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損金・益金の考え方と会計との違い〜「会計で費用でも、税務では損金にならない」その理由を知っていますか?〜

  • yusukekondo9
  • 8月27日
  • 読了時間: 3分

法人税の計算においては、「損金」「益金」という言葉が頻出します。これらは会計上の「費用」「収益」と似ているようで、本質的に別物です。

この記事では、「損金・益金とは何か?」「会計と何が違うのか?」「どんなときにズレが生じるのか?」を、実務でよくある例とともに解説します。



I.「損金」と「費用」は違う?


まず押さえておきたいのは、損金 ≠ 会計上の費用という事実です。

用語

定義

使用場面

費用

会計基準に従って、収益との対応をもとに記録されるもの

決算書(P/L)上

損金

法人税法に基づき、「課税所得を計算するために控除できる金額」

税務申告書(別表四)上

つまり、会計では費用として処理されていても、税務上は「損金と認められない」ことがあります。この違いこそが、「会計と税務のズレ」や「法人税額の予想外の増減」の原因なのです。



II. 益金と収益の違いも同様


益金もまた、会計上の「収益」とは異なる概念です。

用語

定義

収益

商品販売などによる売上など(発生主義)

売上高、受取利息

益金

課税対象となる経済的利益

売上、受取配当金、雑収入など(現金主義に近い)

会計では売上を計上していても、税務上はまだ益金とされないこともあります。



III. よくある「損金にならない費用」の実例

費用の内容

会計上の扱い

税務上の扱い

理由・注意点

交際費

費用として計上

損金算入に上限あり(中小企業800万円まで)

上限超過分は加算

減価償却費

任意償却可能

法定耐用年数・償却率に従う

超過償却は加算対象

引当金(賞与、退職給付等)

会計処理可

原則損金不算入(条件あり)

確定要件が必要

寄附金

全額費用計上

一部しか損金算入できない

上限を超えると加算

役員給与

経常費用

事前届出がなければ損金否認

「事前確定届出給与」が必要

社長個人の経費

会社経費として処理

私的支出とみなされると否認

税務調査で指摘されやすい

✅ ポイント:「会計上OK=法人税計算でもOK」とは限らない。税法のルールを別途確認する必要があるのです。



IV. 会計と税務がズレる理由


この違いは、会計と税務の目的の違いに起因しています。

観点

会計

税務

目的

利害関係者への正確な業績報告

公平で確実な課税

タイミング

発生主義

現金主義に近い原則あり

基準

会計基準(企業会計原則)

法人税法・通達

税務は、「課税ルールを厳格に適用して脱税を防ぐ」という目的のため、会計よりも保守的で厳しい面があります。



V. 実務における対応方法


経営者として、以下のような姿勢が大切です:

  1. 会計上の費用が全て損金になるとは思わないこと

  2. 税務上の損金・益金調整は、必ず顧問税理士と確認すること

  3. 節税だけでなく、銀行評価・経営判断とのバランスをとること


税務調整の内容は、法人税申告書の「別表四」「別表五」で確認できます。経営者として概要だけでも把握しておくと、税理士とのコミュニケーションがスムーズになります。



まとめ|「損金になる/ならない」を知ることは経営判断力の向上

  • 会計上の利益 ≠ 課税所得

  • 費用 ≠ 損金、収益 ≠ 益金


この違いを理解することが、「納税の正確性」と「経営の透明性」につながります。

年商5億円を目指す企業にとって、損益の実態を把握し、税法上の制限も理解したうえで意思決定を行うことが、節税と財務健全性の両立につながります。

 
 
 

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