銀行が決算書で最初に見る3つの指標|融資評価のポイント
- 近藤 祐輔

- 3月18日
- 読了時間: 7分
更新日:5月12日
はじめに
「決算書は黒字ですし、売上も伸びています。なのに銀行の追加融資が思ったほど伸びないんですよね・・・」
こうした相談を受けることがよくあります。銀行は決算書のすべてを平等に見ているわけではありません。最初にチェックする重要な指標が3つあります。
今回は社長と税理士の対話形式で、銀行が融資判断で実際に何を見ているのかを解説します。
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1. 銀行が見るのは「利益」ではなく「返済できるか」
社長: うちは黒字なのに、なぜ銀行の評価が上がらないんですか?
税理士: 銀行が最初に確認するのは、営業利益でも売上でもありません。以下の3つです。
① 営業キャッシュフロー:本業で実際に現金を生み出しているか
② 自己資本比率:財務体質として倒産リスクが低いか
③ 債務償還年数:借入金を現実的な年数で返せるか
社長: 営業利益じゃないんですか?
税理士: そこが重要なポイントです。銀行が見ているのは「返済できるお金が出ているか」です。利益は会計上の数字ですが、銀行が知りたいのは実際に現金が残っているかどうかです。
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2. 営業キャッシュフロー|実際に現金を生み出しているか
社長: 営業キャッシュフローって、営業利益とどう違うんですか?
税理士: 営業利益は「会計上の利益」ですが、営業キャッシュフローは「本業で実際に生み出した現金」です。たとえばこういうケースがあります。
売上 5,000万円(売上計上済み)
うち未回収分 1,500万円(売掛金として残っている)
→ 利益は出ているが、手元現金は増えていない
売掛金が増えている・在庫が増えているという状況では、利益が出ていても現金は増えません。手元現金が不足したまま支払いが続くと、黒字であっても資金ショートが起きます。これが「黒字倒産」につながるメカニズムです。
社長: 銀行はなぜ営業CFを重視するんですか?
税理士: 借入金の返済は現金で行われるからです。「利益が出ている会社」ではなく「現金を持っている会社」に貸したいのが銀行の本音です。営業CFがマイナスの会社は「本業が資金を生んでいない」と判断され、融資審査が厳しくなります。
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3. 自己資本比率|倒産リスクの低さを示す指標
税理士: 次に銀行が見るのが自己資本比率です。
自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資産 × 100
水準 | 銀行の評価 |
20%未満 | 弱い・融資に慎重 |
20〜30% | 標準的 |
30%以上 | 安定・評価が高い |
50%以上 | 非常に強い |
社長: 自己資本比率を上げるには何をすればいいですか?
税理士: 毎期の利益を社内に残して利益剰余金を積み上げることが基本です。役員報酬を取りすぎている会社は利益剰余金が積み上がらず、自己資本比率が上がりません。節税で利益を圧縮しすぎることも同じ問題を引き起こします。
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4. 債務償還年数|借入金を何年で返せるか
社長: 債務償還年数って何ですか?
税理士: 銀行が最も重視する指標の一つで、「現在の借入金を実際の返済余力で何年かかって返せるか」を示します。
債務償還年数 = 借入金残高 ÷(経常利益 + 減価償却費 − 法人税等)
分母は「実際に返済に使えるキャッシュ」の概算です。経常利益から税金を引いた後、現金流出のない減価償却費を加えることで、実態に近い返済余力が算出されます。
社長: 目安はどのくらいですか?
税理士: 一般的な目安はこうです。
債務償還年数 | 銀行の評価 |
10年以内 | 健全・融資に積極的 |
10〜15年 | 許容範囲 |
15〜20年 | 要注意・条件が厳しくなる可能性 |
20年以上 | 融資が難しくなる |
社長: 具体的な計算例を見せてもらえますか?
税理士: こういうケースで見てみましょう。
借入金残高 2億円
経常利益 2,000万円
減価償却費 500万円
法人税等 600万円
返済余力:2,000万円 + 500万円 − 600万円 = 1,900万円
債務償還年数:2億円 ÷ 1,900万円 ≒ 10.5年 → 許容範囲
社長: この数字を改善するには?
税理士: 分子(借入金残高)を減らすか、分母(返済余力)を増やすかです。借入を無闇に減らすより、利益と減価償却費を増やして分母を大きくする方が、財務戦略としては現実的なケースが多いです。
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5. 3指標を把握することで何が変わるか
社長: この3つを理解すると、銀行対応がどう変わりますか?
税理士: 大きく3つ変わります。
① 融資交渉で先手を打てる
3指標を自分で計算・把握していれば、銀行担当者の質問に即答できます。「この会社は数字を把握している」という印象が、融資判断にプラスに働きます。
② 改善の優先順位が明確になる
どの指標が弱いかがわかれば、「まず営業CFを改善すべきか」「自己資本比率を優先すべきか」という経営判断ができます。
③ 節税と財務のバランスを考えられる
節税で利益を圧縮すると、自己資本比率と債務償還年数が悪化します。「税金を減らすか・銀行評価を上げるか」というトレードオフを意識した判断ができるようになります。
社長: 今すぐ確認すべきことはありますか?
税理士: 以下の3つを今すぐ答えられるかどうか確認してみてください。
自社の営業キャッシュフローはプラスですか?
自己資本比率は何%ですか?
債務償還年数は何年ですか?
この3つを即答できる経営者とできない経営者では、銀行からの評価が明らかに異なります。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 3指標のうちどれが最も重要ですか?
銀行によって重視する指標は異なりますが、実務上は債務償還年数が最も重要視されるケースが多いです。「現実的に返せるかどうか」が融資判断の核心だからです。ただし3つは相互に関連しており、どれか一つだけが良くても他が悪ければ総合評価は下がります。
Q2. 営業CFがマイナスの場合、融資は受けられませんか?
必ずしも受けられないわけではありません。一時的なマイナスであれば、その理由を説明できれば審査が通るケースがあります。ただし複数期連続でマイナスが続いている場合は、本業の収益構造の改善が先決です。
Q3. 自己資本比率が低い状態で融資を申し込む場合、どう対応すればいいですか?
①現状の水準と原因の説明、②改善計画(3か年のPL・CF予測)、③月次試算表による改善推移の提示をセットで用意することをお勧めします。日本政策金融公庫や商工中金は、改善途上の会社に対して民間銀行より柔軟に対応することがあります。
Q4. 債務償還年数の計算で使う「借入金残高」には何を含めますか?
短期借入金・長期借入金・社債など、有利子の負債を合算します。買掛金・未払金などの無利子の負債は含めません。役員借入金については、実質的に返済義務がない場合は除外して計算することもあります。
Q5. 3指標を毎月確認する方法はありますか?
月次試算表からおおよその計算が可能です。自己資本比率はB/Sから、債務償還年数は月次の経常利益・借入残高から概算できます。営業CFは月次資金繰り表と組み合わせることで把握できます。顧問税理士に「毎月この3指標を確認したい」と伝えることで、月次レポートとして提供してもらえるケースがあります。
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まとめ
銀行が最初に見るのは「利益」ではなく「返済できるか」
営業CF:本業で現金を生み出しているか。マイナスは「本業が資金を生んでいない」と判断される
自己資本比率:30%以上が安定の目安。利益剰余金の蓄積が鍵
債務償還年数:借入金残高÷(経常利益+減価償却費−法人税等)。10年以内が健全
この3指標を即答できる経営者は銀行からの評価が明らかに違う
節税で利益を圧縮すると自己資本比率と債務償還年数が悪化する
「利益が出ている会社」ではなく「返済できる会社」に銀行は融資します。この3指標を把握・改善することが、融資に強い財務体質の第一歩です。
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