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損益分岐点分析でわかる売上目標の立て方~「感覚の目標」から「根拠ある数字」へ~

  • yusukekondo9
  • 11月13日
  • 読了時間: 4分

はじめに|“なんとなくの売上目標”になっていませんか?


「今年は前年比+10%を目指そう」

「とにかく1億円突破を目標にしよう」


このように、売上目標が「希望的観測」や「語呂の良さ」だけで設定されていませんか?

本来、売上目標は「利益」と「固定費」「変動費」の構造を理解したうえで、損益分岐点分析から逆算する必要があります。

この記事では、経営判断に欠かせない「損益分岐点」の考え方と、それに基づいた売上目標の立て方を解説します。



1. 損益分岐点とは何か?


損益分岐点とは、利益がゼロになる売上高のこと。すなわち、「売上=経費」になるラインです。

この金額を下回ると赤字、上回ると黒字になります。


■ 計算式:

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)

  • 固定費:売上に関係なく毎月かかる費用(人件費・家賃・通信費など)

  • 変動費:売上に比例して発生する費用(仕入・外注・販売手数料など)


■ 例(小規模のネット通販企業):

  • 固定費:150万円/月

  • 売上高:400万円/月

  • 変動費:160万円(変動費率40%)


▶ 損益分岐点:150万円 ÷(1 − 0.4)= 250万円


つまり、月商250万円を下回ると赤字になる構造です。



2. なぜ損益分岐点を把握すべきなのか?


「売上はあるのに利益が出ない」「一人増やしただけで一気に赤字」「価格を少し下げたら利益が吹き飛んだ」

このような“利益の見えない経営”を防ぐために、損益分岐点の把握は必須です。


✅ 把握すると何がわかる?

見えるもの

意味

利益が出る最低限の売上

「どこから黒字になるか」が明確に

固定費に対する売上貢献度

無駄なコストをあぶり出せる

値下げや人員増のリスク

シミュレーションで収益性を検証可能

明確な売上目標

根拠ある数字でチームが動ける



3. 売上目標の立て方|3つのステップ


ステップ①:自社のコスト構造を整理する

費用区分

主な項目

変動費

仕入・外注費・販売手数料・梱包配送費など

固定費

人件費・家賃・広告費(固定型)・保険料など

📌 勘定科目を「変動費」か「固定費」かで分けて再集計することがポイントです(会計ソフトの元帳や試算表をCSV出力 → Excelなどで分類)


ステップ②:変動費率と損益分岐点を求める

計算項目

変動費率

変動費 ÷ 売上高

損益分岐点

固定費 ÷(1 − 変動費率)

ステップ③:目標利益から“必要売上高”を逆算する


たとえば、月間50万円の利益を出したい場合は:

▶ 必要売上高 =(固定費 + 目標利益)÷(1 − 変動費率)


例:(150万円 + 50万円)÷(1 − 0.4)= 333万円

👉 月商333万円を売らなければ目標利益に届かない、ということが明確になります。



4. 実務での応用|3つのシミュレーション


① 値引きをした場合の影響

  • 価格10%ダウン → 利益が出るまでに必要な販売数量が大幅増

    → 限界利益率が下がるため、「損益分岐点が遠のく」


 📌 安易な値引きが利益を破壊する例


② 従業員を1人増やした場合

  • 固定費が増える → 必要売上高も増加

  • 目標利益に届くには「何件の受注増が必要か?」が逆算できる


 📌 人件費の“採算ライン”をシミュレーションできる


③ 広告費をかけた場合の採算性

  • 広告費が10万円アップ → 売上が15万円アップ

    → 限界利益率が60%なら「採算クリア」、50%なら「赤字」


 📌 広告費の効果を“利益ベース”で検証できる



5. おすすめの管理指標:CVP分析(月次でのモニタリグ)


CVPとは、Cost-Volume-Profit(損益分岐点)分析の略

項目

内容

限界利益(売上−変動費)

固定費をまかなう“貢献利益”

限界利益率

限界利益 ÷ 売上高

安全余裕率

(売上 − 損益分岐点)÷ 売上


📌 安全余裕率が低い=赤字転落リスクが高い(目安:20%未満なら経営体力に課題あり)



まとめ|「売上目標は、利益から逆算する」時代へ

考え方

従来型

これから

売上目標

前年比・感覚値

損益分岐点から逆算

コスト感覚

勘と経験

固定費・変動費に分けて管理

経営判断

感覚的

数値的根拠に基づくシミュレーション

利益体質

不安定

構造的に黒字を維持できる仕組み

「とりあえず売上を伸ばす」から「売上と利益のバランスを見ながら成長する」経営へ



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