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内部留保があるのに融資が通らない理由|銀行が見る実態評価

  • 執筆者の写真: 近藤 祐輔
    近藤 祐輔
  • 2025年7月25日
  • 読了時間: 8分

はじめに


「内部留保があるのに、なぜ融資が通らないのか?」「利益剰余金が溜まっているのに、自己資金として評価されない・・・」


こういった疑問を感じたことはありませんか?実は金融機関が評価する「内部留保」と、会計上の「利益剰余金」は必ずしもイコールではありません。


帳簿上の数字より「実際に使えるキャッシュがどれだけあるか」を銀行は見ています。


今回は社長と税理士の対話形式で、銀行が見る「実質的な内部留保」の意味と評価・活用のポイントを解説します。


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1. 利益剰余金と実質内部留保の違い


社長: 決算書に利益剰余金が5,000万円あります。これは内部留保として評価されますよね?


税理士: 必ずしもそうとは言えません。会計上の「利益剰余金」と、銀行が評価する「実質的な内部留保」は異なります。

用語

内容

銀行の評価

利益剰余金

決算書上の累積利益

評価の参考にはなるが実態重視

実質内部留保

現預金+流動資産−負債の実質的余剰

実際に評価されるポイント


社長: 利益剰余金はあるのに現預金が少ない、という状態はどういうことですか?


税理士: 利益が有価証券・不動産・棚卸資産・貸付金などに変換されていて、すぐに使える現金として残っていない状態です。銀行は「利益剰余金があっても現預金がない」会社には慎重になります。「見かけの利益は多くても、実際に使えるお金がどこにあるのか」という視点で評価しています。


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2. 銀行が「実態」と「使い道」を見る理由


社長: 銀行はなぜ利益剰余金の数字だけで判断しないんですか?


税理士: 銀行が融資を判断する上で最も重要なのは「貸したお金が返ってくるか」です。そのために「実際に使えるお金がどこにあるか」を確認します。


銀行が評価する内部留保の特徴はこうです。

  • 現預金として残っている

  • 設備投資や投資有価証券に偏っていない

  • 借入過多に頼らず、自己資金で積み上げてきたことが分かる

  • 必要以上に節税で圧縮していない


社長: 「黒字で税金を払っている」ことは、銀行評価にプラスになりますか?


税理士: 大きなプラスです。黒字決算で納税しているということは「実際に利益が出ている会社」という証拠になります。節税一辺倒で利益を圧縮している会社は、帳簿上は利益がないように見えるため、銀行から「稼げていない会社」と誤解されるリスクがあります。


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3. 内部留保が充実している企業が得られるメリット


社長: 実質的な内部留保が厚い会社は、融資上どんなメリットがありますか?


税理士: 主に3つのメリットがあります。


① プロパー融資を受けやすくなる

自己資金が豊富であれば「借入に対して余裕がある」と判断され、信用保証協会を使わないプロパー融資の対象になりやすくなります。一般的に年商3億円超・内部留保5,000万円以上が一つの目安です。


② 金利引き下げ交渉の材料になる

信用格付けにおいて自己資本比率や利益剰余金が重視されます。内部留保が厚い会社には「御社の安定性を考慮し、金利を見直しましょう」と銀行側から提案されることがあります。


③ 長期・大型資金を調達しやすくなる

大型設備投資の際に「内部留保を一部使う+借入」という構成で融資提案がしやすくなります。「この会社は自己資金も出せる」という信頼感が、銀行の稟議を通りやすくします。


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4. 実質内部留保を改善する3つの実務アクション


社長: 利益剰余金はあるのに実質内部留保が薄いと判断された場合、どう改善すればいいですか?


税理士: 以下の3つのアプローチが有効です。


① 貸借対照表のスリム化(資産の棚卸し)

遊休資産(使っていない建物・設備)の売却・現預金化、貸付金・仮払金など「実態のない資産」の整理、棚卸資産の適正化を行います。銀行は「利益剰余金がどのような資産に変換されているか」を確認しています。特に役員への貸付金・仮払金は「私的流用の疑い」として評価を大きく下げます。


社長: 役員借入金(社長が会社にお金を貸している)はどうですか?


税理士: 役員借入金は問題ありません。社長が個人資産を会社に入れているということは、会社に対してコミットしているとプラスに評価されます。問題なのは「会社から社長への貸付金」です。これは逆方向であり、銀行融資を受けた資金が社長個人に流れていると判断される可能性があります。


② 毎年一定額の利益計上と納税の継続

利益を出して税金を払うことで、剰余金と信用が積み重なります。節税ばかりに偏ると「利益が出ていない会社」と誤解されるリスクがあります。税負担を完全にゼロにしようとする経営より、適正な利益を出し続ける経営の方が長期的な資金調達力は高くなります。


③ 「説明できる決算書」を税理士と作る

月次試算表・資金繰り表と連動させて「キャッシュの蓄積」が明確に見える資料を整備します。金融機関との面談で顧問税理士が剰余金と現預金の関係性を補足説明することも有効です。


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5. 実例:実質内部留保の改善でプロパー融資を実現


社長: 実際にどうやって改善した事例がありますか?


税理士: 製造業・年商3億円の会社の事例です。


数年間にわたり黒字を維持し、利益剰余金が累計5,000万円を超えていました。しかし決算書上では有価証券や棚卸資産に偏っており、融資は保証協会付きにとどまっていました。


以下を実行しました。

  • 遊休資産の売却→現預金化

  • 返済の前倒しで借入バランスを改善

  • 資金繰り表とともに内部留保の実態を資料にまとめ提出


結果: 信用金庫より「プロパー融資+金利引き下げ」の提案を受け、借換え+設備資金の計4,000万円を実行。


社長: 利益剰余金の金額は変わっていないのに評価が変わったんですね。


税理士: そうです。「見せ方」を変えるのではなく「実態」を変えたことがポイントです。利益剰余金が有価証券や棚卸資産から現預金に変わることで、銀行が評価する「実質内部留保」が増えたと判断されました。


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よくある質問(FAQ)


Q1. 利益剰余金が多くても現預金が少ない会社はどう改善すればいいですか?

まず利益剰余金がどのような資産に変換されているかを確認します。有価証券・遊休資産・過剰在庫が多い場合は現金化を検討します。貸付金・仮払金がある場合は早急に整理することをお勧めします。決算書の資産の内訳を税理士と一緒に確認することが第一歩です。


Q2. 節税と内部留保の積み上げはどう両立すればいいですか?

完全な節税(法人税をゼロにする)は内部留保の積み上がりを阻害します。利益の一部は税金として払いながら、残りを内部留保として積み上げるバランスが重要です。特別償却などの繰延型節税は内部留保が十分に蓄積されてから活用することをお勧めします。


Q3. 役員貸付金を解消するにはどうすればいいですか?

返済・役員報酬との相殺・債権放棄の3つが主な手段です。金額・発生経緯によって最適な解消方法が異なるため、税理士に相談することをお勧めします。


Q4. 内部留保が厚い会社とそうでない会社で、融資条件はどのくらい変わりますか?

金利・融資期間・保証の有無・融資限度額のすべてに影響します。一般的に自己資本比率30%以上・内部留保5,000万円以上を目安にプロパー融資の対象として評価されやすくなります。ただし金融機関によって基準が異なるため、顧問税理士を通じて各行の評価軸を確認することをお勧めします。


Q5. 内部留保を増やすために最も効果的なことは何ですか?

毎期の利益を社内に残し続けることです。役員報酬を適正水準に保ち、節税よりも利益の蓄積を優先する経営姿勢が長期的な資金調達力につながります。また不要な資産を現金化して貸借対照表をスリム化することで、既存の利益剰余金を「実質内部留保」として機能させることも有効です。


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まとめ


  • 会計上の「利益剰余金」と銀行が評価する「実質内部留保」は必ずしもイコールではない

  • 銀行が評価するのは「現預金として使えるお金がどれだけあるか」という実態

  • 黒字で納税することは「信用力の裏付け」——節税一辺倒は「稼げていない会社」に見えるリスクがある

  • 改善策は①貸借対照表のスリム化②利益計上と納税の継続③説明できる決算書の整備

  • 役員貸付金・仮払金は私的流用の疑いとして銀行評価を大きく下げる——早急に整理が必要


利益剰余金を積み上げることは税負担を伴う地道な取り組みです。しかしその蓄積こそが「この企業は自己責任で成長している」という銀行への明確なシグナルになります。


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