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社長貸付金・仮払金が融資審査を狂わせる|銀行の評価ロジック

  • 執筆者の写真: 近藤 祐輔
    近藤 祐輔
  • 2025年10月16日
  • 読了時間: 8分

更新日:4月14日


はじめに


「決算書は黒字なのに、銀行の反応がいまいちで・・・」


その原因が、貸借対照表(BS)の片隅にひっそり計上されている「社長貸付金」「仮払金」「仮受金」にある場合があります。


一見すると小さな金額に見えても、銀行の目から見れば「資金の流れが不透明」「ガバナンスが甘い」というNGサインとして機能します。場合によっては、黒字決算であっても実質債務超過とみなされるケースもあります。


今回は社長と税理士の対話形式で、これらの科目が融資審査に与える影響と、具体的な解消策を解説します。


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1. 社長貸付金とは何か?なぜ銀行が嫌うのか?


社長: 先生、うちの決算書に「役員貸付金」が800万円計上されているんですが、これって問題ですか?ちゃんと資産として計上されていますから、問題ないですよね。


税理士: 実はこれ、銀行が最も嫌う科目の一つです。「資産として計上されているから大丈夫」という認識が、融資審査で大きなマイナスを生む原因になっています。


社長: なぜですか?会社がお金を貸しているだけなのに。


税理士: 銀行はこう考えます。「この貸付金、本当に返ってくるのか?」と。実態として、役員貸付金は返済されないまま放置されているケースが非常に多いんです。だから銀行は「実態のない資産」=回収できないお金として扱い、その分を純資産から差し引いて評価します。


銀行が社長貸付金に抱く4つの懸念

懸念

内容

資金の私的流用

会社のお金を社長が個人的に使っている印象を与える

回収可能性が不透明

返済計画がなく、実質的に回収不能とみなされやすい

経営姿勢への不信

「経営と私生活の区別がついていない会社」と評価される

粉飾決算の疑い

赤字を隠すための仮装取引の一部と疑われることがある


実質債務超過になるケース

純資産(帳簿上)   1,000万円
役員貸付金    ▲  1,200万円(実質回収不能とみなされた場合)
─────────────────────────────────
実質純資産       △200万円 → 実質債務超過

社長: 帳簿上は黒字でも、役員貸付金の金額次第で実質債務超過と判断されてしまうんですね。


税理士: そうです。この判断が融資NGや金利引き上げに直結することがあります。


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2. 仮払金・仮受金が「ずっと残っている」のはなぜ危ないのか?


社長: 仮払金って、出張費の立替とかで使うやつですよね。これも問題になるんですか?


税理士: 仮払金・仮受金そのものは問題ありません。問題なのは「ずっと残っている」状態です。


仮払金・仮受金とは


  • 仮払金: 出張旅費・仕入代金などの前渡し金や、支払いがあったがまだ正式な勘定科目が決まっていない場合に使う「仮の科目」

  • 仮受金: 入金があったが内訳が不明な場合に使う「仮の預かり金」


本来、これらは月内・遅くとも決算期内に精算されるべき一時的な科目です。


社長: 決算書に仮払金が300万円ほど残っているんですが、これはどう見られますか?


税理士: 銀行担当者は「この300万円は何ですか?」と必ず確認してきます。説明できなければ、「会計処理が杜撰」「帳簿管理ができていない」という評価になります。さらに悪い場合は、本来経費として計上すべき支出を仮払金のまま放置することで費用を少なく見せ、利益を水増ししている粉飾ではないかと疑われます。また、実態は社長への資金流出(社長貸付金の隠れ蓑)ではないかという疑惑もかかります。

仮受金が長期残高の場合はまた別の疑いがかかります。本来売上計上すべき入金を仮受金のまま放置して利益を意図的に圧縮している、あるいは社長からの資金注入など実態のない入金を仮受金に入れて後から売上に振り替える準備をしているのではないかという疑惑です。いずれも決算の信頼性そのものを問われる深刻な評価につながります。


銀行が仮払金・仮受金に抱く疑念

科目

銀行の見方

仮払金(長期残高)

経費計上すべき支出を仮払のまま放置し利益を水増ししている疑い、または社長への資金流出の隠れ蓑と評価

仮受金(長期残高)

売上の意図的な先送り、または実態のない入金を後から売上に振り替える準備をしている疑い → 決算の信頼性に疑問

📌 いずれも「透明性の欠如」と見なされ、融資判断にマイナス影響を与えます。

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3. 銀行の格付けへの具体的な影響


社長: 実際に融資審査でどの程度影響するんですか?


税理士: 銀行は決算書の「資産の質」を厳しく評価します。社長貸付金・仮払金・仮受金には、審査上ネガティブスコアが付きます。具体的には以下のような影響が出ます。


① 実質純資産が減少する 社長貸付金が回収不能とみなされると、その金額分が純資産から差し引かれます。自己資本比率が一気に悪化し、格付けが下がります。


② 債務償還年数が悪化する 実質純資産が減ると、相対的に有利子負債の比率が上がり、債務償還年数(借入金残高÷税引後利益+減価償却費)が長くなります。


③ 融資条件が不利になる 格付けが下がると、金利が引き上げられる・保証協会付きでないと融資できないという条件が付くことがあります。

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4. 解消するための3つのアクション


アクション①:社長貸付金を速やかに解消する


社長: 800万円の役員貸付金、すぐには返せないんですが・・・。


税理士: 一括返済が難しい場合でも、「返済計画を立てて実行している」という姿勢が重要です。毎月一定額を返済し、残高が減っていることを決算書で示せれば、銀行の評価は改善方向に向かいます。


資金繰りが厳しく返済が困難な場合は、以下の手法も検討できます。

  • 役員報酬との相殺: 役員報酬の一部を貸付金返済に充当する

  • 債権放棄: 会社が貸付金を放棄する(社長側に所得税が発生し、会社側は原則として役員賞与認定となり損金不算入となるため要注意)


いずれも税務上の影響があるため、必ず税理士と相談のうえ進めてください。


アクション②:仮払金・仮受金を期内に必ず精算する


  • 月末時点での仮払金・仮受金残高をゼロにするルールを社内で徹底する

  • 経費精算のフローを明文化し、記帳担当者を明確にする

  • 決算月に残高がある場合は、内容と精算予定を補足資料で説明できるよう準備する


アクション③:補足資料で透明性を高める


決算書だけでは説明しきれない場合、銀行提出用の補足説明資料を添付します。

資料

内容

役員貸付金の内訳書

発生経緯・返済計画・残高推移

仮払金の内訳書

内容・精算予定日

BS改善計画書

今後の解消スケジュールと数値目標


社長: こういう資料を自分で作れますか?


税理士: 形式より「数字の根拠と説明の一貫性」が重要です。作成に不安がある場合は、税理士と一緒に整備することをお勧めします。弊所では、銀行交渉を意識した決算書パッケージの作成支援も行っています。

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よくある質問(FAQ)


Q1. 役員貸付金が少額(50万円以下)でも問題になりますか?


金額が少なくても、「存在すること」自体が銀行のチェック対象になります。ただし、内容が明確で返済実績があれば、大きな問題にはならないケースがほとんどです。重要なのは「説明できる状態にしておくこと」です。


Q2. 役員借入金(社長が会社にお金を貸している)も同じく問題になりますか?


役員貸付金(会社→社長)とは逆方向であり、銀行の見方も異なります。役員借入金は「社長が会社を支援している」とポジティブに見られる場合もあります。ただし、金額が大きすぎると「本来は資本として入れるべき資金では?」と判断され、実質的な自己資本と見てもらえないケースもあります。


Q3. 税務調査でも社長貸付金は問題になりますか?


なります。返済の実態がなく、実質的に社長への給与・賞与とみなされる場合は、源泉所得税の徴収漏れとして指摘されることがあります。また、利息を取っていない場合は「適正利率による利息の計上漏れ」を指摘されるケースもあります。


Q4. 決算書を修正して社長貸付金を消すことはできますか?


単純に科目を変えて消すことは粉飾になります。正しい方法は、実際に返済するか、税務上適切な処理(債権放棄など)を経て解消することです。処理方法によって税務上の影響が大きく異なるため、必ず事前に税理士へ相談してください。


Q5. 金融機関に社長貸付金の存在を説明する場合、何を伝えれば良いですか?


①発生した経緯、②現在の残高、③返済計画(毎月いくら・いつ完済予定)、④今後は発生させない仕組みの整備、この4点をセットで説明できれば、銀行担当者の懸念を大幅に和らげることができます。「問題があることを把握して対処している経営者」という印象を与えることが重要です。


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まとめ


  • 社長貸付金・仮払金・仮受金は、銀行から「透明性の欠如」「実質債務超過」とみなされるリスクがある

  • 帳簿上は資産でも、銀行は回収不能とみなして純資産から差し引いて評価する

  • 解消の優先順位は①社長貸付金の返済計画策定、②仮払金・仮受金の月次精算徹底、③補足資料による透明性の確保

  • 「借入があっても預金が多い」実質無借金の状態と「決算書の透明性」がセットで整っていることが、銀行から評価される財務体質の基本


経営者の資金管理意識と会計の透明性が、会社の信用力を大きく左右します。「貸付金があるけど、このままで大丈夫?」という方は、早めにご相談ください。


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