top of page

損益分岐点分析でわかる売上目標の立て方~「感覚の目標」から「根拠ある数字」へ~

  • 執筆者の写真: 近藤 祐輔
    近藤 祐輔
  • 2025年11月13日
  • 読了時間: 4分

更新日:3月21日


はじめに|“なんとなくの売上目標”になっていませんか?


「今年は前年比+10%を目指そう」

「とにかく1億円突破を目標にしよう」


このように、売上目標が「希望的観測」や「語呂の良さ」だけで設定されていませんか?

本来、売上目標は「利益」と「固定費」「変動費」の構造を理解したうえで、損益分岐点分析から逆算する必要があります。

この記事では、経営判断に欠かせない「損益分岐点」の考え方と、それに基づいた売上目標の立て方を解説します。



1. 損益分岐点とは何か?


損益分岐点とは、利益がゼロになる売上高のこと。すなわち、「売上=経費」になるラインです。

この金額を下回ると赤字、上回ると黒字になります。


■ 計算式:

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)

  • 固定費:売上に関係なく毎月かかる費用(人件費・家賃・通信費など)

  • 変動費:売上に比例して発生する費用(仕入・外注・販売手数料など)


■ 例(小規模のネット通販企業):

  • 固定費:150万円/月

  • 売上高:400万円/月

  • 変動費:160万円(変動費率40%)


▶ 損益分岐点:150万円 ÷(1 − 0.4)= 250万円


つまり、月商250万円を下回ると赤字になる構造です。



2. なぜ損益分岐点を把握すべきなのか?


「売上はあるのに利益が出ない」「一人増やしただけで一気に赤字」「価格を少し下げたら利益が吹き飛んだ」

このような“利益の見えない経営”を防ぐために、損益分岐点の把握は必須です。


✅ 把握すると何がわかる?

見えるもの

意味

利益が出る最低限の売上

「どこから黒字になるか」が明確に

固定費に対する売上貢献度

無駄なコストをあぶり出せる

値下げや人員増のリスク

シミュレーションで収益性を検証可能

明確な売上目標

根拠ある数字でチームが動ける



3. 売上目標の立て方|3つのステップ


ステップ①:自社のコスト構造を整理する

費用区分

主な項目

変動費

仕入・外注費・販売手数料・梱包配送費など

固定費

人件費・家賃・広告費(固定型)・保険料など

📌 勘定科目を「変動費」か「固定費」かで分けて再集計することがポイントです(会計ソフトの元帳や試算表をCSV出力 → Excelなどで分類)


ステップ②:変動費率と損益分岐点を求める

計算項目

変動費率

変動費 ÷ 売上高

損益分岐点

固定費 ÷(1 − 変動費率)

ステップ③:目標利益から“必要売上高”を逆算する


たとえば、月間50万円の利益を出したい場合は:

▶ 必要売上高 =(固定費 + 目標利益)÷(1 − 変動費率)


例:(150万円 + 50万円)÷(1 − 0.4)= 333万円

👉 月商333万円を売らなければ目標利益に届かない、ということが明確になります。



4. 実務での応用|3つのシミュレーション


① 値引きをした場合の影響

  • 価格10%ダウン → 利益が出るまでに必要な販売数量が大幅増

    → 限界利益率が下がるため、「損益分岐点が遠のく」


 📌 安易な値引きが利益を破壊する例


② 従業員を1人増やした場合

  • 固定費が増える → 必要売上高も増加

  • 目標利益に届くには「何件の受注増が必要か?」が逆算できる


 📌 人件費の“採算ライン”をシミュレーションできる


③ 広告費をかけた場合の採算性

  • 広告費が10万円アップ → 売上が15万円アップ

    → 限界利益率が60%なら「採算クリア」、50%なら「赤字」


 📌 広告費の効果を“利益ベース”で検証できる



5. おすすめの管理指標:CVP分析(月次でのモニタリグ)


CVPとは、Cost-Volume-Profit(損益分岐点)分析の略

項目

内容

限界利益(売上−変動費)

固定費をまかなう“貢献利益”

限界利益率

限界利益 ÷ 売上高

安全余裕率

(売上 − 損益分岐点)÷ 売上


📌 安全余裕率が低い=赤字転落リスクが高い(目安:20%未満なら経営体力に課題あり)



まとめ|「売上目標は、利益から逆算する」時代へ

考え方

従来型

これから

売上目標

前年比・感覚値

損益分岐点から逆算

コスト感覚

勘と経験

固定費・変動費に分けて管理

経営判断

感覚的

数値的根拠に基づくシミュレーション

利益体質

不安定

構造的に黒字を維持できる仕組み

「とりあえず売上を伸ばす」から「売上と利益のバランスを見ながら成長する」経営へ



税務・財務戦略や銀行融資についてのご相談はお気軽にお問い合わせください。

最新記事

すべて表示
経常利益の質を見抜く|一時的な黒字と持続的な黒字の違い

はじめに 決算書を見て「経常利益が出ているから安心だ」と考えていませんか? しかし、金融機関や投資家、そして財務に強い経営者が見ているのは、 その経常利益は“継続的に生み出せる利益かどうか” という点です。 今回は、 経常利益の“質”をどう見抜くか を、税理士の視点から解説します。 経常利益とは何か? 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用 つまり、 本業の儲け(営業利益) 受取利

 
 
 
粗利益率の推移と価格戦略|売上よりも利益を守る視点を持つ

はじめに 「売上が上がっているのに、なぜか利益が増えない・・・」 こうした悩みを抱える中小企業経営者にとって、注視すべき指標が 粗利益率(売上総利益率)  です。 売上高の数字に目を奪われがちですが、実は「儲かるかどうか」は粗利率で決まります。 今回は、粗利益率の正しい読み方と、その推移から見えてくる経営課題、価格戦略への活かし方について税理士の視点で解説します。 1.粗利益率(売上総利益率)とは

 
 
 

コメント


近藤祐輔税理士事務所

Yusuke Kondo Tax Accounting Office

〒279-0023 千葉県浦安市高洲8丁目1番714

​TEL:047-707-3714

©2026 近藤祐輔税理士事務所

bottom of page