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損益分岐点分析でわかる売上目標の立て方|利益から逆算する

  • 執筆者の写真: 近藤 祐輔
    近藤 祐輔
  • 2025年11月13日
  • 読了時間: 8分

はじめに


「今年は前年比+10%を目指そう」「とにかく1億円突破を目標にしよう」


このように、売上目標が「希望的観測」や「語呂の良さ」だけで設定されていませんか?本来、売上目標は「利益」と「固定費」「変動費」の構造を理解した上で、損益分岐点分析から逆算する必要があります。


今回は社長と税理士の対話形式で、損益分岐点の考え方と、それに基づいた売上目標の立て方を解説します。


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1. 損益分岐点とは何か


社長: 損益分岐点って、よく聞きますが正確には何ですか?


税理士: 利益がゼロになる売上高のことです。「売上=経費」になるラインで、この金額を下回ると赤字、上回ると黒字になります。


損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)

固定費:売上に関係なく毎月かかる費用(人件費・家賃・通信費など)
変動費:売上に比例して発生する費用(仕入・外注・販売手数料など)
変動費率:変動費 ÷ 売上高

社長: 具体的な数字で見せてもらえますか?


税理士: こういうケースで計算してみましょう。


例:月間の数字
固定費    150万円
売上高    400万円
変動費    160万円(変動費率40%)

損益分岐点:150万円 ÷(1 − 0.4)= 250万円

→ 月商250万円を下回ると赤字になる構造

社長: 売上が400万円あっても、250万円を割ったら赤字になるんですね。


税理士: そうです。たとえば急に大口の取引先が離れて売上が月200万円に落ちた場合、すぐに赤字転落するということが事前にわかります。この「どこから赤字になるか」を把握していることが、経営判断の精度を上げます。


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2. なぜ損益分岐点を把握すべきなのか


社長: 損益分岐点を把握すると、具体的に何がわかりますか?


税理士: 以下の4つが明確になります。

見えるもの

意味

利益が出る最低限の売上

「どこから黒字になるか」が明確に

固定費に対する売上貢献度

無駄なコストをあぶり出せる

値下げや人員増のリスク

シミュレーションで収益性を事前検証できる

根拠ある売上目標

「なんとなくの目標」から脱却できる


社長: 「売上はあるのに利益が出ない」という状態は、損益分岐点を把握していないからですか?


税理士: その通りです。損益分岐点を知らずに経営していると「一人増やしただけで赤字に転落」「価格を少し下げたら利益が吹き飛んだ」という事態に気づくのが遅れます。


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3. 売上目標の立て方|3つのステップ


社長: 損益分岐点を使って、どうやって売上目標を立てればいいですか?


税理士: 3つのステップで進めます。


ステップ①:自社のコスト構造を整理する

月次の試算表をもとに、費用を「変動費」と「固定費」に分類します。

費用区分

主な項目

変動費

仕入・外注費・販売手数料・梱包配送費など

固定費

人件費・家賃・固定型広告費・保険料など


社長: 人件費って固定費ですよね?


税理士: 固定給部分は固定費ですが、残業代・賞与・歩合給は変動費的な性格を持ちます。まず大まかに分類して、精度を上げながら修正していくアプローチをお勧めします。


ステップ②:変動費率と損益分岐点を計算する


変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
損益分岐点 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)

ステップ③:目標利益から必要売上高を逆算する

社長: 目標利益が決まっている場合はどう計算しますか?


税理士: こう計算します。


必要売上高 =(固定費 + 目標利益)÷(1 − 変動費率)

例:月間50万円の利益を出したい場合
(150万円 + 50万円)÷(1 − 0.4)= 333万円

→ 月商333万円を達成しなければ目標利益に届かない

社長: 「とりあえず頑張ろう」ではなく、「333万円売らなければならない」という具体的な数字になりますね。


税理士: そうです。この数字が出て初めて「そのためには何件の受注が必要か」「単価を上げるべきか」「固定費を削減すべきか」という具体的な議論ができます。


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4. 実務でのシミュレーション3パターン


① 値引きをした場合の影響

社長: 競合対策で価格を10%下げようかと思っているんですが。


税理士: 限界利益率が下がり、損益分岐点が大きく遠のきます。


現状  :売上400万円・変動費率40%・限界利益率60%
値引き後:実質的な限界利益率が低下

→ 同じ利益を出すために必要な売上が大幅に増える

「安易な値引きは利益を破壊する」というのはこのメカニズムです。値引きの前に「限界利益率がどう変わるか」を必ず試算することをお勧めします。


② 従業員を1人増やした場合

社長: 人を1人採用したら、売上がいくら増えれば採算が取れますか?


税理士: 固定費が増えた分、損益分岐点が上がります。


例:月30万円(給与+社会保険料込み)の採用

追加が必要な売上:30万円 ÷ 限界利益率60% = 50万円

→ 採用後に月商が50万円以上増えなければ、利益は改善しない

社長: 「人を増やせば売上が増える」という単純な発想は危険ですね。


税理士: そうです。採用前に「この人数増で何件の受注増が必要か」を逆算することが重要です。


③ 広告費をかけた場合の採算性


例:広告費を月10万円追加投資した場合

必要な売上増:10万円 ÷ 限界利益率60% = 約17万円

→ 広告費10万円で月商が17万円以上増えれば採算クリア

社長: 「広告費がいくら売上に貢献すれば元が取れるか」が計算できるんですね。


税理士: そうです。感覚で広告投資を判断するのではなく、利益ベースで採算性を検証する習慣をつけることが、経営判断の精度を上げます。


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5. 月次でモニタリングする習慣


社長: 損益分岐点は毎月計算すべきですか?


税理士: 月次で確認することをお勧めします。毎月の試算表から以下の数字を確認するだけです。


毎月確認すべき数字

限界利益   = 売上高 − 変動費
限界利益率  = 限界利益 ÷ 売上高
損益分岐点  = 固定費 ÷ 限界利益率
今月の余裕  = 実際の売上 − 損益分岐点

この「今月の余裕」がプラスならその月は黒字、マイナスなら赤字です。毎月この数字を確認することで、「いつ・なぜ赤字に近づいているか」を早期に発見できます。


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よくある質問(FAQ)


Q1. 変動費と固定費の分類が難しい費目はどう扱いますか?

電気代・通信費など「売上に多少連動するが完全には比例しない」費目は、実務では固定費として扱うことが多いです。まず大まかに分類して損益分岐点を計算し、精度を上げながら修正していくアプローチをお勧めします。完璧な分類より「おおよその構造を把握すること」が重要です。


Q2. 損益分岐点は月次と年次どちらで計算すべきですか?

月次での管理をお勧めします。年次だと季節変動が平均化されてしまい、「特定の月に赤字が集中している」という問題を見落とします。月次で計算することで資金繰り管理との連動が可能になります。


Q3. 限界利益率が低い場合、まず何を改善すべきですか?

①販売価格の引き上げ、②変動費(仕入コスト・外注費・販売手数料)の削減、③限界利益率の低い商品・取引先の見直し ——の3つが主な改善策です。どれが最も効果的かは変動費の内訳分析から特定することをお勧めします。


Q4. 損益分岐点を下げるには何をすればいいですか?

固定費を削減するか、限界利益率を上げることです。固定費削減では家賃・リース料・固定人件費の見直しが代表的です。限界利益率向上では値上げ・仕入コスト削減・変動費率の低い商品への集中が有効です。


Q5. この分析は税理士に依頼できますか?

依頼できます。月次試算表から変動費・固定費を分類し、損益分岐点と必要売上高の計算・シミュレーションをサポートできます。「採用を検討している」「値引き交渉を受けている」「広告投資を増やしたい」といった経営判断の前に税理士に相談することで、数値的な根拠を持って意思決定できます。


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まとめ


考え方

従来型

これから

売上目標

前年比・感覚値

損益分岐点から逆算

コスト感覚

勘と経験

固定費・変動費に分けて管理

経営判断

感覚的

数値的根拠に基づくシミュレーション

利益体質

不安定

構造的に黒字を維持できる仕組み

  • 損益分岐点=固定費÷(1−変動費率)。この金額を下回ると赤字

  • 目標利益から必要売上高を逆算する式:(固定費+目標利益)÷(1−変動費率)

  • 値引き・採用・広告投資の意思決定前に損益分岐点への影響をシミュレーションする

  • 月次で限界利益・限界利益率・損益分岐点を確認する習慣が経営判断の精度を上げる


「とりあえず売上を伸ばす」から「売上と利益のバランスを見ながら成長する」経営へ。損益分岐点の把握が、根拠ある経営判断の第一歩です。


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