利益率の分析方法|推移と異常値で会社の体質を見抜く方法
- 近藤 祐輔

- 2025年11月11日
- 読了時間: 8分
はじめに
「今期は営業利益率10%出たから順調です」「前期より利益は増えているので問題ないと思います」
こういった声を聞くたびに、税理士として確認したいことがあります。「その利益率、去年と比べてどう変わっていますか?」「異常値に気づいていますか?」
利益率は絶対値より推移が大事です。数字は見た目より「変化」に本質が現れます。
今回は社長と税理士の対話形式で、利益率の推移分析と異常値の見つけ方を解説します。
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1. まず3つの利益率を整理する
社長: 利益率にはいくつか種類がありますよね。どれを見ればいいですか?
税理士: まず以下の3つを押さえてください。
利益率 | 計算式 | 意味 |
売上総利益率(粗利率) | (売上 − 売上原価)÷ 売上高 | 商品・サービスの仕入れに対する儲け |
営業利益率 | 営業利益 ÷ 売上高 | 本業の儲けの効率 |
経常利益率 | 経常利益 ÷ 売上高 | 本業+金融収支を含めた総合的な利益力 |
社長: 利益「額」ではなく「率」で見る理由は何ですか?
税理士: 売上高の大小に関わらず会社の体質を比較できるからです。売上が2倍になっても利益率が半分になっていれば、成長していても体質は弱くなっています。単年の利益額だけを見ていると、こういった変化を見落とします。
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2. なぜ「推移」で見る必要があるのか
社長: 今期の利益率が良ければ、それで十分じゃないですか?
税理士: 単年の数値は一時的な要因(特別利益・在庫評価・期末調整など)に左右されることがあります。複数年の流れを見ることで、会社の構造的な強み・弱みが浮き彫りになります。
推移を見ることでわかることは主に3つです。
改善傾向か悪化傾向か:対策の優先順位が明確になる
異常値が発生した年に何があったか:要因分析ができる
戦略変更が利益率にどう影響したか:効果検証ができる
社長: 何期分を並べて見ればいいですか?
税理士: 最低3期、できれば5期分を並べることをお勧めします。3期あれば「一過性か構造的か」の判断ができます。
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3. 異常値の見つけ方|5つのチェック視点
① 営業利益率を複数期で並べる
期 売上高 営業利益 営業利益率
2022年 1億円 1,000万円 10.0%
2023年 1.2億円 600万円 5.0% ← 急落
2024年 1.1億円 900万円 8.2% ← 回復傾向
社長: 2023年に売上が増えているのに利益率が下がっていますね。
税理士: これが典型的な異常値です。営業利益率が前年比で±2%以上動いている場合は要注意です。売上が増えても利益率が下がっているなら「コスト構造が崩れている」可能性があります。何があったかを必ず確認する必要があります。
② 同業他社と比較する
自社の利益率を業界平均と比べることで、構造的な問題が見えてきます。
社長: 業界平均より極端に高い場合も問題ですか?
税理士: 場合によっては注意が必要です。たとえば製造業で業界平均6%のところ自社が15%という場合、在庫評価や人件費の計上タイミングに特殊な処理がないかを確認することをお勧めします。
③ 人件費率・広告費率などの「構成比率」の急増
科目 売上比(前年) 売上比(当年) 差異
人件費 20% 27% +7% ← 要確認
広告宣伝費 5% 12% +7% ← 急増
社長: 特定の費用項目が急増していた場合は何を確認すればいいですか?
税理士: その費用対効果を確認します。人件費が7%増えた場合「採用・昇給・残業の増加のどれか」「売上増加に見合っているか」を分析します。広告費が急増している場合は「広告投資に対して売上・利益がどう変化したか」を検証します。
④ 減価償却・役員報酬・交際費の「操作性」に注目
社長: 営業利益率が毎期ほぼ同じ数字です。これは安定していて良いことですよね?
税理士: 必ずしもそうとは言えません。一部の利益率は、経営判断である程度調整できます。役員報酬で利益を圧縮することで「毎期同じ利益率に見える」状態が作れてしまいます。本当の意味での経営体質の改善が進んでいるのか、それとも調整しているだけなのかを区別することが重要です。
⑤ 税引前利益率が毎年大きくブレる場合
特別利益や雑収入に頼って利益率を維持している場合、銀行には「本業の稼ぐ力が不安定」と見なされます。金融機関が評価するのは「継続的に稼ぐ力」であり、一時的な収益を除いた「実力ベースの利益率」の安定性です。
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4. 異常値をどう読み解き、改善につなげるか
社長: 異常値を見つけたら、どう対応すればいいですか?
税理士: 異常値=悪ではありません。重要なのは「なぜそうなったか」を説明できることです。以下の4ステップで進めます。
ステップ | 内容 |
① 異常値を見つける | 利益率の推移と費用構成比で異常を検知する |
② 要因を特定する | 売上変動・費用増・一過性・構造的の4つで分類する |
③ 手を打つ | 費用削減・値上げ・KPI設計・体質改善 |
④ モニタリング | 毎月の利益率チェック体制を構築する |
社長: 月次でチェックするといっても、何を見ればいいですか?
税理士: 月次試算表から「粗利率・営業利益率・主要費用の売上構成比」の3つを前年同月比で確認することから始めることをお勧めします。前年同月比で2%以上動いている指標があれば、その月に何があったかを確認します。
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5. 銀行は利益率の「推移」を見ている
社長: 銀行も利益率の推移を確認しているんですか?
税理士: 必ず確認しています。金融機関が評価するのは一時的な黒字ではなく「継続的に稼ぐ力」です。以下のポイントで評価されます。
3期連続で利益率が安定して改善している:融資条件が有利になりやすい
利益率低下の理由を明確に説明できる:担当者が社内で説明できる材料になる
役員報酬などによる調整に頼らず、本業で利益が出ている:実態の収益力として評価される
社長: 利益率が一時的に下がっても、理由を説明できれば問題ないですか?
税理士: 説明できることが重要です。「設備投資の減価償却費が増えたため一時的に利益率が低下しているが、翌期以降は回復する見込み」という説明ができれば、銀行担当者は社内で評価を維持しやすくなります。数字の変化を自分で把握して説明できる経営者と、税理士任せの経営者では、銀行との関係の深さが変わります。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 利益率の推移は何期分を比較すればいいですか?
最低3期、できれば5期分を並べることをお勧めします。3期あれば「一過性か構造的か」の判断ができ、5期あれば業績サイクルの傾向が見えてきます。銀行への提出資料でも3期分の決算書が標準的に求められます。
Q2. 前年比で何%の変化から「異常値」として注目すべきですか?
営業利益率で±2%以上、粗利率で±1%以上を一つの目安にすることをお勧めします。ただし絶対的な基準ではなく、変化の方向性(改善傾向か悪化傾向か)と、その原因が説明できるかどうかが重要です。
Q3. 利益率の改善を銀行にどう伝えればいいですか?
月次試算表を定期的に提出しながら「前期は〇〇が原因で利益率が低下したが、今期は改善している」という変化の説明を添えることが効果的です。数字の変化を自分の言葉で説明できることが、銀行担当者の信頼を得る最大のポイントです。
Q4. 同業他社の利益率はどこで確認できますか?
中小企業庁の「中小企業実態基本調査」・TKCや日本政策金融公庫の業種別財務データなどが参考になります。ただし業種の細分類・規模・地域によって異なるため、あくまで参考値として活用し、自社の推移分析と合わせて判断することをお勧めします。
Q5. 利益率の推移分析は自社でできますか?
月次試算表があれば基本的な計算は自社でできます。粗利率・営業利益率を毎期エクセルに記録して折れ線グラフにするだけで、視覚的に推移が把握できます。費用構成比の変化分析や同業他社との比較は、税理士に依頼することで精度が上がります。
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まとめ
利益率は絶対値より「複数期の推移」で見ることで、会社の体質の変化が見えてくる
異常値チェックの5視点:①営業利益率の複数期比較②同業他社比較③費用構成比の急増④操作性への注目⑤税引前利益率のブレ
異常値=悪ではない。「なぜそうなったか」を説明できることが重要
月次試算表から「粗利率・営業利益率・主要費用の売上構成比」を前年同月比で確認する習慣をつける
銀行は「継続的に稼ぐ力」を評価する。利益率の変化を自分の言葉で説明できる経営者が評価される
「利益が出たか」ではなく「利益がどう変化しているか」を見ることが、経営体質を強化する第一歩です。
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