税務上の利益と資金繰りが一致しない理由~「黒字倒産」を防ぐために経営者が知っておくべき会計と現金のズレ~
- yusukekondo9
- 9月18日
- 読了時間: 3分
「決算は黒字なのに、通帳にはお金がない」「法人税を払うために資金をかき集めている」
このような声は、決して珍しいものではありません。実際、黒字倒産(利益は出ているが資金が尽きて倒産)という言葉もあるほど、“利益”と“お金”の関係は複雑です。
本記事では、税務上の利益と実際の資金繰りがズレる原因を明らかにし、経営判断を誤らないための考え方をお伝えします。
I.「利益」と「現金」はイコールではない
会計(税務)上の「利益」と、現金・預金の残高やキャッシュフローは一致しません。
なぜなら、会計は発生主義(取引があったタイミングで計上)である一方、資金繰りは現金主義(お金の出入り)で動くためです。
II. ズレの主な要因 5選
① 売掛金や未収入金の増加
利益には計上されたが、現金は未回収の状態
例:3月に1,000万円の売上を計上 → 入金は5月末 → 決算期末には“利益”が出ていても“現金”は未入金
📌 売掛金管理が甘いと「黒字倒産」リスクが高まります
② 在庫(棚卸資産)の増加
商品や材料を購入し、お金は出ているが費用としては未計上の状態
税務上、売れていない在庫は費用にならない(売上原価に含まれない)
📌 在庫が増えるほど利益は出て見えますが、キャッシュは減っています
③ 設備投資・資産購入
減価償却費として少しずつ費用化される一方で、現金は一括で支出される
例:1,000万円の機械を買っても、当期の経費になるのは償却費100万円だけ
📌 投資後の現金残高悪化に注意
④ 借入金の元本返済
元本返済は会計上は費用にならないが、実際には現金が出ていく
📌 「黒字経営をしていても、借入返済で資金が枯渇する」ケースに要注意
⑤ 法人税等の支払い
税務上の利益が出る → 法人税が発生 → 翌期に現金支出が発生
📌 「今期黒字 → 来期に税金を納付 → 資金繰りが苦しくなる」特に中間納税を考慮していない企業に多いリスクです
III. ケーススタディ:ある成長企業の決算例
項目 | 金額(万円) |
税引前当期純利益 | +1,200 |
売掛金増加 | △600 |
在庫増加 | △300 |
設備投資(現金支出) | △800 |
借入返済(元本) | △500 |
法人税納付 | △250 |
実質キャッシュ増減 | △1,250 |
📌 黒字決算でも、実際には現金が減っているのがわかります
IV. 経営判断での注意点
誤解 | 正しい理解 |
「利益が出たから余裕がある」 | ❌ 現金の動きとは別。利益≠キャッシュ |
「決算書だけ見て資金計画を立てる」 | ❌ 資金繰り表やキャッシュフロー計算書が必要 |
「節税すればお金が残る」 | ❌ 節税で現金流出が加速するケースも(投資型節税など) |
まとめ:経営者がとるべき3つのアクション
① 資金繰り表を定期的に作成・確認する
✅ 税務会計とは別に、実際のキャッシュの出入りを可視化する資料が必要です。
② 売掛金・在庫・設備投資に注目する
✅ 「お金が出ていっているが利益にならない」典型例。資金繰りを悪化させる大きな要因になります。
➂ 金融機関への説明には「利益とキャッシュの違い」を伝える
✅ 特に融資審査では、キャッシュフローが重視されます。「黒字だけどお金がない理由」を財務諸表と共に説明できる体制が大切です。
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