自己資本比率の重要性と見せ方~「財務の健康診断」を武器に変える!~
- yusukekondo9
- 9月30日
- 読了時間: 4分
会社の「体力」を一言で表すとしたら、何を見ますか?その問いに対して、多くの金融機関が注目する指標の一つが「自己資本比率」です。
自己資本比率は、税務署ではなく銀行が重視する指標であり、「融資が受けやすいかどうか」「経営の安定性があるかどうか」を判断するベースになります。
この記事では、税理士の立場から、自己資本比率の基本・重要性・見せ方を解説します。
I. 自己資本比率とは?
自己資本比率とは、会社の総資産のうち、返済不要な自己資本がどれくらいの割合を占めているかを示す指標です。
自己資本比率(%)= 総資産 / 純資産×100
【例】
総資産:1億円
純資産:2,000万円→ 自己資本比率:20%
II. なぜ自己資本比率が重要なのか?
① 銀行が重視する「安全性」の指標
銀行や信用保証協会は、会社の倒産リスクや返済能力を見る際に、自己資本比率を重視します。理由は簡単で、自己資本比率が高いほど「潰れにくい」と評価されるからです。
自己資本比率 | 一般的な評価 |
50%以上 | 非常に優良。無借金・超安定型 |
30~50% | 良好。財務健全性が高い |
10~30% | 通常。業種によっては問題なし |
10%未満 | 要注意。実質債務超過リスク |
📌 自己資本比率が10%を切る法人は、融資審査で厳しく見られる傾向にあります。
② 税務上は関係ないが、財務分析では超重要
税務申告書では「利益」「納税額」が注目されますが、銀行や投資家はBS(貸借対照表)から企業の“体質”を見るため、自己資本比率が強い印象を与えます。
つまり、節税だけを優先した会計処理は、自己資本比率を下げる可能性があるため、慎重に判断が必要です。
III. 自己資本比率を改善・良く見せるには?
① 赤字を減らし、内部留保を積み上げる
税務上の黒字 → 利益剰余金の積み上げ → 自己資本増加 → 自己資本比率が上昇基本ですが、利益を出すことこそ最大の改善策です。
② 役員借入金の資本化(DES)を検討
会社に対する役員からの借入金が多い場合、それをDES(デット・エクイティ・スワップ)で資本金へ転換することで、自己資本比率が大きく改善されます。
📌 DESの実行には法的手続きと会計・税務の整理が必要なので、税理士と事前相談を。
③ 過剰な節税で自己資本を圧縮しない
生命保険の全損処理
中古資産の即時償却など、節税のために利益を減らす行為は、自己資本も減らすことにつながります。
📌 節税と財務健全性はトレードオフ。短期節税 vs 長期財務戦略のバランスが重要です。
IV. 自己資本比率を銀行向けに「魅せる」コツ
① 決算書の別表を読みやすく整理
貸借対照表に“調整項目”が多すぎると、銀行は嫌がります
仮払金・未処理項目の整理をしておくと、見た目の印象が良くなります
② 月次推移での改善を見せる
決算書だけでなく、月次試算表をベースに改善推移を提示することで、信頼性が上がります
月次PLで黒字化しているなら、「このペースでいけば来期は自己資本比率20%超を目指せる」といった定量的説明が有効
③ 株主借入金の開示方法にも工夫を
株主や代表者からの借入がある場合、「返済義務が実質ない」旨を補足資料に明記
→ 銀行によっては、実質的に自己資本として評価してくれる場合もあります
V. 税理士ができる支援とは?
税理士として、自己資本比率を改善し、銀行に「見せられる決算書」を作るために、以下のような支援を行います。
決算前のシミュレーションと助言
DESや増資のスキーム設計
経営改善計画書の作成支援(経営力向上計画・早期経営改善計画など)
銀行向け試算表、資金繰り表の整備支援
まとめ|「自己資本比率」は経営者の信用力そのもの
自己資本比率=会社の健康状態
単なる“数字”ではなく、銀行・投資家・取引先からの信用そのものといっても過言ではありません。節税や利益操作に偏ると、財務体質が弱く見えてしまうため、中長期の視点での自己資本戦略が必須です。
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