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法人税の計算と決算書の関係|利益と課税所得はなぜ違うのか

  • 執筆者の写真: 近藤 祐輔
    近藤 祐輔
  • 2025年8月21日
  • 読了時間: 7分

更新日:2 日前

はじめに


「決算で利益が1,000万円だったのに、法人税が思ったより高かった・・・」


このようなギャップに疑問を持ったことはありませんか?その原因は、「会計上の利益(決算書の利益)」と「法人税の課税所得(申告書での利益)」が、異なるルールで計算されているためです。


この2つの違いを理解することは、税金の見通しを立てるだけでなく、節税と銀行評価のバランスを考える上でも重要です。

今回は社長と税理士の対話形式で、法人税の計算の流れと決算書との関係を解説します。


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1. 法人税の計算の基本構造


社長: 法人税って、決算書の利益にそのまま税率をかけるんじゃないんですか?


税理士: 違います。法人税は「課税所得 × 税率」で計算されますが、課税所得は決算書の利益をそのまま使うのではなく、税務上の調整を加えて算出されます。

計算の流れはこうです。


① 会計上の利益(決算書の当期純利益)をもとにする
   ↓
② 税務上の加算・減算を行って「課税所得」を算出
   ↓
③ 法人税率をかけて法人税額を計算
   ↓
④ 地方法人税・事業税・住民税などを加えて納税額が確定

社長: なぜ決算書の利益をそのまま使わないんですか?


税理士: 会計と税務は目的が異なるからです。

項目

会計(決算書)

税務(申告書)

目的

実態に近い経営成績の表示

公平な課税・税収確保

利用者

経営者・銀行・株主

税務署

基準

会計基準(企業会計原則)

税法(法人税法)


会計上は正しい処理でも、税務上は認められない、あるいは認められるタイミングが異なるというケースが発生します。これが「利益と課税所得のズレ」の原因です。


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2. 課税所得への調整|別表四の役割


社長: 「別表四」という言葉を聞きますが、これは何ですか?


税理士: 会計と税務のズレを調整する申告書の書類です。ここで加算・減算を行い、税務上の「課税所得」を導き出します。


よくある加算項目(課税所得に上乗せされる)

  • 交際費の損金算入限度超過額

  • 任意の引当金(税務では一部しか認められない)

  • 寄附金の損金算入限度超過額

  • 減価償却の超過部分(会計上の償却が税務基準を上回る場合)


よくある減算項目(課税所得から控除される)

  • 繰越欠損金の控除(控除上限あり)

  • 法定償却額が会計償却額より多い場合の調整

  • 受取配当金の益金不算入


社長: 経営者として別表四の内容を知っておく必要がありますか?


税理士: 細かい計算方法まで知る必要はありませんが、「どんな項目で加算・減算が起きているか」は把握しておくことをお勧めします。これを知らずに節税策を打つと、思わぬ課税所得の増加につながることがあります。


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3. 具体例|会計上の利益と課税所得の違い


社長: 具体的な数字で見せてもらえますか?


税理士: こういうケースで見てみましょう。


会計上の当期純利益:1,000万円

【加算】寄附金 100万円(全額損金不算入)   +100万円
【減算】繰越欠損金控除 400万円        -400万円
────────────────────────────────────
課税所得:700万円 → これに税率をかけて法人税額を計算

社長: 利益は1,000万円なのに、税金は700万円に対してかかるんですね。


税理士: そうです。逆のパターンもあります。会計上の利益より課税所得の方が大きくなるケースです。たとえば税務上認められない引当金を計上した場合や、交際費の損金算入限度を超えた場合は加算が生じ、決算書の利益より課税所得が大きくなります。これが「利益より法人税が高い」と感じる原因の一つです。


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4. 決算書と税務申告書の連携資料


社長: 法人税の申告ではどんな書類が使われるんですか?


税理士: 主な資料は以下の通りです。これらが整合しているかは、税務調査でも重点的にチェックされます。

資料名

役割

決算書(B/S・P/L)

会計上の利益・財政状態の把握

別表四

課税所得算出のための加減算調整

別表五(一)

利益剰余金の増減・税引後利益との整合性

別表五(二)

繰越欠損金の残高管理

勘定科目内訳明細書

経費や貸付金などの内訳開示(税務署用)



5. 銀行評価との関係


社長: 節税で課税所得を下げることは、銀行評価にどう影響しますか?


税理士: 銀行は法人税の支払い前の利益(税引前当期純利益・経常利益)をもとに、返済能力を評価しています。具体的には以下の点を見ています。

  • 本業で安定した利益が出ているか(営業利益・経常利益)

  • 課税前のキャッシュフローが返済能力を支えているか

  • 節税に偏りすぎて見かけ上の利益が下がっていないか


社長: 節税しすぎると銀行評価が下がるということですか?


税理士: そうです。会計上の利益と税務申告内容の整合性を保ちながら、銀行に対して「実態として利益が出ている会社」と示せることが重要です。節税と銀行評価はトレードオフの関係にある部分があるため、財務戦略と税務戦略を一体で設計することが理想的です。


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よくある質問(FAQ)


Q1. 会計上の利益がゼロでも法人税がかかることはありますか?

あります。会計上の利益がゼロまたは赤字でも、税務上の加算項目が多い場合は課税所得がプラスになり、法人税がかかることがあります。逆に会計上は黒字でも繰越欠損金の控除によって法人税がゼロになるケースもあります。


Q2. 繰越欠損金はいつまで使えますか?

青色申告法人は10年間(2018年4月1日以降に開始する事業年度で生じた欠損金)繰り越せます。ただし控除できる金額は当期の所得金額の一定割合(中小法人は100%)に制限されています。


Q3. 交際費はどのくらいまで損金算入できますか?

中小法人(資本金1億円以下)は、①年間800万円までの全額損金算入、または②接待飲食費の50%の損金算入、のいずれかを選択できます。どちらが有利かは交際費の金額・内訳によって異なるため、税理士と確認することをお勧めします。


Q4. 減価償却で会計と税務がズレるのはどんなケースですか?

会計上の減価償却費が税務上の限度額を超えている場合(超過償却)は加算され、課税所得が増えます。一方、会計上の償却費が税務限度額より少ない場合(過少償却)については、過去に生じた償却超過額が残っている場合に限り、その範囲内で減算が認められます。中小企業では任意償却が認められているため、この調整が生じやすいです。


Q5. 別表四の内容は経営者が自分で確認できますか?

確認できます。別表四は法人税申告書の中でも比較的わかりやすい書類で、加算・減算の項目と金額が一覧で記載されています。「どの項目でいくら調整されているか」を税理士に説明してもらいながら確認することで、自社の税務の全体像が把握できます。


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まとめ


  • 法人税は「決算書の利益 × 税率」ではなく「課税所得(税務調整後)× 税率」で計算される

  • 会計と税務は目的・基準が異なるため、利益と課税所得は一致しない

  • 別表四で加算・減算を行い、課税所得を導き出す

  • 加算の代表例:交際費超過・引当金・寄附金/減算の代表例:繰越欠損金・受取配当金の益金不算入

  • 銀行は税引前利益をもとに返済能力を評価するため、節税と銀行評価のバランスが重要


「会計」と「税務」のズレを理解することが、正しい経営判断と節税・銀行評価の両立につながります。


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