損益計算書(P/L)の読み方と利益の種類の違い〜「5つの利益」を理解して、銀行評価と経営判断の精度を上げる〜
- yusukekondo9
- 6 日前
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「利益が出ている」と一口に言っても、その中身は一つではありません。年商5億円を目指す経営者が金融機関や投資家と信頼関係を築くためには、「損益計算書の読み方」と「利益の種類の違い」を正しく理解することが必須です。
本記事では、損益計算書の構造と5つの利益の意味、それぞれが経営判断や金融機関からの評価にどう影響するかを解説します。
I. 損益計算書とは?
損益計算書(Profit and Loss Statement/P/L)は、一定期間の売上・費用・利益の流れを記録したものです。
貸借対照表が「一時点の財務状況」を示すのに対し、P/Lは「ある期間の成績表」としての役割を果たします。
その基本構造は以下のように、上から下へと利益を段階的に計算していく形です:
売上高
売上原価
売上総利益(粗利)
販売費及び一般管理費(人件費、家賃など)
営業利益
営業外収益・費用(受取利息、支払利息など)
経常利益
特別利益・損失(例外的な取引)
税引前当期純利益
法人税等
当期純利益
II. 経営者が理解すべき「5つの利益」とは?
損益計算書で特に重要な利益は、以下の5つです。それぞれ役割が異なり、見る人によって評価の対象も変わります。
1. 売上総利益(粗利益)
= 売上高 − 売上原価
「本業でどれだけ利益を生んでいるか」の初期段階を示す指標です。飲食業なら仕入れ原価、人材業なら外注費などが原価に該当します。
✅ 経営者が見るべきポイント:
粗利率が業界平均に比べて高いか?
原価管理や価格設定に問題はないか?
2. 営業利益
= 売上総利益 − 販売費及び一般管理費
いわゆる「本業の実力」を示す利益です。人件費や広告費などの固定費が適切にコントロールされているかが問われます。
✅ 金融機関が重視する利益のひとつ「事業の継続性」「収益性」を見る上で最も重要な指標の一つです。
3. 経常利益
= 営業利益 ± 営業外収益・費用
本業に加え、受取利息・支払利息などの通常発生する収支を含めた利益です。会社全体の**「通常状態でのもうけ力」**を示します。
✅ 銀行が最も注目する利益返済原資を計算する際にも使われます。
4. 税引前当期純利益
= 経常利益 ± 特別利益・損失
特別損益には、土地の売却益・火災による損失など、例外的な収支が含まれます。一時的な利益や損失の影響が出るため、継続的な実力とは切り分けて考える必要があります。
✅ 経営判断の際は、特別損益を除いた継続利益の動向に注目するのが望ましいです。
5. 当期純利益
= 税引前利益 − 法人税等
最終的に残った利益で、貸借対照表の繰越利益剰余金に加算される金額です。黒字でも現金がないことがあるのは、この純利益が会計上の利益であり、資金ベースでないためです。
✅ 税務申告や株主報告などで使われる公式な利益指標
III. 「利益が出ているのにお金がない」理由とは?
損益計算書を読み慣れていないと、以下のようなギャップに戸惑うことがあります:
利益は黒字なのに資金繰りが厳しい
利益が出ていても銀行評価が低い
この背景には以下の要因があります:
要因 | 解説 |
売掛金の増加 | 実際の入金がまだ先のため現金が増えない |
在庫の増加 | 利益は出ていても現金化されていない |
借入返済 | 利益ではなくキャッシュを使うため資金が減る |
設備投資 | 利益計上されていても、現金が先に出ていく |
つまり、P/Lだけでは資金繰りの実態は見えないということです。
IV. 金融機関との関係で特に重視される利益とは?
金融機関が融資判断で重視するのは以下の順です:
経常利益 … 通常の営業状態での安定性を見る
営業利益 … 本業の実力評価
当期純利益 … 税引後の最終成績(剰余金増加の源)
一方で、特別利益や一時的な売却益などは加味されにくいため、そこだけで利益を良く見せても融資評価は上がりません。
V. まとめ|損益計算書は「過去の戦略の通知表」
損益計算書は単なる数字の羅列ではなく、過去の戦略の結果を表す通知表です。そして、「5つの利益」を使い分けて見ることで、次のような判断が可能になります:
どこで利益が出ているのか(粗利か?営業か?)
経営効率はどうか(販管費に無駄がないか?)
銀行評価はどう見られるか(経常利益ベースで黒字か?)
経営者として、これらの視点を持つことが、次の戦略判断に直結します。
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