人が増えるほど利益が残らない理由|組織拡大期の固定費コントロール
- 近藤 祐輔

- 5 日前
- 読了時間: 6分
人が増えるほど利益が残らなくなる理由
― 組織拡大期に経営者が本当に見るべき数字とは
「年商1億から5億へ」シリーズ 第2回
はじめに
社長「社員は増えたし、売上も右肩上がりなんです。以前より会社らしくなってきた実感もあります。それなのに、利益は思ったほど残らないし、資金繰りにも相変わらず気を遣う。何より、自分は前より忙しくなっている気がして・・・。」
近藤 一見不思議に感じるかもしれませんが、これは成長企業では珍しいことではありません。むしろ、多くの会社が同じ道を通ります。
会社が成長すると、人が増えます。人が増えると、売上だけでなく「固定費」も増えます。そして固定費は、一度増えるとなかなか減らせません。だからこそ、年商1億円を超えた会社では、「売上を伸ばすこと」以上に「固定費をどうコントロールするか」が重要な経営課題になっていきます。
今回は、人が増えるほど利益が残らなくなる理由と、組織拡大期に経営者が本当に見るべき数字について考えてみます。
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第1章 売上が伸びても利益が増えない会社の共通点
近藤 創業期は、とてもシンプルです。仕事を取る、売上が増える、利益も増える。この流れが比較的素直に成り立ちます。
社長「はい、うちも最初はそうでした。」
近藤 ところが、会社が成長してくると、この関係が少しずつ崩れてきます。仕事が増えたから人を採用する。人が増えたから管理職が必要になる。管理部門も強化する。オフィスも広くする。システムも導入する。こうした投資は、成長していく会社にとって必要なものです。問題は、「どこまで増やしていいのか」を判断できなくなることなんです。
社長「うちも売上は前年より2割ほど伸びたんですが、利益はほとんど増えていなくて・・・。これは何がまずいんでしょうか。」
近藤 それは、売上が悪いのではなく、固定費の増え方が会社の成長スピードを上回っている可能性があります。
実際にご相談いただいたある卸売業の会社では、2年間で社員数が1.5倍になったものの、売上の伸びは1.2倍にとどまっていました。人を増やせば売上も伸びるだろう、という前提で採用を進めた結果、利益率が徐々に下がっていたケースです。原因を一緒に確認すると、増員のタイミングと、実際に売上として成果が出るまでのタイムラグを見込んでいなかったことが分かりました。
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第2章 人件費は「多い」「少ない」ではなく「適切か」で考える
社長「正直、人件費が高い気がするとは感じています。でも、どう判断すればいいのか分からなくて。」
近藤 そのご相談は本当によくいただきます。ただ、人件費は金額だけで判断できるものではありません。
例えば、人件費が前年比で2,000万円増えていても、それ以上に利益が増えているのであれば問題はありません。反対に、人件費はあまり増えていなくても、利益率が下がり続けているのであれば改善が必要です。大切なのは、「いくら払っているか」ではなく、「その人件費でどれだけの利益を生み出せているか」なんです。
社長「なるほど・・・。それを判断する基準のようなものはあるんですか?」
近藤 そこで参考になるのが、労働分配率です。会社が生み出した付加価値のうち、どれくらいを人件費として配分しているかを見る指標です。
もちろん、業種によって適正水準は異なりますから、他社の数字とだけ比べることには意味がありません。重要なのは、自社の推移を見ることです。利益率は変わっていないか。売上の伸びに対して人件費は増えすぎていないか。こうした変化を継続的に確認することで、早い段階で手を打てるようになります。
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第3章 採用は「できるか」ではなく「今すべきか」
社長「人手不足が続いているので、採用できるタイミングでは確保しておきたい、という気持ちが正直あります。」
近藤 その気持ちはよく分かります。採用できること自体が貴重な時代ですから。ただ、経営として考えたときには、もう一つ視点が必要です。「今、この採用をしても会社は利益を維持できるか」という視点です。
採用は未来への投資です。だから短期的には利益を圧迫することもあります。問題は、その投資が計画的かどうかなんです。
「忙しいから採る」「応募が来たから採る」ではなく、「この売上計画なら何人必要か」「利益率を維持するには何人まで増やせるか」。そんな視点で採用を考えられる会社ほど、成長が安定します。
社長「言われてみると、うちは『応募が来たから』で決めていた採用が多かったかもしれません。」
近藤 それ自体が悪いわけではありません。ただ、その判断を感覚だけに頼らず、数字で裏付けられるようにしておくと、後から利益率が崩れたときに原因を特定しやすくなります。
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第4章 社長が見るべきなのは「売上」ではなく「利益を生む仕組み」
近藤 年商3億円、5億円と成長していく会社を見ていると、共通点があります。社長が売上だけを見ていないんです。
どの部署が利益を生んでいるのか。どの商品が利益率を押し上げているのか。採用した社員がどれくらいの期間で利益に貢献するようになるのか。こうした数字を見ながら経営しています。つまり、「利益は結果」と考えるのではなく、「利益が生まれる仕組み」そのものを管理しているんです。
会社の規模が大きくなるほど、利益は偶然では残りません。数字を見て、仕組みを整え、改善を積み重ねた会社だけが、利益を残せるようになっていきます。
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まとめ
会社が成長し、人が増えること自体は喜ばしいことです。しかし、人が増えれば利益も増えるとは限りません。むしろ、組織が大きくなるほど固定費は増え、経営の難易度は上がっていきます。
だからこそ、年商1億円を超えた経営者には、「売上を見る経営」から「利益を生む仕組みを見る経営」への転換が求められます。
次回は、多くの経営者が悩む「値上げ」について取り上げます。「値上げできない会社」がなぜ利益を失っていくのか。値上げを経営判断としてどう考えるべきかを、一緒に考えていきます。
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よくあるご質問
Q. 労働分配率は具体的にどう計算すればいいですか?
A. 一般的には「人件費 ÷ 付加価値(粗利)× 100」で算出します。業種や事業構造によって計算対象に含める費用項目が変わる場合もあるため、正確に把握したい場合は一度専門家と一緒に自社の数字を整理することをおすすめします。
Q. 適正な労働分配率の目安はありますか?
A. 業種によって大きく異なるため、一律の目安を当てはめることはあまり意味がありません。それよりも、自社の過去数年の推移を追い、数値が悪化傾向にないかを確認することの方が実務的に有効です。
Q. 採用計画は誰と一緒に作ればいいですか?
A. 人事や現場責任者だけでなく、資金繰りや利益率への影響を見られる立場の人(税理士など)を交えて作ることをおすすめします。採用の是非を、感覚ではなく数字で検討できるようになります。
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