黒字なのに資金がない理由|決算書から見る資金繰り悪化の原因
- 近藤 祐輔

- 2025年12月16日
- 読了時間: 6分
はじめに
「売上は順調に伸びているのに、なぜか資金が足りない」——。
これは多くの中小企業経営者が経験する"見えない資金ショート"です。利益が出ていても、手元の資金が足りなければ経営は不安定になります。
この記事では、「決算書のどこを見れば資金不足の原因が読み取れるか?」を税理士の立場から対話形式で解説します。
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1. 売上があっても資金が不足する4つの理由
社長: 売上も利益も出ているのに、月末になるといつも資金が苦しいんです。なぜですか?
税理士: 売上高の増加と手元資金の増加はイコールではありません。資金を圧迫する代表的な要因が4つあります。
① 売掛金の回収遅延
売上は計上していても、入金は2〜3か月先というケースが多くあります。売上が増えれば増えるほど、回収前の売掛金も膨らみ、実質的に「資金の先出し」状態になります。
② 在庫の過剰保有
売上に先行して仕入を行っているため、現金が棚卸資産に変わって「寝ている」状態です。売上が増えると在庫も積み上がりやすく、資金効率が悪化します。
③ 借入金返済の負担
元本返済分は費用として計上されないため、損益計算書(PL)上の利益には現れません。しかし実際のキャッシュアウトは確実に発生しており、資金繰り上では大きなマイナス要因になります。
④ 設備投資・納税・賞与などの一時支出
設備投資・税金納付・賞与支給は一時的に資金を大きく圧迫します。これらを事前に把握して資金繰り表に組み込んでいないと、「突然資金が足りない」という状態に陥ります。
社長: 利益は出ているのにキャッシュがない、という状態は決算書のどこを見ればわかりますか?
税理士: BSとCFの2か所を確認することで原因が読み取れます。
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2. 貸借対照表(BS)で資金の動きを読む
社長: BSのどこを見ればいいですか?
税理士: 以下の項目が増加していたら要注意です。
項目 | 増加していたら | 理由 |
売掛金 | 要注意 | 資金回収の遅れ→資金繰りを圧迫 |
棚卸資産 | 要注意 | 現金が在庫に変わり回転しない |
未収入金 | 要注意 | 一時的な売上外の入金遅れ |
借入金(短期) | 要注意 | 資金ショートを補っている可能性 |
社長: 資産が増えているのに現預金が増えていないということですか?
税理士: そうです。資産が増えているのに現預金が増えていない場合、運転資金が資産に固定化されているサインです。売上増加に伴って売掛金・在庫が膨らんでいないかをまず確認してください。
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3. キャッシュフロー計算書(CF)で資金の実態を確認する
社長: CFはどう見ればいいですか?
税理士: キャッシュフロー計算書の「営業活動によるキャッシュフロー」がプラスかマイナスかを必ず確認してください。
営業CFの計算は税引前当期純利益を起点にして行います。
営業CF = 税引前当期純利益
+ 減価償却費
± 売掛金・棚卸資産・買掛金などの増減
- 法人税等の支払い
営業CFがマイナスなら、日々の事業活動で資金が減っていることを意味します。投資CFがマイナスであれば設備投資等による資金流出が原因です。
社長: 営業利益は黒字なのに営業CFがマイナスになることがあるんですか?
税理士: よくあります。売掛金が急増している・在庫が積み上がっているという状態だと、PLは黒字でもCFはマイナスになります。これが放置されると黒字倒産のリスクに直結します。
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4. 実務的な改善アプローチ
社長: 原因がわかったとして、どこから改善すればいいですか?
税理士: 4つのアプローチがあります。優先度は自社の原因によって変わります。
① 売掛金回収サイトの見直し
締め日・支払日を短縮できないか取引先と交渉します。また請求書の発行・送付を早めることだけでも回収サイトを短縮できます。
② 棚卸資産の圧縮
仕入の適正在庫基準を設け、回転率の悪い在庫の見直し・処分を行います。「売れるから多めに仕入れる」という発想が資金を圧迫している場合があります。
③ 借入の再構成
短期借入を長期借入へ借換えることで、月々の返済額を抑えて資金繰りを改善できます。金利・返済スケジュールの見直しも合わせて検討します。
④ 設備投資・税金・賞与の事前管理
支出が集中する月を資金繰り表にあらかじめ組み込んでおきます。「いつ・いくら出ていくか」を3か月先まで把握しておくことで、資金ショートを未然に防げます。
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まとめ:利益ではなくキャッシュで経営を見る
社長: 結局、何を一番意識すればいいですか?
税理士: 「利益が出ているかどうか」より「キャッシュが増えているかどうか」を意識することです。PLだけを見て安心している経営者ほど、「突然資金が足りない」という状態に陥りやすいです。
決算書で見るべき箇所を月次で確認する習慣をつけることが、「売上が増えているのに資金が苦しい」という見えない病からの脱却につながります。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 利益が出ているのに資金が足りない状態は、放置するとどうなりますか?
売掛金や在庫に資金が固定化された状態が続くと、仕入代金や人件費の支払いに充てる現金が不足し、最悪の場合は黒字倒産に至ります。特に売上が急成長している時期は注意が必要です。早期に資金繰り表を作成し、月次で確認する体制を整えてください。
Q2. 営業CFがマイナスでも、すぐに危険ではないですか?
1期だけのマイナスであれば設備投資や季節変動が原因のケースもあります。ただし2期以上連続してマイナスが続く場合は、売掛金の回収・在庫管理・コスト構造に問題がある可能性が高く、早急に原因を確認する必要があります。
Q3. 売掛金の回収サイトを短縮するには、どう交渉すればいいですか?
一度に大幅な短縮を求めると取引先との関係が悪化するリスクがあります。「請求書の送付を早める」「振込サイトを翌月末から翌々月10日に変える」など、小幅な変更から始めることが現実的です。新規取引先には最初から短いサイトを設定することも有効です。
Q4. 借入の短期から長期への借換えは、すぐにできますか?
金融機関の審査が必要なため、すぐには難しい場合もあります。資金繰りが悪化してからでは交渉力が低下するため、余裕があるうちに顧問税理士を通じてメインバンクに相談しておくことをお勧めします。
Q5. 資金繰り表はどのように作ればいいですか?
月次の入出金を予測して一覧にまとめるものです。売掛金の回収予定・仕入支払・人件費・借入返済・税金・賞与の支払月を最低3か月先まで記載します。顧問税理士に依頼すれば、月次試算表と連動した資金繰り表を作成することができます。
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