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貸倒引当金の税務|損金算入できる条件と計算方法を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 近藤 祐輔
    近藤 祐輔
  • 2025年9月4日
  • 読了時間: 4分

更新日:4月12日

結論:貸倒引当金は、会計では計上できますが、税務では原則として損金算入できません。


ただし、中小企業など一定の場合には例外的に損金算入が認められています。

この記事では、貸倒引当金の会計と税務の違い、損金算入の可否、実務対応のポイントを分かりやすく解説します。



はじめに


取引先の未回収リスクに備える「貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)」。

会計上は当然に計上されるこの引当金ですが、税務上では全額が損金になるとは限りません。むしろ、税務では非常に厳格な要件が課されており、処理を誤ると損金否認・追徴課税のリスクがある項目のひとつです。


I. 貸倒引当金とは?


貸倒引当金とは、将来的に貸倒れ(回収不能)となる可能性のある債権に備えて、あらかじめ損失を見込んで計上する準備的費用のことです。


主に、以下のような債権に対して計上されます:

  • 売掛金

  • 貸付金

  • 未収入金

  • 受取手形 など


✅ 会計上の目的

  • 発生主義に基づき、実現していない損失を合理的に見積もることで、期間損益を適正にする

  • 毎期の利益のブレを抑え、真の収益性を把握しやすくする



II. 会計と税務の違い:会計上はOKでも、税務ではNG?

項目

会計上の処理

税務上の取扱い

意義

債権の貸倒リスクに備える

損失を見積もって損金算入できるか

計上基準

実務対応報告・企業会計原則に従って、合理的に見積もる

法人税法に定められた要件・計算方法に従う必要あり

税務調整

不要(会計基準のみ)

必要(別表四で加算・減算処理

つまり、会計上は合理的な見積もりがあれば柔軟に引当金を計上できますが、税務では「損金算入が認められる条件」が決められており、その範囲を超えると損金不算入=税務上の費用とされません



III. 税務上の貸倒引当金の取り扱い


税務上では、以下の2つのいずれかに該当する場合のみ、一定額の損金算入が認められます。


① 個別評価金銭債権(貸倒れの可能性が高い債権)

  • 過去に遅延実績がある取引先

  • 倒産・再生手続中の会社に対する債権など

  • 債権の回収可能性が著しく低下している場合


➡ 会計上と同様に、個別に評価して合理的な金額を引当金として損金算入可能

 ただし、回収可能額の見積根拠(例:担保、不動産評価、過去回収実績など)が必要


② 一般債権(過去の実績に基づき一律に処理)

  • 通常の売掛金・受取手形などで、特別な貸倒懸念がないもの


➡ 以下の貸倒実績率を用いた計算により、損金算入が可能です。



IV. 一般債権に対する貸倒実績率の計算方法


直前3年間の実際の貸倒実績に基づき、以下のように計算します:


貸倒実績率 =(過去3年間の貸倒損失額) ÷ (過去3年間の売掛債権等残高)


この結果に基づき、期末の一般債権残高に乗じて、税務上の損金算入額を算定します。


この計算は毎期見直しが必要であり、過去の貸倒処理が適正でないと正しい実績率が使えなくなります。


※なお、中小企業などは貸倒実績率に代えて法定の実績率を使用することが可能です。

 例:卸売業・小売業:10/1000、製造業:8/1000、その他:6/1000 など



V. 実務対応のポイント

対応内容

解説

債権の区分管理

「正常債権」「要注意債権」「破産債権」に分ける

回収状況のモニタリング

長期未回収債権は「個別評価」対象として検討

過去の貸倒実績を正確に記録

「実績率」を計算できるように台帳を整備

別表四の調整を忘れずに

会計上の引当額と、税務上の損金算入額の差額を調整


VI. 金融機関の評価との関係


銀行や信用金庫は、以下の観点から貸倒引当金に注目します:

  • 債権管理がしっかりしているか(引当金計上の有無で判断)

  • 売上は計上されているのに引当金がない →「架空売上の可能性?」と疑われることも

  • 引当金が大きすぎる →「実際の債権管理が甘い」と判断されることも


➡ 財務の健全性を示すには、「適正に引当し、妥当な債権管理がされていること」を示すのが重要です。



まとめ


貸倒引当金は、会計では将来の損失に備えて計上しますが、税務では原則として損金算入が認められていません。

ただし、中小企業など一定の場合には例外的に認められるケースがあります。

会計と税務の違いを理解し、適切に税務調整を行うことが重要です。


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