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固定資産の耐用年数と償却スケジュール|資金戦略への活かし方

  • 執筆者の写真: 近藤 祐輔
    近藤 祐輔
  • 1月20日
  • 読了時間: 9分

更新日:5月16日

はじめに


「減価償却って、毎年決まった額を経費にするだけですよね?」


こう話す経営者は少なくありませんが、減価償却は単なる会計処理ではありません。税金・キャッシュフロー・設備投資のタイミングに直結する重要な経営指標です。


耐用年数と償却スケジュールを正しく管理することで、「いつ税金が増えるか」「いつ設備の再投資が必要になるか」を先読みした資金計画が立てられます。


今回は社長と税理士の対話形式で、固定資産の耐用年数と償却スケジュールの実務的な活かし方を解説します。


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1. 固定資産の耐用年数とは


社長: 耐用年数って、資産ごとに決まっているんですか?


税理士: 税法により資産の種類ごとに「法定耐用年数」が定められています。この年数に応じて、資産の取得価額を数年かけて費用化(減価償却)していきます。

資産の種類

法定耐用年数(例)

建物(事務所・RC造)

38年

建物附属設備(エアコン等)

15年

車両(普通乗用車)

6年

パソコン

4年

ソフトウェア

5年(原則)

機械・装置(一般)

10〜15年程度


社長: 実際の使用年数と関係なく、法定の年数で償却するんですか?


税理士: そうです。実際に10年使える設備でも、法定耐用年数が4年なら4年で償却します。逆に法定耐用年数が長い設備は、実態より長い期間かけて費用化されます。この「法定と実態のギャップ」が、税務と経営判断の両方に影響します。


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2. 耐用年数の管理がなぜ重要なのか


① 税金への影響


社長: 償却が終わると何が変わりますか?


税理士: 一気に課税所得が増えて、税負担が増します。これが「償却が終わった年に突然税金が高くなった」と感じる原因です。


例:取得価額1,000万円の機械(耐用年数10年・定額法)

償却期間中:毎年100万円の減価償却費が経費として計上される
償却終了後:その100万円分の経費がなくなる
 → 利益が100万円増え、法人税が約25〜30万円増加

社長: 複数の設備の償却が同じ年に終わると、かなりの影響がありますね。


税理士: そうです。複数の設備を同時期に購入していると、償却終了も重なります。その年に突然税負担が増えることを事前に把握しておかないと、資金繰りが苦しくなります。


② キャッシュフロー設計への影響


税理士: 減価償却費は「現金の支出を伴わない費用」という特性があります。


例:営業利益500万円・減価償却費200万円の場合

会計上の利益   500万円
実際のCFへの貢献 500万円 + 200万円(償却費)= 700万円

設備投資時に大きなキャッシュが出ていきますが、その後は現金支出なしに費用として計上され続けます。この「支出のタイミングと費用計上のタイミングのズレ」を理解することが、キャッシュフロー経営の基本です。


③ 設備の再投資タイミングの予測


耐用年数が終わる=設備の老朽化・再投資のサインです。償却スケジュールを把握していれば、「3年後に設備更新の資金が必要」という予測が立ち、計画的な資金準備ができます。


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3. 償却スケジュールの管理が甘いと起きること


社長: 償却スケジュールを管理していないと、具体的にどんな問題が起きますか?


税理士: 主に3つのパターンがあります。


① 税金が急に増えて資金ショートを起こす

複数の設備の償却が同じ年に終わり、課税所得が一気に増えます。納税資金を準備していないと、資金ショートのリスクがあります。


② 老朽化設備の故障による突発支出

「もう少し使えるだろう」とだましだまし使い続けた設備が突然故障し、緊急の設備投資が必要になります。計画的な更新サイクルがあれば防げるケースがほとんどです。


③ 損益と実態のギャップが拡大する

償却が終わった設備を長期間使い続けると、費用計上がなくなり「見かけ上の利益」が増えます。実態より利益が良く見える状態になり、実際の設備は老朽化しているというギャップが生じます。


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4. 償却スケジュールを資金戦略に活かす方法


① 設備投資計画と減価償却費をマッチさせる


社長: 毎年の償却費を平準化するにはどうすればいいですか?


税理士: 設備の購入時期を分散させることです。同じ年に大型設備を複数購入すると、毎年の償却費が重なって利益が圧縮され、その後一気に経費がなくなります。中長期の設備投資計画を立て、償却費が平準化されるよう購入時期を調整することで、毎期の利益と税負担が安定します。


② 税務戦略としての償却調整


社長: 税務上、償却を有利に使う方法はありますか?


税理士: いくつか活用できる制度があります。

  • 少額資産(10万円未満):全額を購入年度に即時費用計上できる

  • 一括償却資産(10万円以上20万円未満):3年均等償却(少額減価償却資産の特例との選択適用)

  • 少額減価償却資産の特例(中小企業・青色申告):2026年3月31日以前に取得した資産は30万円未満、2026年4月1日以降に取得した資産は40万円未満まで即時全額費用計上が可能(年間300万円上限)

  • 特別償却・即時償却(中小企業経営強化税制等):対象設備を購入した年に通常より多くの償却費を計上できる制度


ただし、これらの制度は頻繁に改正されるため、購入前に必ず最新の適用要件を税理士に確認することをお勧めします。


社長: 特別償却を使うと、その後の償却費がなくなりますね。


税理士: その通りです。特別償却は「課税の繰り延べ」であり、翌期以降の償却費がなくなることで将来の課税所得が増えます。内部留保が十分に蓄積されたフェーズで活用することが望ましく、成長フェーズで手元現金を厚くしたい時期には慎重な判断が必要です。

また制度によっては、特別償却ではなく税額控除(特別控除)を選択できるケースがあります。両者の違いはここが核心です。


特別償却:課税所得を減らす → 税金が「将来に先送り」になるだけ
税額控除:税金そのものが減る → 恒久的なキャッシュメリット

たとえば中小企業経営強化税制では、対象設備の取得価額の10%(または7%)を税額から直接控除できます。利益が十分に出ており税額控除を使い切れる状況であれば、特別償却より税額控除の方がトータルのキャッシュメリットは大きくなります。どちらが有利かは利益水準・税額・資金繰りの状況によって異なるため、設備投資の前に税理士とシミュレーションすることをお勧めします。


③ キャッシュフローベースの資金計画に組み込む


月次・年次の資金繰り表に償却スケジュールを組み込むことで、「今後5年間の設備更新コスト」「税負担の増加タイミング」を事前に把握できます。この情報を持って銀行との融資交渉に臨むことで、「計画的に設備投資を進めている会社」という評価につながります。


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よくある質問(FAQ)


Q1. 中古資産を購入した場合の耐用年数はどう計算しますか?

中古資産には簡便法という計算方法があります。法定耐用年数を全部経過した資産は「法定耐用年数×20%」、一部経過した資産は「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」で計算します。中古車や中古機械を購入する際は、この計算で耐用年数を確認することをお勧めします。


Q2. 耐用年数を自社で変更することはできますか?

会計上(決算書上)は、自社の実態に合わせた耐用年数を設定することは可能です。ただし税務上の課税所得の計算では原則として法定耐用年数を使う必要があります。そのため会計上の償却年数を変更しても、法定耐用年数との差額は別表四で加算・減算の税務調整が必要になり、最終的な税額は法定耐用年数で計算した場合と同じになります。自社で耐用年数を短くしても「節税になる」わけではない点は重要なポイントです。なお税務上の耐用年数そのものを変更したい場合は、「実情に著しく乖離する」と認められた場合に限り、税務署への申請で変更が認められるケースがあります。


Q3. 減価償却費は毎年必ず計上しなければなりませんか?

法人税法上、中小企業は任意償却(償却費を計上しない・少なく計上する)が認められています。ただし計上しないと税務上の資産価値との乖離が生じ、翌期以降の調整が複雑になります。また銀行評価の観点から、適正な償却をしていない決算書は「実態と乖離している」と見なされるリスクがあります。


Q4. リース資産の減価償却はどう扱いますか?

ファイナンスリースは実質的な売買取引として扱われ、リース資産を自社の固定資産として計上し、リース期間を耐用年数として減価償却します。オペレーティングリースは毎月のリース料を費用計上するだけで、減価償却は発生しません。契約形態によって会計・税務処理が異なるため、契約時に確認することをお勧めします。


Q5. 設備投資と補助金を組み合わせる場合、減価償却はどうなりますか?

補助金を受け取って設備を購入した場合、補助金相当額を圧縮記帳(取得価額から差し引く処理)すると、減価償却の対象となる金額が減ります。圧縮記帳をすると当期の税負担は軽減されますが、その後の減価償却費も少なくなります。補助金と減価償却の税務処理は複雑なため、申請前に税理士に相談することをお勧めします。


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まとめ


  • 法定耐用年数は資産の種類ごとに税法で定められており、企業が任意に変更することはできない

  • 償却が終わると課税所得が増えて税負担が増すため、終了時期を事前に把握して納税資金を準備する

  • 減価償却費は「現金支出を伴わない費用」であり、営業利益より実際のCFへの貢献は大きい

  • 少額資産・一括償却・特別償却制度を活用することで税務上の有利な処理が可能(適用前に要確認)

  • 設備投資計画と償却スケジュールを資金繰り表に組み込むことで、中長期の資金計画の精度が上がる


耐用年数と償却スケジュールは「いつ税金が増えるか」「いつ設備の再投資が必要か」を予測するための地図です。これを正しく管理する会社だけが、強い資金体質を作ることができます。


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