利益は結果、キャッシュフローは意思決定|経営者が見るべき「会社のお金」
- 近藤 祐輔

- 3 分前
- 読了時間: 8分
利益は結果、キャッシュフローは意思決定
― 経営者が本当に見るべき「会社のお金」とは
「年商1億から5億へ」シリーズ 第8回
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
はじめに
社長「試算表を見ると黒字です。売上も前年より増えていますし、税金もそれなりに払っています。それなのに、銀行口座を見ると想像していたほどお金が増えていなくて……。」
近藤 そのお話、本当によくお聞きします。むしろ、売上が伸びる前より資金繰りが苦しく感じる、という経営者も少なくありません。
社長「決算書はちゃんと黒字なんですけどね。何がおかしいんでしょうか。」
近藤 おかしくはありません。利益とキャッシュは、そもそも同じものではないんです。そして会社が成長するほど、この二つのズレは大きくなります。年商1億円から5億円を目指す過程では、人を採用し、設備に投資し、取引額も大きくなる。売上が増えること自体が、先にお金を必要とする原因になることもあります。
今回は、利益とキャッシュフローの違いから、経営者が会社のお金をどう見ればよいのかを考えてみます。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
第1章 利益が出ていても、お金が増えるとは限らない
近藤 例えば、3月に1,000万円の仕事をしたとします。会計上は3月の売上です。しかし、取引先から実際に入金されるのが5月なら、3月時点では1円もお金は入ってきません。その一方で、仕事をするための外注費や給与は先に支払っているかもしれません。利益は出ているのに、お金は先に出ていく、ということが起こるんです。
社長「うちも規模が小さいうちはあまり気にならなかったんですが、最近ズレを感じることが増えました。」
近藤 それは自然なことです。会社の規模が小さいうちは、このズレもそれほど大きくありません。しかし、売上が1億円、3億円、5億円と増えていけば、同じ1か月、2か月のズレでも金額は大きくなります。売上が増えているのに資金繰りが苦しくなる。一見矛盾しているようですが、成長企業ではむしろ起こりやすい現象です。
社長「『黒字倒産』という言葉も聞いたことがありますが、うちのような普通の会社にも関係ある話なんですか?」
近藤 はっきり言います。特別な会社だけに起こる話ではありません。売掛金が増える、在庫が増える、設備投資をする、借入金を返済する、税金を支払う。どれも会社経営では当たり前のことですが、損益計算書の利益だけを見ていても分かりにくいものばかりです。借入金を1,000万円返済しても元本部分は経費になりませんし、3,000万円の機械を現金で購入すれば、利益計算とは別に3,000万円がその場で出ていきます。利益とキャッシュが違うというのは、こういうことです。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
第2章 成長すると「運転資金」が増えていく
近藤 特に成長企業で注意したいのが、運転資金です。売上が増えると、通常は売掛金も増えます。商品を扱う会社なら、仕入や在庫も増えるでしょう。
社長「売上が増えるのは良いことのはずですが、それが資金繰りを苦しくすることもあるということですか。」
近藤 その通りです。毎月2,000万円を売り上げていた会社が、毎月3,000万円売るようになったとします。素晴らしい成長です。しかし、売上代金の回収が2か月後なら、売掛金も大きくなります。その間にも給与や仕入代金、外注費は支払わなければなりません。会社が成長するために、先にお金が必要になるんです。
実際にご相談いただいたある小売業の会社では、繁忙期に向けて売上を伸ばそうと仕入を積極的に増やした結果、在庫と売掛金が同時に膨らみ、決算は増収増益にもかかわらず、繁忙期の真っ只中に手元資金が一時的に枯渇しかけたことがありました。「売上が増えているから大丈夫」という判断だけでは、この資金需要は見えてきません。
社長「うちも来期は積極的に売上を伸ばす計画なので、他人事じゃないですね・・・。」
近藤 だからこそ、売上計画を作るのであれば、その裏側にある資金計画も同時に考える必要があります。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
第3章 経営者が見るべき数字①:手元資金
社長「では、具体的にはどの数字を見ればいいんでしょうか。」
近藤 まず確認したいのが、手元資金です。「銀行口座にいくらあるか」だけでなく、今の現預金で会社を何か月維持できるか、という視点で考えます。毎月必ず出ていく給与、社会保険料、家賃、外注費、借入返済などを把握し、それに対してどれくらいの資金を持っているかを確認するんです。
社長「何か月分あれば安心、という目安はあるんですか?」
近藤 業種や事業構造によって変わるので一律には言えませんが、十分な手元資金があれば、多少売上が落ちても慌てる必要はありません。取引先からの入金が遅れても対応できますし、何より、新しい投資のチャンスが来たときに動くことができます。手元資金は、単なる「余っているお金」ではなく、会社に時間と選択肢を与えるお金です。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
第4章 経営者が見るべき数字②:売掛金と在庫
近藤 次に見たいのが、売掛金と在庫です。売上が増えている会社ほど、ここに多くのお金が眠っていることがあります。
社長「売掛金が増えるのは、売上が伸びていれば当然のことじゃないんですか?」
近藤 伸び方によります。例えば、売上が20%伸びた一方で、売掛金が50%増えているとします。これは本当に順調と言えるでしょうか。回収条件が悪くなっているのかもしれませんし、入金が遅れている取引先があるのかもしれません。在庫も同じで、売上を伸ばすために増やしたはずが、それ以上のペースで積み上がっていれば、会社のお金は商品に変わったまま戻ってきません。
社長「損益計算書の利益だけを見ていても、その変化には気づけないですね。」
近藤 その通りです。売上を見るなら売掛金も見る。粗利益を見るなら在庫も見る。利益の裏側で、お金がどこに滞留しているのかを見ることが重要です。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
第5章 経営者が見るべき数字③:これからのお金
近藤 そして、最も重要なのが「これからのお金」です。今、預金が5,000万円あるとします。それだけでは、資金繰りが安全かどうかは分かりません。
社長「預金残高だけでは判断できない、ということですか?」
近藤 できません。来月に賞与を払う、再来月に法人税と消費税を払う、半年後に設備投資を予定している、借入金の返済もある、新たに3人採用する予定もある。そこまで考えれば、5,000万円という預金残高の見え方はまったく変わります。だからこそ、経営者には資金繰り表が必要です。
社長「資金繰り表というと、資金が苦しい会社が作るもの、というイメージがあります。」
近藤 それは誤解です。むしろ逆だと私は考えています。成長する会社ほど、未来のキャッシュを見ておく必要があります。資金が不足してから対策を考えるためではなく、半年後、1年後のお金が見えているからこそ、今、安心して投資するためのものです。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
第6章 利益計画と資金繰りはセットで考える
社長 「来期の売上と利益は計画しているんですが、資金の計画までは正直作れていません。」
近藤 多くの会社がそうです。ただ、そこで終わらせないでいただきたいんです。その売上を達成するために、いくら先にお金が必要なのか。人を何人採用するのか、在庫はいくら増えるのか、設備投資はいくら必要なのか、税金はいくら支払うのか、借入金はいくら返済するのか。ここまで考えて、初めて会社の成長に必要なお金が見えてきます。
社長「利益計画と資金計画は、別々に考えるものだと思っていました。」
近藤 本来は別々のものではありません。「どれだけ儲けるか」と「そのためにいくらお金が必要か」は、セットで考えるものです。利益は、会社がこれまで行ってきた活動の結果を表すものですが、経営者が日々行っているのは、未来に対する意思決定です。その判断が、半年後、1年後の会社のお金にどう影響するのか。そこまで見て、初めて経営判断と呼べます。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
まとめ
利益が出ているから、会社のお金も増えている。必ずしもそうではありません。売掛金、在庫、設備投資、借入返済、税金――会社のお金は、損益計算書だけでは見えないところでも動いています。特に成長企業では、売上が伸びることそのものが大きな資金需要を生むことがあります。
だからこそ経営者には、「いくら利益が出るのか」だけでなく、「その結果、いくらキャッシュが残るのか」を見る視点が必要です。手元資金を見る。売掛金や在庫を見る。そして、半年後、1年後の資金繰りを見る。未来のお金が見えるようになると、経営は変わります。資金がなくなってから動くのではなく、なくなる前に手を打てる。資金に余裕があると分かれば、自信を持って投資できる。
キャッシュフローを見る目的は、会社を守ることだけではありません。会社が次の一手を打つための選択肢を持つこと。それこそが、成長企業の経営者がキャッシュフローを見る本当の意味なのだと思います。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
よくあるご質問
Q. 資金繰り表は、どのくらい先まで作ればいいですか?
A. 目的によって変わりますが、まずは6か月から1年先までを目安に作成し、実績に応じて毎月更新していく方法が実務的です。精度よりも、更新し続けることの方が重要です。
Q. 手元資金の目安は、月商の何か月分と考えればいいですか?
A. 業種や資金繰りサイクルによって適正水準は異なります。固定費や借入返済の状況を踏まえて、自社にとって安心できる水準を個別に検討することをおすすめします。
Q. 資金繰り表の作成は、税理士に依頼できますか?
A. 可能です。試算表のデータをもとに作成できるため、既存の会計データを活用しながら、御社の事業サイクルに合わせた形で一緒に整えていくことができます。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
【顧問税理士にこんなお悩みはありませんか?】
税金の話はしてくれるが、財務・資金の話をしてくれない
銀行との付き合い方や融資対応についても相談したい
代表税理士と話したことがない
担当者が頻繁に変わり、毎回一から説明している
コミュニケーションが取りにくく、経営に関する相談ができない
近藤祐輔税理士事務所では、税務だけでなく財務・資金戦略・銀行対応まで、代表税理士が直接担当します。
初回面談(30分)では、現在の財務・資金繰りの状況をお聞きし、改善の糸口をお伝えします。無料・秘密厳守。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------



コメント