役員報酬と事前確定届出給与の注意点~「損金になると思っていたのに否認された」にならないために~
- yusukekondo9
- 12 分前
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「役員賞与は原則として損金にならない」という税務上の原則をご存じの方も多いかと思います。そのなかで唯一、損金算入が認められているのが『事前確定届出給与』です。
しかしこの制度、非常に厳格な形式要件があるため、「手続ミスにより損金不算入になる」トラブルが後を絶ちません。
この記事では、制度の概要・損金算入の要件・変更可否を含む実務上の注意点を、税務と財務の視点から詳しく解説します。
I. 事前確定届出給与とは?
法人が役員に対して支給する賞与などについて、「金額」「支給時期」「対象者」などを事前に届出することで損金算入を可能にする制度です。
通常、役員賞与は法人税法上損金不算入ですが、届出を行えば一定の範囲で損金算入が認められます。
II. 届出の期限
法人の区分 | 届出期限 |
株主総会を開催する普通法人 | 株主総会決議日から1か月以内かつ支給日の前日まで |
株主総会を開催しない法人(例:合同会社など) | 事業年度開始日から4か月以内かつ支給日の前日まで |
📌 1日でも遅れると損金になりません。必ず期限内に提出しましょう。
III. 損金算入が認められる要件
以下の3要件すべてを満たす必要があります:
届出が期限内に提出されていること
届出通りの金額・支給日で実際に支払われていること
途中で変更・中止されていないこと(ただし後述の「変更届出書」の提出により例外あり)
IV.「変更届出書」で変更が認められるケースとは?
原則として、事前確定届出給与は「一度提出したら変更不可」ですが、以下のようにやむを得ない事情があると認められた場合に限り、「変更届出書」を提出することで変更が認められます。
(代表的な認められる理由)
病気や事故などによる役員の退任
法人の解散、事業譲渡等
災害等による著しい収益悪化
合併・分割等による事業形態の変更
📌 単なる業績悪化や資金繰りの都合だけでは認められないこともあるため、慎重な検討が必要です。
V. 税務上の否認例(実務で特に多い)
ケース | 結果 | コメント |
届出は期限内だったが、実際の支給額が1万円多かった | ❌ 否認 | 届出内容と1円でも違うとアウト |
総会議事録では「期末賞与支給」とあったが支給が遅れた | ❌ 否認 | 支給日の遅延も認められない |
期中に役員が退任したため賞与を支払わなかった | ⭕ 一部例外 | 正しく変更届出書を出せば否認回避できる場合あり |
VI. 財務・金融機関の視点
金融機関は役員報酬の水準や構成について、以下の観点から見ています:
報酬水準が利益と見合っているか(高すぎると財務悪化の要因と判断される)
事前確定届出給与の制度を使っていても、赤字企業での多額賞与は疑問視される
継続的に賞与を出していると「実質固定報酬」として見なされることもある
📌 税務だけでなく財務的な合理性も重要です。
VII. 実務のポイントと対応策
実務対応 | 解説 |
届出期限を事前にカレンダー管理 | 締切を過ぎた届出は絶対に通りません |
株主総会議事録に支給日・金額・受給者を明記 | 曖昧な表現はトラブルのもと |
銀行振込予約で確実に期日通り支給 | 手続き遅れによる否認を防ぐ |
万一の変更が必要な場合は、税理士と相談のうえ「変更届出書」の提出を検討 | 早めの準備と事情説明が不可欠 |
まとめ|「手続きの正確さ」が何より大切
事前確定届出給与は損金算入が可能な強力な節税制度
ただし、届出のタイミング・内容・実行の正確さがすべて
正当な理由がある場合に限り、変更届出書での対応も可能
財務・税務両面でロジックの整合性を持たせることが重要です
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