金融機関が注目する「営業利益」と「経常利益」の違い ~見られる“本業力”と“返済余力”を理解する~
- yusukekondo9
- 10月9日
- 読了時間: 4分
はじめに
年商5億円を目指す経営者にとって、金融機関との良好な関係構築は資金調達の鍵となります。その際、銀行担当者が重視するのが、決算書中の「営業利益」と「経常利益」です。
しかし、この2つの利益は似ているようで、見る視点・意味合い・改善のポイントに大きな違いがあります。本記事では、税理士の立場から金融機関がこれらをどのように評価するか、また経営者としてどう準備すべきかを解説します。
I. 営業利益と経常利益、それぞれの定義と構成要素
営業利益とは
営業利益(Operating Income)は、会社の本業そのものの儲けを示す利益です。具体的には、
売上高 ― 売上原価 ― 販売費及び一般管理費(販管費)
これによって、企業の事業活動で稼ぐ力が明らかになります。
営業利益は、販管費(人件費、広告費、家賃、管理部門コストなど)の効率性も反映します。
経常利益とは
経常利益(Ordinary Profit/経常収益−経常費用)は、営業利益に営業外収益・費用を加減した利益です。
典型的には以下を含みます:
受取利息・配当金
支払利息・借入費用
為替差損益、雑収入・雑損失 など
つまり、本業+金融活動などを含めた通常の収支を表す指標です。
II. 金融機関がこの2つの利益を重視する理由
営業利益:本業力を測る尺度
金融機関はまず、企業の本質的な成長力・持続性を見たいと考えます。営業利益が安定して黒字であれば、「収益構造がしっかりしている企業」と見られやすくなります。
たとえ借入があっても、営業利益がマイナスであれば融資に慎重になる
営業利益率が高ければ、余裕のあるコスト構造と成長性をアピールできる
経常利益:返済余力を測る尺度
営業利益が「本業の強さ」を表すなら、経常利益は「借入利息負担や金融費用を含めた実際の余力」を示します。
経常利益が黒字であれば、利息支払後でもキャッシュが残る可能性が高い
経常利益が悪化していると、「本業が良くても借入負荷で苦しくなる」企業と判断されることもあります
📌 金融機関は、融資元利払いの原資をどこから得るかを重視するため、営業利益+利息負担を含めた収支バランスが重要視されます。
III. 営業利益と経常利益の差異から読み取れる会社の特徴
下記のような状況が見られると、金融機関はその差異に注目します。
状況 | 差異の方向性 | 銀行の懸念・見方 |
支払利息が重い会社 | 経常利益が営業利益を大きく下回る | 借入依存体質・返済圧力を懸念される |
多額の受取利息・配当を得ている会社 | 経常利益が営業利益を上回る | 本業以外の収益頼みと見られる可能性 |
為替・雑収益が変動しやすい | 経常利益が変動幅大 | 利益の継続性に疑いを持たれることも |
📌 このように営業利益と経常利益の差は、会社のリスク構造や収益構造の内実を示す「手がかり」となります。
IV. 経営者が押さえるべき実務ポイント:2つの利益を改善・使い分ける
① コスト構造を見直す(営業利益改善)
販管費の見直し(人件費・家賃・販促費など)
外注・委託コストの最適化
商品別・部門別の採算分析
📌 営業利益を安定して黒字化させることが、まずは基盤になります。
② 借入コスト管理と利息負担軽減(経常利益改善)
借入金利率の見直し・借換え
長期借入・低金利借入の導入
不要な短期借入の返済
📌 利息負担を軽くすることで、営業利益を経常利益に反映しやすくなります。
③ 非営業収益・費用の安定化
投資有価証券の売却益や配当は予測できる範囲で収益化
為替リスクをヘッジする
雑損失を抑制するためのリスク管理
📌 こうした“本業外要素”に左右されすぎない経営が、銀行評価を受けやすくなります。
V. 税理士としてのサポート・注意点
決算時・予算時に営業利益・経常利益のシミュレーションを事前に行う
銀行向け説明資料(PL差異分析・利息負担の影響)を作成
利益処理と税務調整(別表4・別表5)を整合性を保って設計
業績予測と融資返済計画をリンクさせた提案
📌 特に、税務調整で利益を圧縮しすぎると銀行評価を落とすリスクがあるため、利益操作には注意を要します。
まとめ:営業利益と経常利益は“見る窓”を変える
営業利益:本業の強さを表す指標
経常利益:借入コストなども含めた“返済余力”を示す指標
両者の差異を理解し、バランスよく改善することが、銀行評価を高める鍵
税務・財務・融資戦略を一体で設計できる税理士とタッグを組むことが大切
弊所サービスに関するお問い合わせは「お問い合わせフォーム」からお願いいたします
コメント