儲かっている会社の財務3指標|税引後利益率・自己資本比率・営業CF
- 近藤 祐輔

- 1月28日
- 読了時間: 8分
はじめに
「うちは黒字だから大丈夫」——そう思っている経営者ほど、財務の落とし穴に気づいていないケースがあります。
損益計算書(PL)の利益は、会計上のルールに基づいた数字です。会社に現金が残っているかどうかとは、別の話です。本当に儲かっている会社かどうかを判断するには、利益の「質」と「蓄積」を3つの財務指標で確認する必要があります。
この記事では、税理士の視点から「本当に儲かっている会社」を見抜く財務3指標と、その具体的な目安・読み解き方を対話形式で解説します。
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1. なぜ「黒字」だけでは判断できないのか?
社長: 決算書は黒字なのに、なぜか資金繰りが苦しいんです。黒字なら大丈夫じゃないんですか?
税理士: 「黒字=現金が増えている」は誤解です。会計上の利益には、現金の動きを伴わない要素が多く含まれています。
たとえば、減価償却費は現金支出がないのに費用として計上されます。売掛金は売上計上済みでも入金はまだです。引当金は将来の費用を見越して計上しますが、現金は出ていきません。
社長: つまり、PLが黒字でも手元現金が増えているとは限らない、ということですね。
税理士: そうです。さらに言えば、利益が出ていても役員報酬や配当で全額引き出していれば、会社の体力は一切積み上がりません。儲かっている会社とは、利益を出し続け、その利益を会社に蓄積できている会社です。
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2. 財務3指標① 税引後利益率|収益力の本質を見る
社長: では、何を見れば会社の本当の収益力がわかりますか?
税理士: まず確認すべきは税引後利益率です。計算式はシンプルです。
税引後利益率(%)= 税引後利益 ÷ 売上高 × 100
税金・すべての費用を差し引いた後の「純粋な稼ぎ」が売上の何%かを示します。中小企業の目安はこのとおりです。
税引後利益率 | 評価 |
10%以上 | 高収益体質。銀行評価も高く、成長投資の余力がある |
5〜10% | 優良。利益の蓄積が着実に進んでいる |
3〜5% | 平均的。改善の余地はあるが健全な水準 |
3%未満 | 要注意。コスト構造・価格設定の見直しが必要 |
0%以下 | 危険。自己資本が毀損し始める |
社長: 単年度の数字を見ればいいですか?
税理士: 3期分の推移を見ることが重要です。売上が伸びているのに税引後利益率が下がっている場合、コスト構造に問題が生じているサインです。また業種によって適正水準は異なります。飲食・小売は3〜5%でも健全な場合がある一方、サービス業・IT系では10%以上が十分に達成可能な水準です。
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3. 財務3指標② 自己資本比率|会社の「体力」と銀行評価を決める
社長: 銀行がよく「自己資本比率」を見ると言いますが、なぜそんなに重要なんですか?
税理士: 自己資本比率は、会社の総資産のうち「返済不要の資本」がどれだけあるかを示す指標です。
自己資本比率(%)= 純資産 ÷ 総資産 × 100
銀行がこれを重視する理由はシンプルです。自己資本が厚い会社は「借入金を返済できなくなっても、自社の資本で損失を吸収できる」と判断されるからです。
自己資本比率 | 評価 |
50%以上 | 非常に優良。無借金でも成立できる水準 |
30〜50% | 安定経営。銀行評価が高く、追加融資も受けやすい |
20〜30% | 平均的。改善を意識したい水準 |
10〜20% | 要注意。借入依存が高く、金融機関の審査が厳しくなる |
10%未満 | 危険水域。資金調達の選択肢が大幅に狭まる |
社長: 自己資本比率を上げるにはどうすればいいですか?
税理士: 基本は1つです。毎期、税引後利益を出し、それを会社に残す(内部留保する)ことです。ここに節税との関係が生じます。節税で利益を圧縮すると、税引後利益が減り、内部留保が積み上がらず、自己資本比率が改善しません。「節税で税金を減らしたのに銀行評価が上がらない」という会社の多くは、このサイクルに陥っています。
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4. 財務3指標③ 営業キャッシュフロー|利益が「本物かどうか」を確認する
社長: PLの利益以外に、もう一つ確認すべき指標があると聞きました。
税理士: 営業キャッシュフロー(営業CF)です。キャッシュフロー計算書の「営業活動によるキャッシュフロー」で確認できます。本業の事業活動で実際に生み出した現金の増減を示し、PLの利益とは異なる「現金ベースの実態」を映します。
状態 | 意味 |
営業CFプラス+PLも黒字 | 本物の利益。最も健全な状態 |
営業CFマイナス+PLは黒字 | 要注意。売掛金増加・在庫増加・過剰投資が原因のことが多い |
営業CFプラス+PLは赤字 | 減価償却が大きい等の特殊要因。実態は悪くない場合も |
営業CFマイナス+PLも赤字 | 危険。黒字倒産のリスクがある状態 |
社長: PLが黒字なのに営業CFがマイナスの会社は、どういう状態ですか?
税理士: 「帳簿上は儲かっているが、現金が出ていっている」状態です。売掛金が回収できていない、在庫が増えすぎているといった経営上の問題が隠れているケースがほとんどです。放置すると黒字倒産のリスクがあります。
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5. 3指標を組み合わせて会社を診断する
社長: 3つの指標をどう組み合わせて判断すればいいですか?
税理士: 同じ年商2億円の製造業で比較してみましょう。
【A社】財務体質が良好なケース
指標 | 数値 | 評価 |
税引後利益率 | 6.5% | 優良 |
自己資本比率 | 38% | 安定 |
営業CF | +1,200万円 | 健全 |
→ 総合評価:銀行評価も高く、次の成長投資に踏み出せる状態。
【B社】PLは黒字だが実態が悪化しているケース
指標 | 数値 | 評価 |
税引後利益率 | 1.2% | 要改善 |
自己資本比率 | 12% | 要注意 |
営業CF | △300万円 | 危険 |
→ 総合評価:PLは辛うじて黒字だが財務の実態は悪化。このまま成長投資をすると資金繰りが危機的になるリスクがある。
社長: 同じ年商でもこれだけ差があるんですね。
税理士: だからこそ、3指標を定期的に確認する習慣が経営判断の精度を上げます。
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6. 儲かっている会社が共通して持っている習慣
社長: 財務体質の強い会社の経営者には、共通する習慣があるんですか?
税理士: 3つあります。
① 月次決算を翌月10日以内に締める
年1回の決算書だけでは判断が遅すぎます。月次で3指標を確認することで、問題を早期に発見できます。
② 役員報酬を「節税ベース」ではなく「財務ベース」で設計する
内部留保を意識した報酬設計をしている会社は、自己資本比率が毎期着実に改善します。
③ 「利益を出して納税する」ことを厭わない
税引後利益の蓄積こそが自己資本比率を高め、銀行評価を上げ、次の成長資金を生む——この好循環を理解している経営者が、年商3億円の壁を越えていきます。
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まとめ
指標 | 計算式 | 目安 | 優良ライン |
税引後利益率 | 税引後利益÷売上高 | 3%以上 | 5%以上 |
自己資本比率 | 純資産÷総資産 | 30%以上 | 50%以上 |
営業キャッシュフロー | CF計算書より確認 | プラス | 利益との乖離が小さい |
儲かっている会社の条件はシンプルです。毎期、適正な利益を出し、それを会社に残し続ける。この繰り返しが財務体質を強くし、銀行からの信頼を積み上げ、成長の選択肢を広げていきます。
「うちは黒字だから大丈夫」ではなく、「税引後利益率・自己資本比率・営業CFの3つはどうか」——この問いを持てる経営者が、年商3億円超の壁を突破していきます。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 自己資本比率はどうすれば上げられますか?
毎期の税引後利益を会社に残す(内部留保する)ことが基本です。役員報酬や配当で利益を全額引き出してしまうと、自己資本は積み上がりません。過度な節税も利益を圧縮するため、改善を妨げます。数年単位の継続が必要ですが、それが銀行評価と資金調達力に直結します。
Q2. 営業キャッシュフローはどこで確認できますか?
キャッシュフロー計算書の「営業活動によるキャッシュフロー」の欄で確認できます。中小企業の多くはCF計算書を作成していませんが、試算表の数字から簡易的に計算することも可能です。税理士に依頼すれば、月次で把握できる体制を整えることができます。
Q3. 税引後利益率の業種別の目安はありますか?
業種によって大きく異なります。製造業・建設業は3〜5%、サービス業・IT業は5〜10%、飲食・小売は3%前後が平均的な水準です。ただし、同業他社との比較よりも「自社の3期推移」を見ることの方が経営改善には有効です。
Q4. 黒字なのに資金繰りが苦しいのはなぜですか?
PLは黒字でも、売掛金の未回収・在庫の増加・借入金の元本返済・設備投資などによってキャッシュが流出しているためです。営業キャッシュフローがマイナスになっているケースが多く、放置すると黒字倒産のリスクがあります。
Q5. 3指標の確認はどのくらいの頻度で行うべきですか?
月次で確認することが理想です。年1回の決算書だけでは問題の発見が遅れます。月次試算表をもとに税理士と定期的に数字を確認する習慣をつけることで、経営判断の精度が大きく上がります。
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