借入金の返済能力はどう見る?|銀行が見る営業利益と返済比率を税理士が解説
- 近藤 祐輔

- 2025年12月23日
- 読了時間: 4分
更新日:3月30日
結論:営業利益が出ていても、借入金を返済できるとは限りません。
なぜなら、借入金の元本返済は損益計算書には出てこず、実際の返済原資は営業キャッシュフローで決まるからです。
この記事では、銀行が借入金の返済能力をどのように見ているのか、営業利益と返済比率の関係を税理士の視点からわかりやすく解説します。
はじめに
「利益は出ているのに借入金の返済が苦しい・・・」
このような悩みを抱える中小企業経営者は少なくありません。 実は、営業利益が出ていても借入金の元本返済はできないことがあります。
借入金返済と営業利益の関係性、キャッシュフローとの違い、金融機関が重視するポイントを税理士の視点から整理します。
営業利益とは?
営業利益 = 売上総利益 − 販売費及び一般管理費
つまり、本業によってどれだけ利益が出ているかを示す指標です。 しかし、ここには借入金の元本返済は含まれていません。
借入金返済は「費用」ではない
借入金の返済(元本部分)は、損益計算書には登場しません。 したがって、利益が出ていても、返済のための資金があるとは限らないのです。
■ 支払利息:経費として損益計算書に計上される
■ 元本返済:貸借対照表上の負債減少 → キャッシュアウト
営業利益 vs 借入返済額
営業利益がいくらあっても、
減価償却費が少ない
売掛金が増えて資金が回収できていない
在庫が増加して現金が固定化
このような状況では、借入返済に充てる資金が不足します。
→ 大事なのは「営業キャッシュフロー」とのバランスです。
【返済能力の見方】
項目 内容
────────────────────────
営業利益 事業から生み出した利益
+ 減価償却費 実際には支出を伴わない費用
- 法人税等 納税によるキャッシュアウト
± 運転資金の増減 売掛金・在庫などの増減
────────────────────────
= 返済原資 借入金返済に使える資金
【具体例:同じ営業利益でも返済余力は変わる】
■ A社(返済余力あり)
営業利益 1,000万円
+ 減価償却費 500万円
────────────────
返済原資 1,500万円
年間返済額 800万円
→ 返済後も資金が残る(余力あり)
■ B社(返済が厳しい)
営業利益 1,000万円
+ 減価償却費 100万円
- 売掛金増加 400万円
────────────────
返済原資 700万円
年間返済額 800万円
→ 黒字でも返済が苦しい
安全な返済水準の目安
金融機関や財務分析で使われる「借入金返済余裕倍率(DSCR)」が参考になります。
■ DSCR(Debt Service Coverage Ratio)
(営業利益 + 減価償却費) ÷ 元利合計返済額
→ 1.5倍以上あれば「安全圏」、1.0倍を下回ると「要注意」
ケース 返済原資 年間返済額 DSCR 評価
────────────────────────────
① 安全 1,200万円 800万円 1.5倍 余力あり
② 注意 900万円 800万円 1.1倍 余裕少ない
③ 危険 700万円 800万円 0.9倍 返済不足
借入金返済に耐える営業利益体質をつくるには
① 利益の質を高める
粗利率を改善し、販管費を抑える
継続収益モデルの構築(ストック型)
② 減価償却の活用と投資コントロール
無理な設備投資は営業CFを圧迫
減価償却費の範囲で設備投資を行う
③ 運転資金の最適化
売掛金・在庫・買掛金の回転率を改善
回収・支払いサイトを見直す
④ 借入金の再構成
短期借入→長期借入への借換
リスケ・元本据置期間の設定も選択肢に
まとめ:利益管理と資金管理は別モノ
「利益が出ているから借入も返せる」と思い込むのは危険です。
返済原資は“営業キャッシュフロー”であって“営業利益”ではありません。
金融機関は「黒字かどうか」より、「返済後に現金が残るか」を見ています。
営業利益が安定しているか、減価償却費を含めた返済原資が十分か、そして返済後も資金繰りに余裕があるかを見ています。
つまり、返済能力とは「利益の大きさ」ではなく「キャッシュを残せる力」です。
返済能力を高めるには、利益率の改善だけでなく、売掛金・在庫・納税資金を含めた資金繰り全体を見直すことが重要です。
借入金の返済能力は、利益だけでなく資金繰り全体で判断する必要があります。
「黒字なのに返済が苦しい」
「銀行からどう見られているのか知りたい」
このようなお悩みがある場合は、お気軽にご相談ください。
初回相談は無料です。
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