貸借対照表の読み方|銀行が決算書で最初に見る3つの指標
- 近藤 祐輔

- 2025年8月5日
- 読了時間: 7分
更新日:4月19日
はじめに
「決算書を銀行に提出しているけど、どこを見られているのかわからない・・・」
融資を受けるたびにこう感じている経営者は少なくありません。銀行が決算書の中で最初に目を向けるのは、損益計算書(PL)ではなく貸借対照表(B/S)です。
B/Sには会社の「財産の状況」と「資金の調達元」が一目でわかる形で示されており、銀行はここから経営者の資金管理力・財務体質・信用力を読み取ります。
今回は社長と税理士の対話形式で、貸借対照表の基本構造と、銀行が実際に見ている3つの指標・警戒する項目を解説します。
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1. 貸借対照表とは何か?
社長: 先生、貸借対照表って損益計算書と何が違うんですか?
税理士: 損益計算書が「一定期間の利益の動き」を示すのに対し、貸借対照表は「ある一時点における会社の財産の状況」を示します。決算日時点で会社がどんな財産を持ち、その財産をどうやって調達したかを表しています。
区分 | 内容 | 主な例 |
資産 | お金の使い道 | 現金・売掛金・在庫・建物・設備など |
負債 | 他人から調達した資金 | 買掛金・借入金・未払金など |
純資産 | 自己資本 | 資本金・利益剰余金など |
社長: なぜ「貸借」対照表というんですか?
税理士: 左側(資産)と右側(負債+純資産)が必ず一致するからです。
資産 = 負債 + 純資産会社が持っている財産(資産)は、銀行からの借入など他人から調達したお金(負債)と、株主や過去の利益など自己資本(純資産)で必ずまかなわれています。この関係が常にバランスしていることから「貸借対照表」と呼ばれます。
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2. 銀行が見る3つの財務指標
① 流動比率|短期的な資金繰りの安定性
社長: 銀行は貸借対照表のどこを最初に見るんですか?
税理士: 多くの場合、最初に確認するのが「流動比率」です。
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100流動資産とは1年以内に現金化できる資産(現金・売掛金・在庫など)、流動負債とは1年以内に返済が必要な負債(買掛金・短期借入金など)です。
社長: 何%あれば安心ですか?
税理士: 一般的には120%以上が健全とされます。ただし業種によって大きく異なり、製造業や小売業は在庫が多いため100%を下回ることもあります。重要なのは業種平均との比較と、前期からのトレンドです。
例:流動資産3,000万円・流動負債2,000万円
→ 流動比率 = 3,000万円 ÷ 2,000万円 × 100 = 150% → 健全📌 流動比率が極端に低い場合、黒字でも「資金繰りが苦しい」と判断されます。売掛金や棚卸資産が多すぎて現金化できていないと評価が下がります。
② 自己資本比率|会社の体力・信用力の指標
自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資産 × 100銀行は自己資本比率から「この会社は返済に耐えられる体力があるか」を判断します。一般的に30%以上が望ましい水準です。
自己資本比率が低い会社は「借入に頼った経営」とみなされ、融資審査にマイナスに働きます。資本金だけでなく、毎期の利益を社内に積み上げた利益剰余金の蓄積が重要です。
③ 繰越利益剰余金|これまでの経営実績の蓄積
繰越利益剰余金は、会社が設立以来稼いだ利益の蓄積です。これがマイナスであれば「債務超過に近い」と判断されることがあります。
社長: 利益が出ているのに剰余金が増えていない場合はどうですか?
税理士: 銀行は「なぜ剰余金が増えていないのか」を確認してきます。配当による社外流出や過去の赤字の影響であれば説明できますが、説明できないと「実態がわからない会社」と判断されます。一定以上の剰余金があると、運転資金の自己調達力があると評価されます。
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3. 銀行が警戒する貸借対照表の項目
社長: 決算書を見られて「これはまずい」と思われる項目はどんなものですか?
税理士: 主に3つあります。
① 社長貸付金・仮払金・仮受金が多額にある
社長貸付金は「資金の私的流用では」という疑念を持たれます。銀行は「融資をしても返済に回される」と判断し、融資審査で不利になります。仮払金・仮受金が長期間残っている場合も「会計処理が杜撰」「帳簿管理ができていない」という評価につながります。
② 未払法人税等が継続して残っている
決算月から数か月経っても未払法人税が残っている場合、「納税資金を確保できていない=資金繰りが苦しい」という印象を与えます。税金の未払いは銀行にとって赤信号です。
③ 減価償却資産の過大評価
建物や設備が帳簿上の価値として残っていても、実際には陳腐化していて担保価値がない場合があります。銀行は時価評価に近い目線でチェックするため、簿価と時価の乖離が大きい資産があると、実質的な純資産が低く評価されます。
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4. 貸借対照表は「経営者の姿勢の鏡」
社長: 結局、銀行は数字だけを見ているんですか?
税理士: 数字の裏にある「経営者の考え方」や「資金管理力」も含めて判断しています。貸借対照表を見れば、その経営者がどれだけ会社とお金を真剣に管理してきたかが透けて見えるんです。
銀行にプラス評価される貸借対照表の特徴
資金使途が明確で資産が整理されている
社長の資金関与(貸付金・仮払金等)がなく透明
毎年着実に利益剰余金が積み上がっている
流動比率・自己資本比率が業種平均を上回っている
マイナス評価につながる特徴
資金の使い方が不透明(仮払金・役員貸付金が多い)
利益剰余金が少ない・減少傾向にある
未払税金・短期借入が恒常的に残っている
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よくある質問(FAQ)
Q1. 流動比率と当座比率はどう違いますか?
流動比率は流動資産全体を流動負債で割りますが、当座比率は流動資産から在庫(棚卸資産)を除いた当座資産で計算します。在庫はすぐに現金化できないため、より厳しい短期支払能力の指標として当座比率が使われます。一般的に当座比率は100%以上が目安です。
Q2. 貸借対照表と損益計算書はどちらが重要ですか?
どちらも重要ですが、役割が異なります。損益計算書は「儲かっているか」を示し、貸借対照表は「財務体質が健全か」を示します。銀行融資の観点では、単期の利益より財務体質の継続性を示す貸借対照表の方が重視される傾向があります。
Q3. 貸借対照表の「資産」が多いほど良いですか?
必ずしもそうではありません。資産の「質」が重要です。現金・売掛金など換金性の高い資産は評価されますが、回収不能な売掛金・不良在庫・役員貸付金など実態のない資産は純資産から差し引いて評価されます。資産の量より質で判断されます。
Q4. 中小企業でも貸借対照表を毎月確認すべきですか?
毎月確認することをお勧めします。月次試算表にはB/Sも含まれており、売掛金・借入残高・純資産の推移を月次で把握することで、資金ショートの予兆を早期に捉えられます。決算書は過去の結果ですが、月次B/Sは現在地の確認ツールです。
Q5. 自己資本比率を短期間で改善する方法はありますか?
最も確実なのは毎期黒字を出して利益剰余金を積み上げることです。即効性のある方法としては、役員借入金が多額にある場合にをDES(デット・エクイティ・スワップ)で資本に転換する手法があります。ただし法的手続きと税務上の検討が必要なため、必ず税理士と相談のうえ進めてください。
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まとめ
貸借対照表は「資産=負債+純資産」の関係で成り立つ財務諸表
銀行が見る3つの主要指標は①流動比率(120%以上が目安)②自己資本比率(30%以上が目安)③繰越利益剰余金の推移
銀行が警戒する項目は社長貸付金・仮払金・未払税金・減価償却資産の過大評価
数字の裏にある「経営者の資金管理力・姿勢」まで銀行は読み取っている
月次でB/Sを確認する習慣が、資金ショートの予防と銀行評価の向上につながる
貸借対照表は単なる財務諸表ではなく、「これまでの経営の集大成」です。定期的に見直し、改善できるポイントを把握することが、銀行からの信頼を獲得する第一歩です。
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