経常利益の質を見抜く|一時的な黒字と持続的な黒字の違い
- 近藤 祐輔

- 2月13日
- 読了時間: 7分
更新日:5月11日
はじめに
「決算書を見たら経常利益が出ていたので、今期は大丈夫かと思っていたんですが・・・」
こう話す経営者に対して、銀行の担当者は「その利益は来期も続きますか?」と問いかけます。
金融機関や財務に強い経営者が見ているのは、利益の額だけでなく「その経常利益は継続的に生み出せるものかどうか」という再現性です。
今回は社長と税理士の対話形式で、経常利益の「質」をどう見抜くかを解説します。
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1. 経常利益とは何か
社長: 経常利益って、営業利益と何が違うんですか?
税理士: 営業利益が「本業だけの儲け」なのに対し、経常利益はそこに財務活動の損益を加えたものです。
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用
営業外収益:受取利息・受取配当金・補助金収入など
営業外費用:支払利息・社債利息など
社長: 「通常の経営活動による利益」とよく言いますが、どういう意味ですか?
税理士: 本業の利益に加えて、資金調達や資産運用など「会社を経営する上で通常発生する収益・費用」まで含めた利益です。ただし「通常」の中身を分解しないと、本当の実力は見えてきません。
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2. 経常利益の「質」を下げる3つの要因
社長: 経常利益が出ていれば、銀行評価は上がりますか?
税理士: 数字だけでは判断できません。経常利益の「質」を下げる要因が3つあります。
① 一時的な営業外収益への依存
社長: 今期は保険の解約返戻金が入って、経常利益が良く見えているんですが。
税理士: それが典型的な「質の低い経常利益」です。保険解約返戻金・有価証券売却益などは来期以降も継続する利益ではありません。銀行はこれらを「一時的利益」として除外して評価します。
【一時的収益の例】
・保険解約返戻金
・有価証券売却益
・固定資産売却益
→ 経常利益が増えていても、実力値が上がったとは言えない
📌 銀行が見るのは「来期も同じ利益が出るか」という再現性です。
② 借入依存による利益の歪み
借入金が増えると支払利息が増え、経常利益を圧迫します。金利上昇局面ではさらに財務コストが重くなります。財務構造が弱い会社ほど、経常利益が金利環境に左右されやすくなります。
社長: 借入を減らせばいいということですか?
税理士: 単純にそうとは言えませんが、借入と利益のバランスを見ることが重要です。「借入金は多いが経常利益が出ている」という会社より「借入金は適切で、本業の利益が安定している」会社の方が、銀行評価は高くなります。
③ 本業の粗利率低下を営業外収益でカバーしている
社長: 営業利益が落ちているのに経常利益は維持できています。これは問題ですか?
税理士: 要注意です。本業の稼ぐ力(営業利益)が低下しているのに、営業外収益でカバーして経常利益を維持しているケースは「見かけ上の黒字」です。本業の粗利率低下は構造的な問題であり、営業外収益がなくなった瞬間に赤字に転落するリスクがあります。
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3. 良質な経常利益とは何か
社長: では「質の高い経常利益」とはどういう状態ですか?
税理士: 以下の条件を満たす利益です。
営業利益が安定的に増加している
営業外収益に依存していない
借入金に過度に依存していない
営業キャッシュフローが利益と連動している
一言で言うと「本業で安定的に稼ぎ、その利益がキャッシュとして残っている状態」が理想です。
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4. 決算書での具体的なチェック方法
社長: 実際にどうやって確認すればいいですか?
税理士: 3つの手順でチェックします。
① 営業利益率の3期比較
単年だけでなく3期分の営業利益率を並べて比較します。安定しているか、売上増加に比例して伸びているかを確認します。営業利益率が下がり続けている会社は、本業の収益構造に問題があるサインです。
② 営業外収益の内訳確認
損益計算書の「営業外収益」の内訳を確認し、一時的な収益(保険解約・売却益など)が含まれていないかをチェックします。一時的収益を除いた「実力ベースの経常利益」を算出することで、本当の収益力が見えます。
③ 営業CFとの比較
経常利益と営業キャッシュフローを比較します。大きく乖離している場合は、売掛金の増加・在庫の膨張・実態のない利益計上が起きている可能性があります。
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5. 銀行が実際に使う評価指標
社長: 銀行は経常利益以外に何を見ていますか?
税理士: 銀行が実際に使う指標として「EBITDA」があります。
EBITDA = 営業利益 + 減価償却費
(または 経常利益 + 支払利息 + 減価償却費)
社長: EBITDAって何ですか?
税理士: 「利払い・税引き・減価償却前の利益」のことです。減価償却費は現金が出ない費用のため、EBITDAは「実際に借入返済に使える現金の概算」として使われます。銀行は「借入金残高÷EBITDA」で、何年で返済できるかを判断します。
例:借入金2億円・EBITDA4,000万円
→ 2億円 ÷ 4,000万円 = 5年で返済可能 → 銀行評価◎
例:借入金2億円・EBITDA1,000万円
→ 2億円 ÷ 1,000万円 = 20年 → 銀行評価△
表面的な黒字よりも、再現性のある利益構造があるかどうかが重要です。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 補助金収入は経常利益に含まれますか?
補助金の性質・会計処理の方法によって異なります。一般的には営業外収益または特別利益として計上されますが、本業の事業活動に直接関連する補助金を営業収益に計上するケースもあります。いずれにせよ補助金は一時的・非継続的な収益であるため、銀行は実力ベースの利益算出時に除外して評価することが多いです。
Q2. 経常利益と純利益はどう違いますか?
経常利益に「特別利益・特別損失」を加減したものが税引前当期純利益、そこから法人税等を差し引いたものが当期純利益です。特別損益には固定資産の売却損益・災害損失などの非経常的な項目が含まれます。銀行は経常利益を中心に評価し、特別損益は「異常値」として別途分析します。
Q3. 一時的収益を除いた「実力ベースの経常利益」はどう計算しますか?
経常利益から保険解約返戻金・有価証券売却益・補助金収入などの一時的項目を差し引いて計算します。逆に一時的な損失(役員退職金など)がある年は加算して調整します。この「修正経常利益」が本当の収益力の指標になります。
Q4. EBITDAはどのくらいあれば良いですか?
「借入金残高÷EBITDA(債務EBITDA倍率)」が目安になります。一般的に5〜7倍以内が健全とされ、それを超えると返済負担が重いと評価されます。ただし業種・成長フェーズによって許容値は異なるため、税理士と自社の状況に応じた判断が必要です。
Q5. 営業利益が赤字でも経常利益が黒字の場合、銀行評価はどうなりますか?
営業外収益(受取利息・補助金など)で補填している場合、銀行は営業利益の赤字を深刻に受け止めます。「本業が稼げていない」という判断になり、融資条件が厳しくなるケースがあります。営業利益の黒字化が最優先課題として銀行から指摘されることが多いです。
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まとめ
経常利益は「営業利益+営業外収益−営業外費用」で計算される
経常利益の「質」を下げる主な要因は①一時的な営業外収益への依存②借入依存③本業の粗利率低下を営業外収益でカバー
良質な経常利益とは「本業で安定的に稼ぎ、その利益がキャッシュとして残っている状態」
チェック方法は①営業利益率の3期比較②営業外収益の内訳確認③営業CFとの比較
銀行はEBITDA(営業利益+減価償却費)で返済能力を評価している
利益の「見せ方」より「中身」を磨くことが、持続的な成長と銀行からの信頼を同時に得る唯一の方法です。
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