金融機関が見る「決算書」の読み方と改善ポイントとは?~融資審査で評価される数字と、評価を下げる決算の特徴~
- yusukekondo9
- 6月19日
- 読了時間: 4分
はじめに
「うちは黒字決算だし、問題ないはずです」「利益が出ているのに、融資が通らなかったのはなぜ…?」このような相談をよく受けますが、実は金融機関は単に「黒字かどうか」だけを見ていません。決算書には、利益・資金繰り・財務健全性など多くの情報が含まれており、銀行は“5つの視点”で総合的に読み取っています。
今回は、融資における決算書の評価ポイントと、資金調達のための改善策について、税理士の立場から実務的に解説します。
1. 金融機関が決算書で見る「5つの評価視点」
項目 | チェックされる内容 | 評価ポイント |
① 損益状況(PL) | 売上・利益の安定性/成長性 | 毎期黒字か/利益率は? |
② 資産の健全性(BS) | 売掛金・在庫・固定資産の妥当性 | 過大計上がないか? |
③ 負債の構成(BS) | 借入金の水準/返済能力 | 自己資本比率/長短バランス |
④ キャッシュフロー | 営業活動による現金収支 | 利益≠現金 → 回収力を重視 |
⑤ 計上の信頼性 | 経費の水増しや利益操作の有無 | 税理士関与/粉飾リスクの排除 |
📌 金融機関の目は「将来返済できるか」という“安全性と再現性”を中心に決算書を読みます
2. 損益計算書(PL)の見方と改善ポイント
✅ 見られるポイント
毎年の売上高と利益の推移
売上総利益率(粗利率)や営業利益率
突発的な赤字や経費急増の原因
✅ よくあるNGと改善策
NG決算 | 銀行の印象 | 改善のヒント |
最終利益がマイナス | 返済余力に不安 | 月次で黒字化計画を立てて説明 |
売上は増えたが利益率が下がっている | 採算管理が甘い | 原価と販売価格の見直しを説明 |
人件費・交際費が突出 | コスト管理不足 | 試算表での費用分析と再計画の提示 |
📝 営業利益が安定して黒字であれば、「事業体力がある」と判断されやすくなります
3. 貸借対照表(BS)の見方と改善ポイント
✅ 見られるポイント
資産の中身(現金・売掛金・在庫・設備)の健全性
負債の内訳(借入金の構成/返済スケジュール)
自己資本比率や債務超過の有無
✅ よくあるNGと改善策
NG決算 | 銀行の印象 | 改善のヒント |
売掛金が過大 | 回収に不安/架空計上の疑い | 回収サイト・入金管理体制の明示 |
借入金ばかりで自己資本が少ない | 財務基盤が弱い | 留保戦略や増資検討も併せて説明 |
設備が多いが減価償却が追いついていない | 実態が見えない | 定期的な資産見直しを実施 |
📌 金融機関は「資産の内容」と「資本の構造」から、事業の継続性を評価します
4. キャッシュフローと銀行の目線
「利益が出ているのに、現金が足りない」この状態では、銀行からの評価は低くなります。
✅ 見られるポイント
営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)がプラスか
売掛・在庫の増減と連動しているか
借入金の返済能力(DSCR)に無理がないか
📌 営業CFがマイナスの年が続くと、「事業のキャッシュ創出力がない」と判断されます
5. 決算書の「信頼性」も重要
金融機関は、次のような観点から決算の信頼性を評価します。
税理士関与の有無(顧問税理士あり=信頼性高)
「節税目的の赤字」が疑われる場合は、その背景説明が必要
経費のバランスや勘定科目の使い方(雑費・交際費が多すぎると疑念)
📝 “見せる決算”を作るためには、会計方針と経営方針のすり合わせが必要です
6. 実際に行うべき改善アクション
アクション | 内容 |
月次試算表の整備 | 金融機関に対して「決算後」も最新情報を提示できる |
売掛金管理表の導入 | 回収状況の見える化と説明が可能になる |
借入金一覧・返済計画表の作成 | 借換や借入申請時に即座に資料提出できる |
利益計画と資金繰り表の作成 | 「どう利益を残すか」「どう返済するか」が説明可能に |
7. まとめ:「決算書を出す」から「決算書を伝える」へ
銀行が決算書を見るのは、単なる数字のチェックではなく、「この会社は信用できるか」「将来返してくれるか」を判断するためです。
そのためには、ただ数字を出すのではなく、・なぜそうなったのか(背景)・今後どうするのか(改善計画)をセットで説明することが、資金調達成功の鍵になります。
✅ 経営者へのアドバイス
決算書は「税務申告のため」ではなく「会社の信用力を示すツール」です
顧問税理士と一緒に「金融機関に伝わる決算」を設計しましょう
融資を受ける前提ではなく、「融資を受け続けられる会社」になるための財務体質をつくることが重要です
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