設備投資のタイミングと減価償却の見せ方~税務と銀行評価の両面から見る“賢い投資”の進め方~
- yusukekondo9
- 5 日前
- 読了時間: 4分
はじめに|「設備投資=節税」は本当に正しいか?
決算期が近づくと、こうしたご相談が増えてきます。
「今期利益が出そうだから、設備を買って節税したい」
「車を買って減価償却で利益を圧縮しようかと…」
一見すると理にかなっているようですが、設備投資=節税策という短絡的な考え方には注意が必要です。特に、金融機関や将来の財務健全性を意識した経営をするうえでは、“いつ”“何に”“どう見せるか”を考えた戦略的な設備投資が求められます。
1. 設備投資は“資産”であって“経費”ではない
まず押さえておきたいのが、「設備投資はその期に全額経費になるわけではない」という点です。
📌 たとえば500万円の機械を買っても、税務上は一括経費にならず、法定耐用年数に応じて少しずつ費用化(=減価償却)されます
2. 減価償却費は“会計上の費用”であり、キャッシュは出ていない
減価償却費は、実際にお金が出ていく支出ではありません。そのため、キャッシュフロー上はプラス効果があります。
✅ 減価償却の目的
設備の価値を使用年数に応じて費用化
税務上、利益を適正に反映
会計上の収益対応費用として認識
📌 減価償却は「税金計算上のルール」であると同時に、銀行が企業のキャッシュ創出力を判断する材料にもなります
3. 銀行が見るのは「利益+減価償却費」
銀行が評価するのは、損益計算書(PL)の営業利益だけではありません。
通常は、「経常利益+減価償却費」や「税引前利益+減価償却費」などを用いて、キャッシュフローの創出力(返済余力)を見ています。
例:
このように、たとえ営業利益が低くても、減価償却をしっかり行っていれば銀行評価は良くなります
4. 償却不足は税務上問題なしだが、財務評価に影響あり
中小企業では、任意償却が認められているため、減価償却費を少なめに計上しても問題ありません。ただし、銀行目線ではマイナス評価につながる場合もあります。
✅ 税務の取り扱い
償却不足(減価償却費の未計上)は 経費否認されません(定率法・定額法ともに)
ただし、過大償却(法定限度額超)は否認対象となります
✅ 銀行目線での注意点
減価償却が適正にされていない=将来の負担を“隠している”と見られる
実態よりもキャッシュ創出力が低く見えてしまう
貸借対照表(BS)上の固定資産が過大になる
📌 税法上OKでも、「財務の見せ方」として損をする可能性があるのです
5. 設備投資のタイミングをどう判断するか
設備投資は、「利益が出てるから買う」「償却して節税したい」だけでなく、中期的な財務戦略に基づいて行うべきです。
✅ 判断ポイント:
6. 「投資理由」と「回収見込み」が銀行評価を左右する
金融機関が重視するのは、「なぜ買ったのか」「どう回収するのか」です。
✅ 準備しておきたい書類:
設備投資の目的書(業務効率向上・売上増加など)
投資金額と回収シミュレーション(3〜5年)
減価償却スケジュールと償却累計
設備の導入効果(KPIなど)
📌 これらをセットで説明することで、設備投資=戦略的判断であることが伝わり、銀行の信頼を得られます
まとめ|設備投資と減価償却は「未来への設計図」
“買って節税”ではなく、“設備を活かして未来をつくる”
これが、“数字で信頼される設備投資”のあり方です。
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