金融機関が評価する「格付け」の仕組みとは?~資金調達力を高めるための実践的な改善ポイント~
- yusukekondo9
- 7月1日
- 読了時間: 4分
はじめに
「うちは黒字決算なのに、なぜ融資の条件が悪いのか?」「なぜあの会社にはプロパー融資が通って、うちには保証付きなのか?」
その背景には、金融機関が企業に対して独自に評価している「格付け」があります。この「格付け」は、資金調達の可否や条件を大きく左右する“企業の信用力スコア”のようなものです。
本記事では、金融機関の格付けの仕組みと、それを改善するための実践的な対策について解説します。
1. 金融機関における「格付け」とは?
✅ 格付け=企業の信用リスクの“数値化”
金融機関は融資先の企業を「貸しても大丈夫かどうか」という観点で評価します。その結果を内部的にスコア化・ランク付けしたものが「格付け」です。
項目 | 内容 |
格付けスコア | 数字(1〜10段階など)で社内的に管理 |
使用目的 | 融資判断、金利設定、保証要否、融資限度額の決定など |
公表の有無 | 原則非公開(担当者も直接は教えてくれない) |
📌 格付けが良い企業ほど「低金利」「プロパー融資」「長期融資」などの優遇を受けやすくなります
2. 格付けを構成する3つの主要要素
金融機関によって細かい違いはありますが、主に以下の3つが評価軸です。
① 財務スコア(定量評価)
過去の決算書3期分を中心に評価
評価指標例:自己資本比率、営業利益率、債務償還年数、インタレストカバレッジレシオなど
📌 典型的な例:
自己資本比率30%以上
営業利益率5%以上
債務償還年数10年以内
が一つの目安ラインとなります
② 経営の定性評価(定性スコア)
経営者の資質(誠実性・リーダーシップ・人柄)
月次管理体制、事業の将来性、市場動向、競合優位性
金融機関との情報共有姿勢(資料提出の早さ・精度)
📌 面談対応・計画説明・数字に対する理解が大きく影響します
③ 与信履歴・取引実績
融資返済の遅延有無
預金取引の有無、給与振込・納税口座などの取引量
同行との付き合い年数(取引履歴)
📌 「日頃からの姿勢」がそのまま格付けに影響する部分です
3. 格付けが悪いとどうなるのか?
項目 | 影響内容 |
融資可否 | 審査が通りにくくなる/保証協会付きに限定される |
金利 | 引き下げが難しく、相場より高く提示されやすい |
借入期間 | 長期融資が難しくなり、運転資金中心になる |
借換え | 繰上げ返済や条件変更が受けにくくなる |
📌 格付けが「下がった」だけで、同じ会社・同じ実績でも借入条件が一変することも
4. 格付け改善のためにできる具体的な5つのアクション
① 月次決算・資金繰り表を整備し、定期的に提出
試算表・資金繰り表を毎月共有することで「管理体制が整っている企業」と認識される
決算書だけでなく、「日々の数字に向き合っている」企業は評価されやすい
② 営業利益を安定的に黒字に保つ
単年度赤字でも翌期で黒字化すれば回復可能
特に「営業利益」での黒字が重要視される
節税を目的とした“意図的赤字”は要注意(評価を落とす要因)
③ 自己資本を積み上げる
繰越利益の留保/資本金増資/社長借入金の資本振替なども有効
資産よりも“純資産”を厚くする意識が重要
④ 経営計画書や事業説明資料を提出
計画に基づいた資金調達は「戦略的経営」として高評価
計画未達でも、目標を立てる姿勢そのものが評価される
⑤ 顧問税理士・第三者専門家の関与を明示
数字の信頼性が上がり、銀行側も安心して判断できる
税理士が同行・説明することで格付けが改善された事例も多数
5. 実際の改善事例(年商1.8億円/サービス業)
以前は赤字決算が続いており、保証協会付きでしか借入ができなかった企業
月次試算表と資金繰りを整備し、税理士が同席して経営計画書を提出
2期連続で営業利益黒字 → 自己資本比率改善
金融機関側の評価が上がり、3年目でプロパー融資1,500万円に成功
📌「格付けは変えられる」ことを示した実例です。
まとめ:「格付け」は見えないが、改善できる
格付けは外からは見えません。銀行の担当者に聞いても明言はされません。しかし、格付けは数字と姿勢で“着実に変えていける”ものです。
大切なのは、「決算書の中身」と「普段の関係性」の両方に気を配ること。そして、顧問税理士や金融機関と連携して、格付けの土台となる経営の“質”を整えていくことです。
✅ 経営者へのアドバイス
節税や赤字決算だけに偏らず、将来の資金調達を見据えた決算を
銀行には「見せる数字」と「話す言葉」をしっかり整える
税理士とともに、「銀行から評価される会社」を目指すことが資金調達の第一歩です
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