債務超過とみなされる決算書の特徴とは~銀行が“この会社、危ないかも”と判断する決算の見え方~
- yusukekondo9
- 10月14日
- 読了時間: 4分
はじめに
中小企業経営において、決算書の見え方ひとつで金融機関の対応が大きく変わることをご存知でしょうか?
とくに「債務超過」と判断されると、追加融資のハードルが一気に上がるだけでなく、既存借入の条件変更すら厳しくなることもあります。
今回は、税理士としての視点から、金融機関や保証協会に「実質的な債務超過とみなされる決算書の特徴」について、詳しく解説します。
I. 「債務超過」とはそもそも何か?
まず基本から確認しましょう。
▶ 会計上の定義:
債務超過とは、負債の総額が資産の総額を上回っている状態です。
純資産=総資産−総負債<0
すなわち、貸借対照表の「純資産」がマイナスであれば、形式的には債務超過といえます。
II. 形式的に黒字でも「実質債務超過」とみなされる決算書の特徴
形式的には黒字、純資産もプラスなのに、銀行や保証協会が“この会社、実質的に債務超過では?”と警戒するケースが少なくありません。
以下のような特徴がある場合、「粉飾の可能性」や「実質債務超過」と判断されやすくなります。
① 資産の中に“実在しない資産”がある
長年動きのない仮払金・仮受金
回収見込みのない売掛金・貸付金
売れる見込みのない棚卸資産・滞留在庫
資産価値のない投資有価証券・不動産
👉 こうしたものが資産として計上されていると、「資産が過大に見せられている=実質債務超過」と評価されます
② 代表者への貸付金が多額にある
多くの場合、返済される見込みがなく、実質的な利益流出と見なされる
税務上は資産であっても、銀行はこれを「資金繰りの弱さ」の象徴と捉えがち
👉 代表者貸付金が総資産の10%を超えるような場合、“粉飾隠し”を疑われることもあります
③ 純資産がわずかで、赤字続き
たとえば純資産が100万円しかないのに、営業赤字が3期続いている
会計上は債務超過でなくても、「来期にはマイナスになる」と見なされ、事実上の債務超過扱い
👉 銀行は、「資本の蓄積がない=一発の赤字で即債務超過」と判断します
④ 減価償却費を計上していない(または極端に少ない)
利益を見かけ上増やすために減価償却費を意図的に少なくしている決算書
現金が減っていても、帳簿上は利益が出ているように見せかけられるため要注意
👉 銀行はキャッシュフローを重視するため、このような決算には強い不信感を抱きます
III. 銀行・保証協会が見る「債務超過判定」とは?
金融機関や保証協会は、単純な会計上の数値だけでなく、次のような視点でも債務超過を評価しています。
見られるポイント | 内容 |
資産の健全性 | 回収可能性、在庫の流動性、簿価と時価の差異 |
負債の圧迫度 | 短期借入・買掛金の水準、未払税金の有無など |
キャッシュ水準 | 現預金残高、運転資金の持ちこたえ度合い |
代表者の財務状況 | 個人資産の厚み、資金注入余地 |
📌 つまり、「会計上の債務超過」よりも、「実質的な債務超過」とみなされるほうがはるかに厄介なのです。
IV. 税理士がアドバイスする「債務超過とみなされないための工夫」
▶ 不良資産を洗い出し、整理する
長期未回収の売掛金・貸付金は回収努力を見せる
滞留在庫は評価損処理・廃棄などで適正化
仮払金・仮受金は「調整中」ではなく、明確な処理を!
▶ 代表者貸付金を縮小する(または資本化する)
個人資産から会社への「返済」
もしくはDES(Debt Equity Swap:債務の資本化)を検討する
▶ 減価償却は適正に!帳簿上の利益に固執しない
減価償却を適切に計上することで、キャッシュフロー重視の決算になる
金融機関は税金よりも“資金の実態”を重視します
▶ 債務超過でも「今後の改善計画」を提示できれば逆転可能
債務超過であっても、改善計画(3カ年のPL/CF予測)を添えることで、融資が通るケースもあります
重要なのは「どう立て直すか」「社長にその覚悟と実行力があるか」です
まとめ|“実質債務超過”と見なされない決算書作りを
「うちは債務超過じゃないから大丈夫」ではありません。銀行が見ているのは、“資産の質”と“将来性”です。
数字の見せ方、資産の整理、経営者の姿勢――。
これらをトータルに整えることが、金融機関から信頼される企業への第一歩です。
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