top of page

役員報酬・配当・内部留保|経営者の手取りと会社の成長を両立する利益配分

執筆者の写真: 近藤 祐輔
近藤 祐輔
5 分前
読了時間: 9分

役員報酬・配当・内部留保

― 経営者の手取りと会社の成長を両立する「利益配分」の考え方

「年商1億から5億へ」シリーズ 第10回


はじめに


社長「役員報酬はいくらにするのが一番得ですか。毎年、税金が一番少なくなる金額で決めてきたんですが。」


近藤 税金を考えること自体は間違いではありません。ただ、年商1億円を超え、3億円、5億円と会社を成長させていくのであれば、税金だけで役員報酬を決めることには注意が必要です。


社長「税金以外に、何を考えればいいんでしょうか。」


近藤 会社が生み出した利益には、大きく3つの行き先があります。役員報酬として経営者が受け取る。配当として株主が受け取る。そして会社に内部留保として残す。どれを選ぶかによって、経営者個人の手取りだけでなく、会社の税負担、手元資金、自己資本、銀行評価、将来の投資余力まで変わります。つまり、利益配分は単なる節税の問題ではなく、会社が稼いだお金を経営者個人と会社のどちらに、どれだけ残すのかという経営判断なんです。


今回は、役員報酬・配当・内部留保という3つの選択肢から、成長企業の利益配分について考えてみます。


---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


第1章 会社の利益は「誰のお金」なのか


社長「うちはオーナー企業なので、正直、会社のお金も自分のお金も、結局は同じような感覚になってしまいます。」


近藤 そのお気持ちはよく分かりますが、実際にはまったく違います。会社に1,000万円あることと、経営者個人が1,000万円持っていることは同じではありません。会社のお金は、仕入代金を支払い、給与を支払い、設備投資を行い、事業を成長させるための資金です。一方、個人のお金は生活費や住宅購入、教育費、老後資金などに使えます。


社長「言われてみれば、会社から個人にお金を移すには、役員報酬や配当という手続きが必要ですもんね。」


近藤 その通りです。だからこそ、会社が利益を出したときには「いくら稼いだか」だけでなく、「その利益をどこに残すのか」を考える必要があるんです。


---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


第2章 役員報酬を増やせば、会社の利益は減る


近藤 一番分かりやすいのが役員報酬です。役員報酬は一定の要件を満たせば会社の損金になるので、増やせばその分会社の利益は減り、法人税等の負担も小さくなります。一方で、経営者個人には給与所得として所得税・住民税がかかり、原則として社会保険料の負担も増えます。


社長「じゃあ、法人と個人、両方の税金を全部計算して、一番税負担が少なくなる金額にすればいいということですか。」


近藤 それも一つの考え方ですが、成長企業ではそれだけでは足りません。断言します。税金だけを考えて役員報酬を大きく取った結果、会社にほとんど利益が残らなくなったらどうなるでしょうか。純資産もなかなか増えず、手元資金も厚くなりにくい。銀行から見れば「売上は伸びているが、利益をほとんど蓄積できていない会社」に見えるかもしれません。


社長「うちも正直、税金の計算だけで毎年の役員報酬を決めていました・・・。」


近藤 それ自体が間違いというわけではありませんが、数年後に大きな設備投資や資金調達をしようとしたとき、その財務体質が影響することがあります。目の前の税金を最小化することと、会社を強くすることは、必ずしも同じではないんです。


さらに、もう一つ知っておいていただきたいことがあります。役員報酬を厚く取って会社の利益を圧縮した状態が続くと、いざ業績が悪化したときや想定外の支出が発生したときに、会社の資金が足りなくなることがあります。そのとき最終的にどうするかというと、社長個人が会社にお金を貸し付ける、という形で資金を戻すケースが少なくありません。


社長「つまり、一度個人に移したお金を、結局また会社に入れることになる、ということですか。」


近藤 その通りです。個人に移した資金を、社長が完全に自由に使えるお金だと考えてしまうと、いざというときに立ち行かなくなります。会社と個人が実質的に一体になっているのが、オーナー社長の宿命でもあるんです。だからこそ、役員報酬を決めるときには、「個人としていくら欲しいか」だけでなく、「会社が苦しくなったときに、自分がどこまで支えられるか」という視点も持っておく必要があります。


---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


第3章 内部留保は「使わずに貯めているお金」ではない


社長「内部留保って、正直『会社がお金を貯め込んでいる』という印象があるんですが。」


近藤 よくある誤解です。会計上の内部留保は、単純に銀行預金として眠っているお金を意味するわけではありません。会社が利益を出し、法人税等を支払い、その後に残った利益が純資産として積み上がっていく。その利益は、すでに設備や在庫などに使われていることもあります。


社長「じゃあ、内部留保が多いこと自体は良いことなんですか。」


近藤 重要なのは、利益を会社に残すことで会社自身の財務基盤が強くなる、という点です。自己資本が厚くなれば、多少の赤字が出ても耐えやすくなりますし、金融機関からの評価にもプラスに働きます。年商5億円を目指して会社を成長させるのであれば、内部留保は単なる「余った利益」ではなく、次の成長を支えるための原資です。


---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


第4章 配当は「会社の利益を株主へ移す」という選択肢


社長「役員報酬以外に、配当という方法もありますよね。配当の方が税金は安くなるんでしょうか。」


近藤 単純にそうとは言えません。役員報酬は一定の要件を満たせば会社の損金になりますが、配当は会社の損金にはなりません。会社が法人税等を負担した後の利益から、株主へ分配するものだからです。さらに、個人株主が配当を受け取れば、個人側でも課税関係が生じます。


社長「じゃあ、配当を使う意味はあまりないということですか。」


近藤 そうとも言い切れません。役員報酬は「経営者として働いたことへの対価」、配当は「株主として資本を持っていることに対する利益の分配」で、性質が異なります。会社に十分な利益剰余金と資金余力があり、個人側へ資産を移していく必要があるなら、配当も選択肢になります。重要なのは、役員報酬か配当かを単純な税率比較だけで決めないことです。


---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


第5章 会社にいくら残すべきか


社長「会社に利益を残すことが大切なのは分かりました。では、実際にいくら残せばいいんでしょうか。」


近藤 すべての会社に共通する正解はありません。業種によって必要な運転資金は違いますし、売掛金の回収条件や借入返済額、設備投資の有無によっても変わります。本来は資金繰り表を作って自社に必要な金額を計算すべきですが、一つの目安としては「毎月出ていく固定的な支出の何か月分を手元に持っているか」という考え方が分かりやすいです。


社長「もう少し簡単な目安があると助かります。」


近藤 簡易的には、手元資金として月商の3か月分程度を一つの目安にする方法があります。年商3億円なら平均月商2,500万円なので、目安は7,500万円程度です。ただし、これは絶対的な基準ではありません。売掛金の回収サイトが長い、特定取引先への依存度が高い、季節による売上変動が大きい、といった会社では、より厚い手元資金が必要です。


実際にご相談いただいたあるサービス業の会社では、現預金は月商3か月分を上回っていたものの、その大半が近く予定していた法人税の納付と設備投資に充てる予定の資金でした。「預金が多いから」という理由で役員報酬を増やそうとされていたのですが、実際に自由に使える資金を整理すると、想定していたほどの余裕はないことが分かりました。


社長「預金残高だけを見ていたら、危なかったですね・・・。」


近藤 その通りです。手元資金は、会社を維持するための資金、近い将来に支出が決まっている資金、成長投資に使える資金に分けて考えてください。この区分をしないまま「預金がたくさんあるから」という理由だけで役員報酬や配当を決めてしまうのは危険です。


---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


第6章 会社に残す利益から逆算して役員報酬を決める


近藤 役員報酬を決めるとき、「自分はいくら欲しいか」から考える経営者は多いと思います。しかし、会社が成長してきたら、「今期、会社にいくら利益を残したいか」からも考えてみてください。


社長「順番を逆にする、ということですね。」


近藤 そうです。今後の設備投資や採用、M&Aの検討、借入依存度を下げたいといった経営計画があるなら、それに必要な自己資金を会社に残していく必要があります。最低限残す資金のラインを先に決め、それを超える部分について、追加投資に使うのか、借入を返済するのか、役員報酬や配当として個人に移すのかを検討する。この順番が重要です。


社長「将来、自分が引退するときのことも考えておいた方がいいんでしょうか。」


近藤 ぜひ考えておいてください。経営者が退任時に受け取る役員退職金も、利益配分の選択肢の一つです。適正な範囲であれば会社側で損金算入でき、個人側では退職所得として給与とは異なる課税の仕組みが適用されます。「今いくら取るか」だけでなく、「最終的に会社と個人にどのくらい資産を残したいか」という長期的な視点を持つことで、利益配分の考え方は大きく変わります。


---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


まとめ


会社が生み出した利益には、役員報酬・配当・内部留保という3つの行き先があります。どれか一つが正解というわけではありません。大切なのは、それぞれの税負担だけを見るのではなく、会社をどこまで成長させたいのか、会社にどれくらいの資金を残しておく必要があるのか、経営者個人にはどれくらいの資産が必要なのかを一緒に考えることです。


目の前の手取りを増やすことと、会社を強くすること。どちらか一方を選ぶ必要はありません。利益配分をきちんと設計すれば、その二つを長期的に両立させることができます。役員報酬をいくらにするか、配当を出すのか、会社にいくら残すのか。これは単なる税金の計算ではなく、会社が稼いだ利益を、これからの成長と経営者自身の人生にどう配分するかという経営判断です。


---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


よくあるご質問


Q. 役員報酬は年の途中で変更できますか?

A. 原則として、事業年度開始から3か月以内に改定する必要があり、原則として期の途中で自由に変更すると損金として認められない部分が出てきます。業績の著しい悪化などにより改定が認められるケースはありますが、変更を検討する際は税理士に事前に相談いただくのが安全です。


Q. 内部留保が多いと、税務上不利になることはありますか?

A. 一定の同族会社では、内部留保が過大と判断されると特別な課税(留保金課税)が生じる場合があります。ただし中小企業の多くは適用対象外となるケースが多いため、個別に確認することをおすすめします。


Q. 会社に残す資金の目安は、業種によってどのくらい違いますか?

A. 在庫を多く抱える業種や、売掛金の回収サイトが長い業種ほど、より厚い手元資金が必要になる傾向があります。一律の目安ではなく、自社の資金繰りの特徴を踏まえて個別に検討することが重要です。


------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

【顧問税理士にこんなお悩みはありませんか?】

  • 税金の話はしてくれるが、財務・資金の話をしてくれない

  • 銀行との付き合い方や融資対応についても相談したい

  • 代表税理士と話したことがない

  • 担当者が頻繁に変わり、毎回一から説明している

  • コミュニケーションが取りにくく、経営に関する相談ができない


近藤祐輔税理士事務所では、税務だけでなく財務・資金戦略・銀行対応まで、代表税理士が直接担当します。

初回面談(30分)では、現在の財務・資金繰りの状況をお聞きし、改善の糸口をお伝えします。無料・秘密厳守。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

コメント


近藤祐輔税理士事務所

Yusuke Kondo Tax Accounting Office

〒279-0023 千葉県浦安市高洲8丁目1番714

​TEL:050-1785-6288

©2026 近藤祐輔税理士事務所

bottom of page