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年商1億円の壁、5億円の壁|成長ステージで変わる経営課題と乗り越え方

  • 執筆者の写真: 近藤 祐輔
    近藤 祐輔
  • 5 日前
  • 読了時間: 11分

年商1億円の壁、5億円の壁

― 成長ステージごとに変わる経営課題と乗り越え方

「年商1億から5億へ」シリーズ 第1回


はじめに


社長「売上は順調に伸びているんです。でも、なぜか昔より経営が苦しく感じるというか・・・。」

こう相談される経営者に、これまで何度もお会いしてきました。


近藤(税理士) 創業当初は、売上が増えるたびに会社が良くなっていく実感がありますよね。1,000万円が2,000万円になれば嬉しい。5,000万円が1億円になれば、成長を肌で感じられる。


社長「はい、まさにそうでした。でも1億円を超えたあたりから、様子が変わってきて。社員は増えたし、売上も伸びている。それなのに利益が思うように残らないし、資金繰りにも余裕がない。忙しいのは自分だけ。会社が大きくなったというより、複雑になった感覚の方が強いんです。」


近藤 もしそう感じているなら、それは経営が悪化しているサインではありません。会社が次の成長ステージに入ったサインです。


多くの中小企業の経営を見ていて感じるのは、会社の成長には必ず「壁」があるということです。売上が急に止まるわけではありません。しかし、それまでと同じやり方を続けていると、利益が残らなくなり、資金繰りが苦しくなり、組織もうまく回らなくなっていく。会社ではなく、「経営のやり方」が限界を迎える。これが、私の考える成長の壁です。


このシリーズ「年商1億から5億へ」では、年商1億円を超えた企業が次のステージへ進むために必要なお金と経営について、税務だけでなく、財務・組織・利益・投資・事業承継まで含めて解説していきます。第1回となる今回は、多くの会社が経験する「1億円の壁」「3億円の壁」「5億円の壁」について考えてみます。


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第1章 年商1億円を超えると、社長の仕事は変わる


社長「正直、やっていることは創業の頃とそんなに変わっていない気がします。営業して、案件を取って・・・。それの何がいけないんでしょうか。」


近藤 いけないわけではありません。むしろ、創業期はそれが正しい経営です。社長自身が営業担当であり、経理担当であり、現場責任者でもある。お客様を増やし、良い商品やサービスを提供し、誰よりも自分が働く。そのステージでは、それだけで会社は成長していきます。


ただ、年商1億円を超えた頃から事情が変わってきます。社員が増え、外注先が増え、銀行との付き合いが増え、取引先が増える。設備投資も必要になり、売掛金も増え、社会保険料や税金の金額も大きくなる。会社のお金の動きが、一気に複雑になっていくんです。


社長「たしかに、把握しなきゃいけないことが増えた実感はあります。」


近藤 そこで多くの経営者が陥りやすいのが、「今まで成功したやり方を、そのまま続けようとする」ことです。営業を頑張る。紹介を増やす。案件を取る。それ自体は間違いではありません。しかし会社が大きくなるほど、社長が営業だけを頑張っても利益は残らなくなります。利益を左右する要素が、営業以外にも数多く存在するようになるからです。


採用のタイミングは適切か。人件費は利益率に見合っているか。値上げの判断はできているか。設備投資は本当に必要か。キャッシュフローは健全か。借入は会社の成長に合った水準か――。こうした判断の積み重ねが、会社の利益を決めていきます。


年商1億円を超えた社長の仕事は、「売上を作ること」だけではありません。会社全体のお金の流れを設計し、意思決定することへと変わっていきます。この変化に気づけるかどうかが、会社が5億円へ成長できるかどうかの分岐点だと、私は考えています。


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第2章 年商1億円の壁 ― 「どんぶり経営」から卒業できるか


社長「利益は出ているはずなのに、なぜかお金が残らないんです。これって何が原因なんでしょうか。」


近藤 実はこのご相談、本当によくいただきます。利益とお金は、同じものではないんです。


年商1億円という数字自体に、特別な意味があるわけではありません。業種によっては5,000万円で同じ課題に直面することもあれば、2億円になって初めて表面化することもあります。それでも、多くの会社を見ていると、この前後で経営の質を変えなければならないタイミングが訪れることは間違いありません。会社のお金の動きが、一気に複雑になるからです。


創業期は、社長自身がほとんどの数字を頭の中で把握できます。今月いくら売れたか、いくら使ったか、預金残高はいくらか。しかし社員が10人、20人と増えてくると、話は変わります。売掛金の回収タイミング、外注費の支払い、社会保険料、賞与、設備投資、借入金の返済――これらが毎月複雑に絡み合い、「預金残高があるから大丈夫」という感覚では経営できなくなります。


社長「うちも似たような感じがあります・・・。」


近藤 実際にご相談いただいたある建設業の社長も、決算上は黒字が続いているのに、毎年この時期になると資金繰りに追われる、とおっしゃっていました。原因を一緒に確認すると、完成工事未収入金の増加と、外注費の支払サイトのズレが重なっていたことが分かりました。


売上が増えれば売掛金も増えます。仕事が増えれば人も採用します。会社が成長するほど、お金は利益以外のところにも使われるようになる。それにもかかわらず「今年はいくら利益が出そうか」だけを見ていると、資金繰りとのズレが少しずつ大きくなっていきます。


社長「試算表は毎月もらってるんですけど、正直あまり見方が分かっていなくて……。」


近藤 それも非常によくあるお話です。数字は届いているけれど、その数字を見て何を判断すればいいのか分からない。結局は預金残高だけを見ながら経営してしまう。年商1億円前後の会社では、決して珍しいことではありません。


本来、試算表は「過去を確認するため」だけの資料ではありません。来月、半年後、1年後の経営判断をするための資料です。利益率が少しずつ下がっていないか。人件費の増え方は売上の伸びを上回っていないか。借入金の返済負担は適正か。売掛金の回収が遅くなっていないか。こうした変化を早めに見つけられれば、大きな問題になる前に手を打てます。


年商1億円の壁とは、売上の壁ではなく、「感覚で経営する限界」が訪れるタイミングです。社長の経験や勘はもちろん大切ですが、会社が成長するほど、それだけでは判断できないことが増えていく。「数字を見る経営」から「数字で意思決定する経営」へ変われるかどうかが、次のステージへの分かれ道になります。


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第3章 年商3億円の壁 ― 社長一人では会社は伸びない


社長「社員も増えて、部署も分かれてきました。でも結局、最後は自分が全部判断しないと決まらないんですよね・・・。」


近藤 それが、年商3億円前後の会社に共通する壁です。今度の壁は、お金ではなく組織なんです。


社員数が20〜30人規模になる会社も少なくありません。部署ができ、管理職が生まれ、社長が現場を見る時間も減っていきます。ところが、社長の仕事は変わっていない――これが、多くの会社で起こることです。


営業の最終判断も社長。採用も社長。見積もりも値引きも設備投資も銀行対応も社長。重要な意思決定が、すべて一人に集まっています。本人は「責任を持って判断している」と思っていますが、会社から見ると社長がボトルネックになっている状態とも言えます。


社長「言われてみると、自分が返事するまで何も進まない案件がたくさんあります。」


近藤 この段階で必要になるのが、「管理するための数字」です。年商1億円までは会社全体の利益だけでも経営できたかもしれません。しかし3億円を超えると、それでは足りなくなります。どの商品が利益を生み出しているのか。どの部署が利益率を下げているのか。どのお客様との取引が会社にとって価値が高いのか。こうした情報が見えなければ、正しい経営判断はできません。


ここで役立つのが管理会計です。難しく聞こえますが、特別なことではありません。経営者が意思決定しやすい形で数字を整理することです。部門別損益、商品別利益、案件別利益――こうした数字を見ながら経営する会社ほど、成長のスピードが安定します。


もう一つ重要なのがKPIです。売上だけを目標にしていると、問題が見えません。利益率、労働分配率、在庫回転率、売掛金回収期間。会社の状態を表す数字を定点観測することで、少しずつ悪くなっている変化に気づけます。病気と同じで、早く気づけば対処できますが、気づかなければ利益が出なくなってから慌てることになります。


年商3億円の壁とは、社長が頑張る会社から、仕組みで成長する会社へ変われるかどうかの分岐点です。


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第4章 年商5億円が見えてきた会社に必要な財務体制


社長「正直、売上を伸ばすこと自体にはあまり不安がないんです。ただ、この先何にお金を使っていけばいいのか、迷うことが増えました。」


近藤 それは、会社が次のステージに近づいている証拠だと思います。年商5億円が見えてくる頃になると、会社の価値を決めるのは「いくら売ったか」ではなく、「利益をどう使うか」に変わっていきます。


設備投資に回すのか。人材採用に使うのか。借入金を返済するのか。内部留保を厚くするのか。新規事業へ投資するのか。経営者は、限られた資金をどこへ配分するかという判断を、日々迫られるようになります。


社長「まさにそこで悩んでいます。」


近藤 そこで重要になるのが財務戦略です。「財務」と聞くと銀行対応をイメージされる方も多いかもしれません。それも財務の一部ではありますが、本来の財務とは、会社のお金をどこに配分し、会社の価値をどう高めていくかを考えることです。


今なら設備投資を優先すべきか。自己資本比率を高めるべきか。借入を活用して成長を加速させるべきか。配当を出すべきか。役員報酬を見直すべきか。税金だけを見ても、利益だけを見ても、キャッシュフローだけを見ても答えは出ません。会社全体を見渡した上での意思決定が求められます。


年商5億円を超えて伸び続ける会社に共通しているのは、「お金が余ったら考える」のではなく、「利益が出る前から使い道を設計している」ことです。利益をどう残すか、どう使うか、何に投資するか――これを経営戦略として考えている会社ほど、安定して成長を続けています。


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第5章 成長ステージが変われば、税理士に求める役割も変わる


社長「税理士さんって、申告書を作ってくれる人、というイメージがずっとありました。」


近藤 創業当初はそれで十分なんです。申告を間違えないこと。節税のアドバイスを受けること。税務調査に対応してもらうこと。これらは今でも重要な役割です。


ただ、年商1億円を超え、5億円を目指す会社になると、それだけでは十分ではなくなります。経営者が日々向き合っているのは、「この設備投資は今するべきか」「人を採用しても資金繰りは大丈夫か」「利益を内部留保すべきか、役員報酬を増やすべきか」「借入を返済するべきか、次の投資に使うべきか」といった経営判断そのものです。その判断には、税務だけでなく、財務やキャッシュフロー、銀行との関係、将来の事業計画までが関わってきます。


社長「たしかに、今の税理士さんにそこまで相談したことはないかもしれません。」


近藤 会社の成長ステージが変われば、税理士に期待する役割も自然と変わっていきます。税金を計算するだけの存在ではなく、数字をもとに経営判断を支える存在。そうしたパートナーがいることで、経営者はより大きな意思決定に集中できるようになります。


会社が成長するということは、経営者一人で抱える課題が増えるということでもあります。だからこそ、一緒に会社の未来を考えられる専門家の存在は、会社が小さいときよりもむしろ、これからの方が重要になっていきます。


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まとめ


年商1億円、3億円、5億円。それぞれのステージには、確かに「壁」があります。しかし、その壁は売上の壁ではありません。社長の役割が変わるタイミングであり、経営のやり方を変えるタイミングです。


営業中心の経営から、数字で意思決定する経営へ。社長一人で支える会社から、仕組みで成長する会社へ。利益を追いかける経営から、利益の使い方を設計する経営へ。その変化に対応できた会社ほど、次のステージへ進んでいきます。


この「年商1億から5億へ」シリーズでは、今回ご紹介した考え方を土台に、資金戦略、数字の見方、利益の使い方、そして将来を見据えた財務戦略まで、一つずつ詳しく解説していきます。まずは、ご自身の会社が今どのステージにいるのか、そして次のステージへ進むために何を変えるべきなのかを考えるきっかけになれば幸いです。


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よくあるご質問


Q. 年商1億円を超えていませんが、この記事は参考になりますか?

A. なります。壁が訪れる規模は業種や事業構造によって前後します。売上規模そのものより、「社長一人の感覚で経営できているか」という視点で読んでいただくと、規模に関わらず当てはまる部分が多いはずです。


Q. 管理会計は税理士に依頼しないと導入できませんか?

A. 社内で取り組むことも可能です。ただし、部門別・商品別の損益区分の設計や、KPIの選び方には会計の知識が必要になる場面が多く、最初の設計だけでも税理士と一緒に進めると、その後の運用がスムーズになるケースが多いです。


Q. 財務戦略の相談は、顧問契約をしていないとできませんか?

A. 事務所によって対応は異なりますが、当事務所では単発のご相談も承っています。まずは今の会社の状況をお伺いした上で、どのような形でお手伝いできるかをご提案します。


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