
📊 例えば以下のようなPL推移表があれば、金融機関は収益性と成長性を短時間で把握できます
月 | 売上高 | 売上原価 | 粗利 | 人件費 | 家賃 | 営業利益 |
1月 | 3,000 | 1,200 | 1,800 | 500 | 200 | 1,100 |
2月 | 3,500 | 1,300 | 2,200 | 500 | 200 | 1,500 |
3月 | 4,000 | 1,600 | 2,400 | 550 | 200 | 1,650 |
3. 金融機関に提出する際の整備ポイント
✅ 売上・原価・利益の構成が明確であること
「売上」「仕入」「人件費」「家賃」など主要項目を明確に
勘定科目をまとめすぎない(“雑費”が多いと不信感)
✅ 前年同月比・前年比の比較データを添付
月次推移に前年同月との比較列があると「改善傾向」が見える
資金調達では「成長性」が最も重視される
✅ 「異常値」「突発費用」は説明文を添付する
例:2月に広告費が大きく増えている →「新規キャンペーン開始のため」
補助資料としてコメント付き月次報告書があると◎
4. 月次資料の整備方法と実務ポイント
◆ 税理士との連携がカギ
税理士に「毎月末締め+翌月10日までに試算表が欲しい」と依頼
月次訪問やクラウド会計(freee、マネーフォワード等)ならリアルタイムで共有可能
◆ 金融機関に対して“説明できる”ことが重要
数字そのものより、「なぜ増えた/減った」の説明ができるかが評価される
試算表提出時には、代表者・税理士でポイントを整理しておく
5. よくあるNGパターン
ケース | 金融機関の評価 |
試算表が3ヶ月以上出ていない | 数字の管理ができていない会社 |
勘定科目が雑費ばかり | 中身が見えず、不信感が生じる |
粗利率の変動が激しいのに説明がない | 利益管理ができていないと判断される |
人件費の急増の説明がない | 経費コントロール不能と見なされる |
📌 試算表の「中身の精度」も評価されます
6. まとめ:月次を整える企業は資金も整う
試算表や月次推移表は、単なる会計データではなく、「企業の信頼性を数字で示す最強のツール」です。
そして、それを整える力こそが資金調達力に直結します。数字が整い、月次で利益管理ができる企業は、金融機関からの信用も得やすくなり、より低金利で、より柔軟な資金調達が可能になります。
✅ 経営者へのアドバイス
試算表を「銀行に出すための資料」ではなく「経営の武器」として使いましょう
月次の損益・資金繰りが可視化されれば、投資判断・資金繰り・借入の根拠がすべて連動してきます
税理士と連携しながら、“金融機関から評価される月次管理体制”を整備していくことが、資金調達の第一歩です
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