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繰越欠損金の利用可能性と節税への活用~赤字を「将来の利益」と相殺するスマートな節税戦略~

  • 執筆者の写真: 近藤 祐輔
    近藤 祐輔
  • 2025年9月16日
  • 読了時間: 3分

更新日:3月21日


決算で赤字が出た場合、「その赤字は終わった話」としてしまうのは非常にもったいない考え方です。法人税法上、一定の要件を満たせば、赤字(欠損金)を将来の利益と相殺し、節税に活かすことが可能です。

この制度が「繰越欠損金の控除」。今回は、この制度の基本と活用法、さらには経営判断や銀行対応への影響についても詳しく解説します。



I. 繰越欠損金とは?


過去に生じた税務上の赤字(欠損金)を、将来の黒字と相殺できる制度です。簡単にいえば、「過去の赤字を翌期以降の利益とぶつけて、法人税の負担を軽くすることができる」という仕組みです。


📌 欠損金とは:税務上の損金が益金を上回って生じた赤字(会計上の損失とは異なる場合もある)



II. 適用対象と利用要件

項目

内容

適用対象

青色申告書を提出している法人(個人は対象外)

控除限度額

原則:当期所得の50%まで


中小企業:全額控除可(100%)

繰越期間

原則10年間

要件

欠損金が生じた事業年度に適正な申告書(青色申告)を提出し、その後も継続して申告書を提出すること



III. 中小企業の特例:全額控除可能


資本金1億円以下の法人(中小法人)であれば、一定の例外を除き、繰越欠損金を当期所得の全額と相殺可能(100%控除)です。これは大企業と比べて非常に有利な税制であり、中小企業の大きな節税武器となります。



IV. 実務での活用方法


① 利益が出そうな年度で活用

繰越欠損金は、将来利益が出たときに使って初めて「節税効果」が出ます。利益の見込みがある場合は、「使える繰越欠損金があるか」を確認しましょう。


例:前期に1,000万円の赤字 → 今期800万円の黒字が出た → 繰越欠損金800万円分を相殺し、法人税がゼロに


② 法人税等を計算する別表の確認

繰越欠損金の額と残高は、法人税別表七で管理されます。申告書に正確に記載されていないと、税務調査時に否認されるリスクもあるため注意が必要です。


③ 使い切れない分は翌年以降に繰り越せる

黒字額が繰越欠損金に満たない場合、その残額は翌期以降にさらに繰越可(最大10年)→ 長期的な利益計画と併せて戦略的に活用すべきです。



V. 財務・銀行対応との関係


金融機関が決算書を見る際には、繰越欠損金の存在にも注目します。特に以下の点が評価に影響します:

視点

金融機関の見方

欠損金の発生理由

一時的・投資的な赤字であれば、将来性ありと評価されやすい

繰越欠損金の消化状況

黒字化しつつあるなら「回復傾向」と見なされ、プラス評価

財務分析上の影響

欠損金控除により法人税等が軽くなっている → キャッシュフローが良化しているかを確認されることも

📌「繰越欠損金の活用状況」は、財務戦略の一部として融資交渉にも活かせる要素です



VI. 注意点・落とし穴


  • 青色申告書の提出をしていないと繰越できません

  • 期限(10年)を過ぎると使えなくなります

  • 適正に申告書・別表が整っていないと、税務調査で否認される可能性も


📌 欠損金の計上・管理は、「節税」だけでなく「税務リスク管理」の視点でも重要です



まとめ

ポイント

内容

繰越欠損金とは

税務上の赤字を将来の利益と相殺できる制度

中小企業のメリット

繰越欠損金を100%控除可能(大企業は50%まで)

繰越期間

最大10年間。期限切れに注意

財務戦略

融資交渉・税負担の平準化などに活用可



税務・財務戦略や銀行融資についてのご相談はお気軽にお問い合わせください。

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