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事業が軌道に乗ってきた時に検討すべき資金調達手段とは?~成長フェーズの中小企業が考えるべき資金戦略を税理士が解説~

  • yusukekondo9
  • 6月12日
  • 読了時間: 4分

はじめに


創業から数年が経ち、売上も利益も一定の安定を見せ始めたタイミング。「そろそろ次のステージに進みたい」と考える経営者は多いでしょう。

しかし、事業を“加速”させるには資金が必要です。そして、この成長フェーズこそ、資金調達の方法を見直し、より戦略的に活用していくタイミングでもあります。

本記事では、創業フェーズを抜けて事業が軌道に乗ってきた中小企業が、どのような資金調達手段を検討すべきか、税理士の視点から具体的に解説します。



1. なぜ「事業が軌道に乗った今」資金調達を考えるのか?


事業が成長し始めたからこそ、以下のような課題に直面しやすくなります。

課題

必要な資金調達の目的

設備が手狭になった

拠点拡大・新規設備導入資金

人手が足りない

採用・教育・人件費の先行投資

売上増加に伴い運転資金が不足

在庫増・外注費の前払い対応

競合との差別化

新サービス開発・広告宣伝費

銀行からの評価を上げたい

プロパー融資実績の構築

📝 成長のタイミングを逃すと、ライバルに後れを取る可能性も。あえて“資金調達する”ことが成長戦略になるのです。



2. 成長期に活用できる資金調達手段一覧


以下は、事業が安定してきた中小企業が検討可能な資金調達手段の代表例です。

調達手段

特徴

向いている用途

信用保証協会付き融資

保証付きで審査が通りやすい

運転資金・設備資金全般

プロパー融資

銀行の“信用”で貸し出す本格融資

信頼の証/借換/拡張投資

日本政策金融公庫の追加融資

創業時に続く第2段階の資金調達

運転強化・新事業資金など

商工中金融資

中堅規模以上向け/プロパー対応可能

複数行借入・設備更新時

補助金+融資の組み合わせ

自己負担軽減&資金確保

設備投資・IT導入・広告展開

ノンバンク融資(例:リース、ファクタリング)

即時性・手軽さが魅力

短期の資金つなぎなど

出資・資本調達

ベンチャー型企業や第二創業に多い

M&A・DXなど大規模構造変革時



3. 特に検討すべき資金調達戦略3選


(1)保証協会付き融資から「プロパー融資」へ移行を目指す

  • 創業期に利用した保証協会付き融資に実績が出てきたなら、次のステップはプロパー(保証なし)融資です。

  • 金利や条件も交渉しやすくなり、銀行からの信用も一段上がります。


📌 毎月の試算表提出、月次報告などで銀行との情報共有を継続することで、スムーズに移行できるケースも


(2)「銀行以外」も選択肢に入れる:商工中金・公庫

  • 地銀や信金だけでなく、商工中金(政策金融機関)や日本政策金融公庫も継続的に利用できます。

  • 特に商工中金は、成長段階での設備投資・事業転換に強い支援体制を持っています。


📌 売上5,000万円~1億円以上に乗ってきた企業におすすめ


(3)補助金活用と融資の組み合わせで「自己資金のてこ入れ」

  • 小規模事業者持続化補助金、新事業進出補助金、IT導入補助金などの採択率が高まるのは“成長途上の事業者”です。

  • 採択されても「立替払い」が原則なので、つなぎ融資との併用が成功の鍵になります。


📌 補助金申請の段階から融資計画を立てると、現実的な資金繰りが実現可能



4. 資金調達時の注意点

注意点

内容

融資目的の明確化

「何に使うか」を明確にしないと審査で評価されない

借り過ぎない・足りなすぎない

借入額はキャッシュフローとバランスを

金利・返済期間の設計

安い金利=正解ではない/返済期間でキャッシュフローが変わる

月次資料の提出

融資後も金融機関に報告することで信用が蓄積される



5. まとめ:「借りられるから借りる」から「戦略的に借りる」へ


事業が軌道に乗ってきたからこそ、

✅ 資金を“借りる理由”と“返す根拠”を明確にし、

✅ 金融機関との付き合いも“評価される経営者”へとレベルアップさせるべきタイミングです。

今後の成長を「資金の壁」で止めないためにも、税理士や資金調達の専門家と連携して、事業に合った資金調達戦略を組み立てていきましょう。



✅ 経営者へのアドバイス


  • 事業がうまくいっている「今」こそが資金調達のベストタイミングです

  • 「通帳にお金があるうち」に、次の投資と金融戦略を考えましょう

  • 顧問税理士と月次管理・試算表の整備を行い、信頼される経営者として金融機関と向き合いましょう

 
 
 

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