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設備投資の判断基準|「儲かるかどうか」を数字で見極める投資対効果の考え方

執筆者の写真: 近藤 祐輔
近藤 祐輔
7 日前
読了時間: 9分

設備投資の判断基準

― 「儲かるかどうか」を数字で見極める投資対効果の考え方

「年商1億から5億へ」シリーズ 第12回


はじめに


社長「この設備、入れた方がいいと思いますか。」


近藤 よくご相談いただく質問です。ただ、まず確認させてください。判断の基準として、何を見ていますか。


社長「正直、『何となく必要そうだから』とか、『今期は利益が出ているから』というのが大きいです。」


近藤 断言します。年商1億円を超え、投資金額が500万円、1,000万円、場合によっては数千万円という規模になってくると、その基準では危険です。設備投資で本当に重要なのは、「いくら税金が減るか」ではなく、「投資したお金を何年で回収できるのか」という視点です。


今回は、設備投資を感覚ではなく数字で判断するための考え方についてお話しします。


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第1章 「必要な設備」と「儲かる設備」は違う


近藤 まず分けて考えたいのが、「事業を続けるために必要な投資」と「利益を増やすための投資」です。古くなった機械が故障寸前で交換しなければ事業を続けられない、法律や安全基準への対応が必要、といった投資は、単純な採算だけでは判断できません。


社長「うちが今考えているのは、生産能力を増やすための新しい機械なんですが、これはどちらに当たるんでしょうか。」


近藤 それは後者、「利益を増やすための投資」に当たります。この場合は、その投資によって会社の利益がどれだけ増えるのかを、きちんと数字で考える必要があります。


社長「逆に、必要な投資と利益のための投資が混ざっているケースもありますよね。」


近藤 あります。例えば老朽化した設備を更新するついでに能力を増強する、というようなケースです。その場合は、「更新に最低限必要な部分」と「増強によって利益を生む部分」を分けて考えると、投資額に対する採算判断がしやすくなります。


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第2章 見るべきは売上ではなく「増える利益」、そして回収期間


社長「設備会社の営業からは、『これを入れれば年間2,000万円売上が増えます』と言われているんですが、それだけで判断していいんでしょうか。」


近藤 それだけでは判断できません。重要なのは、その2,000万円の売上から、実際にいくら利益が増えるのかです。例えば1,000万円の設備を導入して年間2,000万円の売上増加が見込めるとしても、そのために材料費800万円、外注費300万円、追加人件費200万円、その他変動費100万円が必要だとしたら、追加で生まれる利益は600万円です。


社長「じゃあ、投資額1,000万円に対して年間600万円の利益なら、悪くない投資ということですか。」


近藤 単純計算では、1,000万円÷600万円で約1.7年で投資額を回収できることになります。これが回収期間という考え方です。投資額÷年間で増えるキャッシュ、というシンプルな式で計算できます。「何年以内なら必ず投資すべき」という一律の基準はありませんが、この数字を出すだけで、設備投資の見え方は大きく変わります。


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第3章 「利益」ではなく「税引後キャッシュ」で回収を考える


社長「さっきの1.7年という計算、これで最終的な答えということでいいんでしょうか。」


近藤 まだ正確ではありません。ここが設備投資で最も見落とされやすいポイントです。設備を購入すると、購入時に大きな資金が出ていきますが、会計上は原則としてその全額がその年に経費になるわけではなく、耐用年数に応じて減価償却されます。つまり、お金が出ていくタイミングと、費用として計上されるタイミングがズレるんです。


社長「利益で計算するのと、実際のお金の動きで計算するのとでは、結果が変わってくるということですか。」


近藤 はい。具体的な数字で見てみましょう。1,500万円の設備で、年間売上が1,500万円増え、追加でかかる材料費・外注費・人件費などが合計900万円、減価償却費が年間300万円だとします。


金額

売上増加

1,500万円

追加支出

▲900万円

減価償却費

▲300万円

税引前利益増加

300万円

法人税等(税率30%と仮定)

▲90万円

税引後利益

210万円

減価償却費を戻す

+300万円

税引後キャッシュ

510万円

減価償却費は会計上の費用ですが、その年に実際にお金が出ていくわけではないので、税引後利益に減価償却費を足し戻すと、この投資が生み出す年間の税引後キャッシュは510万円になります。


社長「1,500万円をこの510万円で割ればいいんですか。」


近藤 その通りです。1,500万円÷510万円で約2.9年、つまり約3年で回収できる計算になります。税金を考えずに利益だけで計算した場合より、少し回収期間が長くなることが分かります。会社が最終的に使えるのは、税金を払う前の利益ではなく、税金を支払った後に残るキャッシュです。


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第4章 借入で投資するなら「返済後キャッシュ」まで見る


社長「この設備、全額自己資金ではなく、一部を銀行から借りようと思っているんですが、それでも同じ計算でいいんでしょうか。」


近藤 もう一段階、確認が必要です。先ほどの税引後キャッシュ510万円がすべて自由に使えるわけではありません。例えば借入金の年間元本返済額が300万円だとすると、510万円から300万円を差し引いた210万円が、実際に会社の手元に増える資金になります。


社長「元本返済は経費にならないんでしたよね。」


近藤 その通りです。利益は出ている、税金も払っている、それでも借入元本を返済することで預金が減っていく。「利益は出ているのに、なぜかお金が増えない」という現象は、設備投資でもよく起こります。だからこそ、利益→税引後キャッシュ→借入返済後キャッシュ、という3段階で見ることが重要です。


実際にご相談いただいたある運送業の会社では、車両の入れ替えを借入で行った際、金利上昇のタイミングと重なり、当初のシミュレーションより返済後に残るキャッシュがかなり少なくなっていました。投資判断の時点で金利上昇のシナリオまで織り込んでいなかったことが原因でした。


社長「金利が上がると、投資の採算ラインそのものが変わってくるということですね。」


近藤 その通りです。借入額が数千万円、1億円と大きくなれば、金利1%の差でも会社に残るキャッシュへの影響は無視できません。「借りられるから買う」ではなく、「金利を払ってでも投資する価値があるか」という視点が、これからより重要になります。


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第5章 「投資判断」と「節税判断」を混ぜない


社長「実は、今期利益が出そうなので、『どうせ税金を払うなら設備を買った方がいいのでは』という話も社内で出ています。」


近藤 そこは、はっきり分けて考えていただきたいところです。まず考えるべきなのは、「この設備は、税金が一円も安くならなかったとしても買う価値があるのか」です。500万円の設備を購入しても、500万円の税金がなくなるわけではありません。仮に全額を当期の損金にできたとしても、税率30%なら減る税金は約150万円。会社から出ていくお金は500万円ですから、差し引き350万円のキャッシュが減ります。

社長「150万円の税金を減らすために、必要性の低い設備に500万円使ってしまう、ということですね。」


近藤 まさにそこが危険なポイントです。逆に、本当に収益性の高い投資であれば、節税効果がほとんどなくても実行する価値があります。税額控除や特別償却、補助金といった制度は、投資そのものを儲かる設備に変えるものではなく、もともと行う価値のある投資の回収を早める役割だと考えてください。まず投資として採算が合うかを判断し、そのうえで使える制度を確認する。補助金が半分出るとしても、不要な設備であれば、残り半分は無駄な支出です。この順番を逆にしないことが重要です。


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第6章 想定通りいかなかった場合まで数字にする


社長「ここまでの計算は、計画通りに売上が増えた場合の話ですよね。実際はそう上手くいかないこともあると思うんですが。」


近藤 その視点は非常に重要です。設備投資の計画では、どうしても楽観的な数字を使いたくなります。だからこそ、計画どおり売上が増えた場合、計画の80%だった場合、50%だった場合、それぞれで利益と資金繰りを確認してください。特に確認したいのは、想定より売れなかったとしても、会社全体として耐えられるかどうかです。


社長「投資を決める前に、他に確認しておくべきことはありますか。」


近藤 投資総額(本体だけでなく設置費用や工事費まで含めて)、年間で増える利益・キャッシュ、回収期間、借入返済後にキャッシュが残るか、計画を下回った場合でも耐えられるか。この5つを数字にしてみてください。そして、投資はそこで終わりではありません。半年後、1年後に、計画と実績を比較して答え合わせをする。この習慣が、次の投資判断の精度を高めていきます。


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まとめ


設備投資は、会社を成長させるために必要です。だからこそ、「必要そうだから」「利益が出ているから」「銀行が貸してくれるから」「補助金が出るから」「節税になるから」だけで決めるべきではありません。


その投資によっていくら利益が増えるのか。いくらキャッシュが増えるのか。何年で回収できるのか。借入金を無理なく返済できるのか。そして、計画どおりにいかなかった場合でも会社は耐えられるのか。設備投資は大きなお金を使う意思決定だからこそ、経営者としての「これは必要だ」という感覚を、数字で確かめる。そして投資した後にも数字で検証する。「いくら使ったか」ではなく、「そのお金がいくらの利益とキャッシュを生み出したか」。この視点を持つことが、年商1億円から5億円へ成長していく会社の設備投資では重要なのではないでしょうか。


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よくあるご質問


Q. 減価償却費の計算は自分でもできますか?

A. 設備の種類ごとに定められた耐用年数と償却方法を使えば計算は可能ですが、資産区分の判定や特例の適用可否など専門的な判断が必要な場面も多いため、投資額が大きい場合は事前に確認することをおすすめします。


Q. リースと購入、どちらで投資すべきか判断基準はありますか?

A. 資金繰りへの影響、税務上の取り扱い、将来の資産計上の要否など、考慮すべき点が複数あります。投資の性質や会社の財務状況によって有利な形が変わるため、個別に比較検討することをおすすめします。


Q. 補助金の申請は、投資を決める前と後、どちらのタイミングで動けばいいですか?

A. 多くの補助金は、交付決定前に発注・契約をしてしまうと対象外になります。投資として実行する意思が固まった段階で、早めに利用できる制度を確認することが重要です。


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